多くの企業で内定式がおこなわれたとのニュースが流れています。

実際に働く現場でのイベントを通じて「働く」ことがリアルになったぶん、期待と同時に不安も抱いている内定者も多いのではないでしょうか?

「希望の配属先じゃなかったらどうしよう」「就職先の給料が安そう」「先輩社員たちの働き方がブラック」…。

新R25では、そんな悩みをビジネス賢者に相談し、キレイさっぱり解消してもらおうと、特集を行います!

その名も「さらば!就職ブルー」…!!



まず突撃するのはこの人…!

1人目のビジネス賢者は、三陽商会と手がける新しいパーソナルオーダースーツのブランド『STORY&THE STUDY』や本人が漫画に出演したことでも話題になった『朝日新聞社×左ききのエレン Powerd by JINS 新聞広告の日プロジェクト』など広告やPRの枠を超えた注目のプロジェクトを手がける「The Breakthrough Company GO」の代表取締役でPR/CreativeDirectorの三浦崇宏さん。

「先輩社員たちの働き方がブラック労働すぎて不安」という内定者の悩みに対し、自身の会社を「キラキラ系ブラック企業」と公言する三浦さんは、どのようなアドバイスをしてくれるのでしょうか?

つい半年前まで内定者だった、新卒編集者の森久保が話を聞いてきました!

〈聞き手=森久保発万(新R25編集部)〉


【三浦崇宏(みうら・たかひろ)】The Breakthrough Company GO代表取締役兼PR/CreativeDirector。早稲田大学第一文学部を卒業後、博報堂入社。マーケティング、PR、クリエイティブ部門を経て独立、2017年にThe Breakthrough Company GOを設立

いきなり「ひとくくりにブラックというのはクソ」と譲らない三浦さん…

森久保:
ボクのまわりの学生も、「内定先の先輩社員が働きすぎている」「もしかしたら内定先がブラック企業なんじゃないか」と不安を抱えているみたいで…

ぜひ三浦さんにその悩みを吹き飛ばしてほしいんです!

三浦さん:
いやキミさ、長時間労働をひとくくりに「ブラック」って言ってる時点でクソだよ。長時間労働だからって、必ずしもツライとは限らないでしょ?

森久保:
(ク、クソって…)

全員じゃないかもしれませんが、長時間働いてたらツライと感じる人は多いと思います。

三浦さん:
オレはそんなこと思わない。

前の会社で若手だったとき、朝3時より前に帰ったことがないくらい働いてたけど、毎日楽しかったよ。

森久保:
それこそブラック労働な気がするんですけど…

三浦さん:
いや、オレにとっては全然ブラックじゃなかったね。

森久保:
えーっと…


話聞く相手間違えたかな…

森久保:
でも、それは三浦さんがブラック体質だからなのでは…

読者のみなさんには「やりがい搾取だ」って思われそうですよ。

三浦さん:
そうじゃない。オレが言いたいのは「ブラック企業かどうかの判断基準は、もっと別のところにある」ってことだよ。


別のところ…?

三浦さん:
ブラック企業の基準は、労働者に「労働の主体性」があるかどうかなんだよ。

森久保:
労働の主体性…

すみません、もうちょっとわかりやすくお願いします。

三浦さん:
つまり、「社員一人ひとりが、自分の働きたいように働けているか」ってこと。

たとえば、本当に仕事に熱狂している人は残業したっていいと思う。仕事してて「今この瞬間が、自分の成長や人生のミッションにとって必要な瞬間なんだ」って思えたら幸せじゃん。

そう考えると、「『ブラック企業』がバッシングされてるから『ホワイト企業』を目指します」って会社は、問題の本質を労働時間だけで捉えている時点でズレてるよね。



三浦さん:
深く考えずホワイト企業になろうとしてる会社で何が起きてるか。「19時に会社の電気が消えるから、真っ暗ななかで仕事してる」とか、「家に仕事を持ち帰って、誰も把握してない残業だらけ」とか。

会社の世間体だけ守って、現場の人が働きづらくなるだけのことを平気でやってるでしょ。

それも労働の主体性を奪ってるって意味では、ブラック企業と一緒だよ。

森久保:
たしかに!

じゃあ逆に、三浦さんが考える「いい会社」って何ですか…?

三浦さん:
まあ、あえて名前をつけるなら「カラフル企業」かな。


急にすごいワードが飛び出してきた

三浦さん:
「オレはモテるために働きたいんです」って人にとってはピンク企業。

「世界の環境を守る仕事なら朝まで働けます」ならグリーン企業。

そうやって、一人ひとりの「自分はこうやって働きたい」という願望が、そのまま実現できる“カラフル”な会社が理想だよね。

森久保:
各々が好きな働き方を実現できるカラフル企業か…!

