【SUVのSクラス】新型メルセデス・ベンツGLS 400dに試乗 乗り心地以外は期待通り
3代目に進化したSUVのSクラスtext:Simon Davis(サイモン・デイビス)translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
巨大なメルセデス・ベンツ製SUVのGLSが3世代目に突入した。メルセデス・ベンツ自らSUVのSクラスと表現する最上級モデルでもあり、巨大なボディサイズはそれを象徴するようだ。
全長は5210mmで実際のSクラス以上に長い。本気のオフローダー、Gクラスの全長は4873mmだから、GLSはふた周りほど大きい。2019年の初めにアメリカで試乗をしているが、広大な土地のおかげか、大きなボディサイズを問題に感じることはなかった。
メルセデス・ベンツGLS 400d 4マティック AMGライン・プレミアム今回は英国での試乗。大きなSUVが入り組んだ町並みに溶け込むことは容易ではない。それでもレンジローバーやアウディQ7、BMW X7などはロンドンでも珍しい存在ではないから、GLSがひとり巨体な転入生というわけでもないけれど。
今回試乗するGLSは400d。随分と大きなボディの割には、比較的合理的なエンジンを搭載している。2.9Lの直列6気筒ターボディーゼルで、330psと71.2kg-mを発生。9速ATと組み合わされ、4輪を駆動する。
英国価格は、AMGライン・プレミアムが7万5040ポンド(1050万円)からで、AMGライン・プレミアム・プラス・エグゼクティブになると9万1540ポンド(1281万円)に達する。
2020年には6気筒のガソリン・ターボエンジンと、合理性に欠けるAMG GLS 63も上陸するだろう。恐らくGLS 63の方は、ちょっとした一軒家が買える値段になるはず。
Sクラスの期待に及ばない乗り心地
アメリカで試乗したのはGLS 580だったが、英国に当初導入される400dにはEアクティブ・ボディコントロールが備わらない。そのかわり、アダプティブ・エアサスペンションが標準装備となる。
いざ走り始めてみると、GLSの乗り心地には少しがっかりしてしまう。Sクラス並みという言葉を信じて走り始めると、ふつふつと疑問が湧き出てくる。郊外の傷んだ路面を通過すれば、GLSは明らかに平穏さを保つことに苦労しているようだ。
メルセデス・ベンツGLS 400d 4マティック AMGライン・プレミアム車重が2.5t目前で、引き締まった姿勢制御を実現させるために硬いアンチロールバーを装備しているためだろう。高い位置で感じる揺れは、ストレスに感じるといわざるを得ない。轍や起伏を超えた際には、強い振動を生じることもある。
おそらく殆どの場面でBMW X7の方が落ち着いた乗り心地を叶えている。GLSが22インチのアルミホイールを標準装備にしているのに対し、X7は21インチだということも影響しているはず。
大きな路面のうねりに対しては、GLSの垂直方向の制御はとても良好。サスペンションが縮む際は枕のような柔らかさで受け流し、伸長時に浮き上がるような素振りもない。
コーナリング時は、巨体を操っている感じは常に残るが、車重を考えれば充分評価できる挙動にある。グリップ力にも不足はない。冷え込んだ日の試乗となり、フロントタイヤに修正を加えるスタビリティコントロールが頻繁に介入していたが、仕方ないだろう。
輝く発進や停止時の力強さとマナー
ステアリングホイールの操舵感は正確性が高く重み付けも考えられている。スポーツモードを選べば、適度な手応えも感じられる。ただしスポーツモードを選ぶとサスペンションも引き締まり乗り心地は悪化するから、インディビジュアル・モードで個別に設定しておいた方が良さそうだ。
もっとも、GLSでスポーティに走りたいと感じることはないかもしれないが。
メルセデス・ベンツGLS 400d 4マティック AMGライン・プレミアムGLSでもっともキラリと輝く部分は、発進や停止時の力強さとマナー。SUVのSクラスという表現に疑問を感じない部分でもある。
静止状態からの加速は感動的なほどに滑らかで、2.9Lディーゼルが生み出す芳醇なトルクによって、優雅な加速を味わわせてくれる。そのままアクセルを踏んでいても、伸びはさほど得られない。
高速でのクルージング時では、エンジンノイズは殆ど聞き取れないほど静か。22インチのアルミホイールが、期待値よりわずかに大きいロードノイズを発するくらいだ。
ブレーキの操作感も極めて良好。ペダルへ伝わるフィーリングにも優れ、長いストロークに応じて徐々に制動力が増していく感じに好感が持てる。
GLSの車内は誰しもが快適に感じられるはず。ふんだんに用いられたレザーに、美し磨き上げられた金属製のトリムが色を添える。しかし、贅沢感でいうとレンジローバーやX7の方が上にも感じられてしまう。
スタイリングを取るかハンドリングを取るか
おそらくGLSのインテリアが孤高の仕上りを得ているのではなく、大型化されたGLEという雰囲気を感じ取れるからだと思う。BMW X7もX5の兄貴的な部分はあるのだけれど、何にも得意分野は存在するものだ。
BMW X7の方が優れていると感じられる部分には、3列目シートの大きさもある。X7なら大人でも快適に座ることができるものの、GLSの3列目に長時間座っていられるのは子供に限られる。そのかわり、2列目シートはSクラスのように広々としている。
メルセデス・ベンツGLS 400d 4マティック AMGライン・プレミアム英国の場合、メルセデス・ベンツGLS 400dの価格はBMW X7 xドライブ30d Mスポーツとほぼ変わりない。X7のやや雑然としたスタイリングが気に入らないという理由で、端正なGLSを選ぶということも成り立つだろう。
反面、BMW X7のステアリングフィールはより魅力的で、操縦性や乗り心地の洗練度も高い。ボディは、走っている限り目に入らないという考え方もある。
メルセデス・ベンツGLS 400d 4マティック AMGライン・プレミアムのスペック
価格:7万5040ポンド(1050万円)
全長:5213mm
全幅:1960mm
全高:−
最高速度:238km/h
0-100km/h加速:6.3秒
燃費:10.2-11.6km/L
CO2排出量:−
乾燥重量:2490kg
パワートレイン:直列6気筒2925ccターボチャージャー
使用燃料:軽油
最高出力:330ps/3600-4200rpm
最大トルク:71.2kg-m/1200-3200rpm
ギアボックス:9速オートマティック
