『M 愛すべき人がいて』第2話(4月25日23:15〜放送予定)より。(c)テレビ朝日/AbemaTV,inc.

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 2020年4月期ドラマで女優・水野美紀(45)が振り切っている。ギャグ漫画を原作とした『浦安鉄筋家族』(テレビ東京系、金曜深夜24時12分〜)には、一見おしとやかだが、一度スイッチが入ったら誰にも止められない主婦・順子役で出演。優れた運動神経を生かし、スタン・ハンセンの入場曲『サンライズ』と共にプロレス技を次々繰り出す暴れぶりを披露している。

【写真】ドラマのスパルタ講師役、奇抜な全身ファッション

 4月25日に放送される『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日系、土曜23時15分〜)第2話にもゲスト出演する。浜崎あゆみの半生を描いた小説(小松成美・著)を原作とした同ドラマは、実在の人物をモデルにしているにもかかわらず、劇画タッチの登場人物が入り乱れる現実離れした展開で、18日の初回放送後にたちまち話題をさらった。

 そんな作品の中で、水野はとくに“トンデモ”な役を演じるらしい。水野が演じるスパルタ講師・天馬まゆみは、ド派手なファッションに身を包み、「燃やすよ!」という脅し文句を叫びながら主人公の「アユ」(安斉かれん)を特訓する。予告映像だけでもお腹がいっぱいになりそうな強烈キャラだ。

 近年の水野は、ひと癖もふた癖もある役で話題になることが多い。そのきっかけとなったのが、2017年1月期に放送された『奪い愛、冬』(テレビ朝日系)だった。泥沼の恋愛劇の中で水野が演じたのは、ヒロインの元恋人の妻・森山蘭。夫をつなぎとめようと奇行に走る蘭の姿は、視聴者の間で「もはやホラー」と評判になり、作品を代表する名物キャラとなった。それを受け、シリーズの続編にあたる『奪い愛、夏』(ABEMA)では、なんと水野は主演に抜てきされた。

 その後、2018年7月期に放送された『探偵が早すぎる』(日本テレビ系)では、ヒロインの母親代わりを務める“ツンデレ家政婦”橋田政子役を好演し、「5兆円の遺産を手にしたヒロインが、悪の一族から命を狙われる」という突拍子もないストーリーの中でも独自の存在感を発揮した。

「ぶっ飛んだ役が得意な役者」としての地位を完全に確立した水野。あえて意地悪な見方をすれば、「正統派女優がイロモノに転向した」と捉えることもできるかもしれない。しかし、水野は2019年11月に出産・育児エッセイ『水野美紀の子育て奮闘記 余力ゼロで生きてます。』(朝日新聞出版刊)を出版し話題を呼ぶなど、女性からも熱い支持を集めているようだ。

 女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)の著書があり、「めちゃくちゃドラマオタク」と自称するエッセイストで編集者の小林久乃氏は「水野美紀さんは個人的に大好きです」と熱弁する。

「何がいいかと言えば、自我を全面に出すことを恥じない姿勢です。清純派でデビューして、『踊る大捜査線』の雪乃役くらいまではそのイメージを保っていました。それが、事務所から独立された時期くらいから、体を鍛えているとか強さを打ち出すようになって、どんどん女性としての妙味を増していきました。物怖じしない発言、結婚・出産に加え、『奪い愛、冬』に見られるような思い切った怪演と、時間を重ねるごとに素敵になっていきます」

 小林氏は、「現代の女性の多くは、周囲と同調することに悩んでいます」と指摘する。

「会社では面白くもないランチに付き合い、自宅に帰っても知り合いのSNSにいいね!を押す。そんな同調を全て捨てた瞬間、今までの時間がいかに無駄だったかと気づき、楽になることができるはず。水野さんは“同調女子”からいち早く脱皮し、自分のための生き方を見つけた先輩と言えるでしょう。彼女の迷いのない姿勢がこれからも支持されていくのだと思います」

 型破りな役柄だけではなく、NHK連続テレビ小説『スカーレット』庵堂ちや子役でのコメディエンヌぶりも評価され、40代半ばにして役者として再ブレークを果たした水野。「今度は何をしてくれるんだろう?」とワクワクさせてくれる存在感は、“自分のための生き方”を模索する中での研鑽によって手に入れたもののようだ。

●取材・文/原田美紗(HEW)