三浦さん:
実際に、最近では「ワークライフバランス」の考え方も見直されてる。結局、労働時間の削減だけでは事態は解決しないからね。

今では、働く一人ひとりが大事にする価値観を尊重して、好きな働き方を実現する「ワークライフバリュー」っていう考え方のほうが主流になりつつあるんだよ。

職場の環境は重要じゃないという三浦さん。本当に大切なのは「姿勢」…って?

三浦さん:
…って長々話したけど、そもそも「どこで働くか」なんて全然重要じゃない。


ちょっと納得しかけてたのに、ひっくり返さないでください

三浦さん:
本当に大事なのは、“全力で仕事と向き合う姿勢”なんだよ。

森久保:
これまたブラックな発言…

どうせ「置かれた場所で咲きなさい」みたいな話ですよね?

三浦さん:
全然違うよ。


すみません。続けてください

三浦さん:
オレの話をするとさあ…新卒時代、自分のことを“1000年に1人の天才クリエイター”だと思ってたんだよ。

広告代理店の入社式で、まわりの同期を見渡して「よしよし、こいつらが俺の将来の部下か」なんて思ってさ。

森久保:
その自信がどこから来たのか教えてほしいです。

三浦さん:
だから、自分はクリエイティブ部門に配属されるって信じて疑わなかった。

でも、フタを開けたら、配属されたのはマーケティング部門だったわけ。

森久保:
うわ、それはキツイ。

三浦さんといえど、そんなことがあれば落ち込んじゃいますよね…

三浦さん:
いやいや。落ち込むどころか、部長に「よかったですね。こんな地味な部署にボクみたいなスターが配属されて」って言ってた。


ちょっとでも同情して損したわ

三浦さん:
そんな感じだったから、負けを認めたくなくて、当時は上司を見返す理由を見つけるのに必死だったのよ。

当然、そんなスタンスで実力が伸びるわけないし、最後はでっかい失敗して干されちゃった

森久保:
それはほんとに大変ですね…

そこからどう立ち直ったんですか?

三浦さん:
干されてる間、暇すぎて漫画喫茶に行って、初めて『SLAM DUNK』をちゃんと読んだんだよ。

そしたら、「安西先生…!! バスケがしたいです…」という名シーンがあって。「これはまさに今のオレの状況じゃないか…!」って思ったんだよね。


※『SLAM DUNK』の名シーン。

中学時代に神奈川大会でMVPをとるほどの名プレイヤー・三井寿は、高校に入学した直後にヒザを負傷。

挫折から不良になってしまい、バスケ部とケンカ騒ぎを起こす。バスケへの想いを隠していた三井は、顧問の安西先生を見たとたんに崩れおち「バスケがしたいです…」と涙ながらに告白。

知らなかった人は、ぜひ読んでみてください!

三浦さん:
そのシーンに感化されちゃって、上司に時間をもらって「仕事がしたいです…」って泣きながら訴えた。

それでやっと仕事を任せてもらえるようになったんだよ。


「ダメな新卒だったよ、ほんと…」

三浦さん:
それを機に、仕事への姿勢も180度変えたのよ。

「上司がすごいキツいこと言ってくるけど、全部オレを想ってのことなのかもしれない」というスタンスに立ってみたわけ。

そしたら、あらゆることが学びに変わった。急にね。

森久保:
あらゆることが学びに…?

三浦さん:
たとえば、「上司がオレに強く当たってくるのも、代理店を見下した対応をしてくるクライアントと対面したときの耐性をつけるためなんだな」と考えてみる。

もしかしたら、上司はただ機嫌が悪いだけなのかもしれないけど、そう捉えるだけで学びを得るチャンスに変えられるじゃん。



森久保:
愚痴をこぼしたくなる場面も、考え方次第で“自分の糧”にできるということですね。

三浦さん:
さっきオレが「全力で仕事と向き合う姿勢が大事」って言ったのは、そういうこと。

つまり、大事なのは環境の質じゃなくて、「自分の姿勢の質」なのよ。

森久保:
なるほど…!

三浦さん:
もしクソみたいなブラック企業に入ってしまったとしても、一旦でいいから、全力でやる姿勢を取ってみる。

そうやっていたら、自分なりの学びを見つけて、勝手に成長していけると思うよ。



それでもキツかったら「前に逃げろ」

森久保:
でも、三浦さん…

三浦さん:
なに?

森久保:
やっぱりそれも、ブラック企業の論理な気がします。


新卒・森久保、頑張ってツッコみます

森久保:
いくら“いい姿勢”で仕事と向き合ったとしても、精神的にキツい職場ってあると思うんです。

それでも頑張れって言うのは酷すぎません?

