クラスター化した東京都台東区の永寿総合病院(写真:時事通信)

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「追跡調査ができない感染経路不明の感染者が急増している現状は、明らかに一段階上がったことを意味しており、このままでは新型コロナウイルスの爆発的な感染拡大の可能性も。それは、イタリアのように医療崩壊をいつ起こしてもおかしくはないのです」

そう語るのは、『新型コロナウイルスの真実』(KKベスト新書)の著書がある神戸大学病院感染症内科教授の岩田健太郎医師。今月7日に緊急事態宣言が7都府県に発令されたが、新型コロナウイルスの猛威は止まらない。

10日、東京都の小池百合子知事は映画館やパチンコ店など幅広い業種に対して休業要請を実施するなど、感染拡大を抑え込もうとしているが、医療現場では「医療崩壊」を懸念する声が次々と上がっている。東京都医師会の角田徹副会長がこう語る。

「感染者が爆発的に増えると、今の医療のキャパシティを超えてしまう医療崩壊が心配です。たとえば交通事故に遭った救急患者を受け入れられる病院がない事態も。遠くまで搬送されているうちに状態が悪化することも起きると考えられるのです」

医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師は、さらに厳しい医療現場の実情を伝えてくれた。

「新型コロナの感染者を受け入れる感染症指定病院はどこもすでにパンク状態で重症患者以外は入院を拒否しているケースもあります」

それを裏付ける証言をするのは、本誌前号で「インフルエンザの30倍苦しい」と新型コロナウイルスの症状を語った感染者でコンサルティング会社「Globality」CEOの渡辺一誠さん(40)。先月22日に新型コロナウイルスにともなう肺炎を発症し、27日に入院した渡辺さんは4月10日に退院。しかしその実態は――。

「まだ陽性反応がかなり強いのですが、病床を空けるために退院することになりました。体調はだいぶよくなり、咳もほとんどありませんが退院を手放しで喜べません。このまま入院していることも考えましたが、病床数の不足を考えると自宅待機するべきだと思い、しぶしぶ大量の荷物をもって歩いて帰ることにしました」

医療機関での院内感染も確実に増えていている。

「とくに感染者が増え続けている都内の指定病院にはクラスターによる院内感染も増え、医療崩壊状態になっているといっても過言ではありません」(前出・上医師)

日本全国でも、コロナ感染者が複数発生した病院が多数出ている。前出の角田副会長も言う。

「都内の病院で院内感染がいくつか出ているのは事実です。特に今後、地域医療の最終的な中心となる基幹病院で大規模な院内感染が起きると、病院を閉鎖しなければならなくなり、その地域にとっては危機的状況になります。周辺の大病院に患者さんを転院させざるをえなくなり、ほかの病院にも大きな負担をかけてしまうことが心配という声も聞いています」

なぜ予防対策を施しているはずの病院で院内感染が広がるのか? ウイルス感染症が専門の順天堂大学病院・総合診療科の内藤俊夫教授は率直に打ち明ける。

「たとえば、肺炎の症状を訴えた患者で新型コロナだった場合はすぐに対策がとれますが、別の病気の患者が新型コロナだった場合は誰にもわかりません。特にこの病気は症状初期では風邪と似ていたり、無症状だったりします。それゆえ、いくら細心の注意を払ったとしても病院がクラスター化してしまう恐れがあるのです」

「女性自身」2020年4月28日号 掲載