三浦さん:
…そりゃそうだね。

全力でやっても面白さや達成感がないなら、迷わず辞めていいと思うよ

森久保:
え、辞めていいんだ…

でも、辞めるのも勇気がいりますよね。「仕事から逃げるダメなヤツ」みたいで…

三浦さん:
ダメな「仕事からの逃げ方」も、もちろんある。

でも、今オレが言いたいのは「前に逃げろ」ってことなんだよ。



森久保:
前に逃げろ…?

三浦さん:
これはGADOROというラッパーがフリースタイルバトルで口にした言葉のサンプリングなんだけど…

全力で向き合ってみてはじめて「この仕事には向いてない」って検証できるじゃない。それで辞めるのはポジティブな決断だってことだよ。

次の職を探すうえで「こういう仕事はしない」みたいな基準ができたんだから。

森久保:
おお…それだけで大きな収穫だと。

三浦さん:
エジソンも「私は失敗したことがない。ただ1万個の上手くいかない方法を発見しただけだ」って言ってるじゃん。

全力でやった失敗は前進につながるのよ。「もうこれはしない」って自分のなかで決められるからね。

でも、中途半端に辞めてしまうと、「やっぱりもう一回試してみようかな」っていう気になってしまう。人間はのど元過ぎると熱さを忘れる生き物だからさ。

森久保:
たしかに、“全力でやってから辞める”のと“なんとなく気に入らなかったから辞める”のでは全然違う気がします。

三浦さん:
全力で仕事と向き合ってダメなら、前に逃げる。

逆に言うと、「前に逃げる」ためにも、「全力で仕事と向き合う姿勢」が大事になってくるってことだね。

「全力を尽くしたときだけ、失敗は前進になる」ってことは覚えておいてほしい。


なるほど、この人の言うことは一理あるかもしれない…

森久保:
仕事は最低でも3年やってみるべき」という意見もよく耳にします。

やっぱり、前に逃げるには3年くらい働かなきゃダメなんですかね?

三浦さん:
あークソクソ。

そんなの、適当なやつがキリがいいからいい加減に言ってるだけだよ。



森久保:
1万時間の法則っていうのもあるじゃないですか。

「どんなジャンルでも、一流になるには1万時間の練習が必要だ」みたいな。

三浦さん:
いや、大切なのは期間じゃない。濃度なんだよ。

森久保:
濃度…?

三浦さん:
どれだけ集中してやったかってことだよ。

濃度を限界まで高めて仕事に打ち込めば、自分が向いてるか向いてないかなんてすぐにわかる。

森久保:
たしかに…

アルバイトや部活でも、得意不得意がわかるのに何年もかからなかった気がします。

三浦さん:
そう、だから「石の上にも3年」なんて鵜呑みにしなくていい

“限界濃度”で全力を尽くしてみてもダメだったなら、たとえ入社3カ月でも、笑顔で前に逃げればいいと思うよ。

自分の全力をごまかすと、仕事に対する「基準」がなくなってしまう

三浦さん:
最後に、仕事に対する向き合い方としてひとつだけ覚えておいてほしいのはさ…



三浦さん:
自分の全力をごまかしちゃいけないってことよ。

森久保:
自分の全力をごまかす…?

三浦さん:
サボっちゃったときに「でも全力だったな」って自分にウソをつく。

そんなことを続けてると、だんだん本当の全力を出せなくなっていくんだよ。



三浦さん:
そうなると、さっき言った「全力で仕事と向き合う姿勢」も維持できなくなるし、今の仕事が向いてるのかどうかもわからないから、結果的に「前に逃げる」ことも難しくなる

仕事に対する“基準”がなくなって、負のループにハマっていくんだよ。こんな悲しいことないよね。

森久保:
それはイヤですね…

三浦さん:
気が抜けちゃうときは誰にでもある。

でも、「オレは全力を尽くせなかった」って悔しさだけは絶対忘れちゃいけないよ。

これだけは覚えておいてね。


三浦さん…(最初はただのブラックな人だと思ってましたが)ありがとうございました!!

ボクも新卒なのでよくわかるのですが、入社前って職場の待遇や労働環境をまわりと比べてしまって不安になりますよね…。

だからこそ、「環境の質なんて大した問題じゃない」と三浦さんが言い切ってくれたことに、背中を押された方も多いのではないでしょうか。

もちろん、悪質なブラック企業に入ってしまったら、ちゃんと逃げ出していい。

ただ、本当に大切なのは、自分にウソをつかず全力で仕事と向き合うこと。

不安に押しつぶされそうになったときは、三浦さんの言葉を思い出して就職ブルーを吹き飛ばしていきましょう!

〈取材・文=森久保発万(@vneck_now)/編集=天野俊吉(@amanop)/撮影=飯本貴子(@tako_i)〉