テレグラフ(Telegraph)は、新しいエディトリアルのバーティカルをはじめようとしている。名前はテレグラフ・ウィミンズ・スポーツ(Telegraph Women's Sport)だ。4人編成のチームが配属される。テニスコーチのジュディ・マレー氏や短距離走ヨーロッパ・トリプルチャンピオンであるディナ・アッシャー-スミス氏、そして、英国サッカーチームの副キャプテンであるジョーダン・ノブス氏といった寄稿者が参加する。

アドバタイジング・ウィーク・ヨーロッパ(Advertising Week Europe)の期間中に発表されたこのバーティカルは、5つの目的を抱えている。それは、スポーツにおける女性の存在価値を高めること、既存のテレグラフチャンネルにテレグラフ・ウィミンズ・スポーツを組み込むだけでなく新しいチャネルをローンチしていくこと、重要な課題としてキャンペーンを行うこと、そして新しいオーディエンスを開拓し、スポンサー獲得のチャンスを増やすことだ。

女子サッカーのアトレティコ・マドリードとバルセロナの試合が観客数記録を打ち破ったことに関する記事や10歳の女子スケートボーダーが英国で史上最年少のオリンピック選手となることが決まった記事などが、ローンチ時のコンテンツとなった。ニュース、特集記事、データビジュアライゼーション、オーディオ、動画などがコンテンツに含まれる。テレグラフがすでに持っているニュースサイトやアプリ上のオンライン・チャンネルに加えて、テレグラフ・ウィミンズ・スポーツは専用のTwitterアカウントとインスタグラム(Instagram)アカウントを持つ。そして、週刊のニュースレターも作られる。プリント版では、日刊紙のスポーツ面と、月一の増刊でカバーされる予定だ。

注目高まる女子スポーツ



メディアを取り巻く状況が厳しくなるなか、エディトリアルへの追加投資は注目に値する。テレグラフは1年前に15人のスタッフをグローバルに投入した、テックにフォーカスを合わせたバーティカルもローンチしたばかりだ。テレグラフによると、これはまさに、はじまりに過ぎないという。

「女性は、スポーツ面で女性が特集されていることを見ることない。そして、男性とスポーツという組み合わせが、社会に持つ影響力と重要性に飽き飽きしている。女性たちは、自分たちが含まれているという感覚を持てない。私のミッションはそれを変えることだ」と、ウィミンズ・スポーツのエディターとして新しく任命された、テレグラフのアナ・ケッセル氏は言う。

より幅広い業界全体のトレンドを反映する読者からの需要があることを、今回のテレグラフの投資は示唆している。女子サッカーの試合では、プレミア・リーグのスタジアムは観客を多く集めている。ナイキ(Nike)は今月、女子サッカーワールド・カップのための新プロダクト・デザイン群を大規模なショーでお披露目した。アディダス(Adidas)も、ナイキに続く形で、女子ワールド・カップで今年優勝したチームに所属するアディダス・スポンサーの女子選手たちは、男子選手と同じ額のボーナスが支払われるということを発表した。このレベルの興味は、これまでになかったもので、勢いがついていると、ケッセル氏は言う。

スポンサー枠の可能性



テレグラフのSnapchat(スナップチャット)アカウントは、このウィメンズ・スポーツのコンテンツもフィーチャーすることになる。このように若いオーディエンスを育てることと同時に、女性オーディエンスを拡大することも目標となっている。しかし、それだけではない。経済的なチャンスも存在している。女性にフォーカスを当てた特集、特にインスピレーションを与えるようなコンテンツは、ビューティ業界といったブランドにとっては、テレグラフのスポーツ面でのスポンサー枠の可能性を開いてくれる。

「大胆かつポジティブなステップだが、これがただ女性のスポーツ分野だけにおける現象でないことが重要になるだろう。多くのブランド・パートナーが活用するためには、このコンテンツがすでに存在するスポーツ報道にうまく混じることが必要になるだろう。ブランドたちにとって、このスポンサー枠を通してスポーツ消費者の全体にリーチできる必要がある」とM&Cサッチー・スポーツ・アンド・エンターテイメント(M&C Saatchi Sport & Entertainment)のジョイント・マネージングディレクターである、リチャード・バーカー氏は語った。

ケッセル氏は2013年に出されたレポートを引用する。それによるとスポーツ分野で費やされた資金のうち、女子スポーツに費やされるのは0.5%以下であり、新聞における報道で女性に関するものは約2%となっている。しかし、女子スポーツという分野がパブリッシャーにとって、より効果的であることを証明するようなケースも存在する。ニュートン・インベストメント・マネージメント(Newton Investment Management)は、2011年から女子ボートレース(Women's Boat Race)のスポンサーとなってきた。女子ボートレースは、男子スポーツよりもコスト面での効果が高いことに加えて、スポンサー契約後の分析によると、初期投資に対する収益は10倍ということがわかった。

「スプレッドシートではなく、ビジョンを見ろ」



「(英国の投資家である)ヘレン・モリッシー氏のアドバイスは、スプレッドシートではなく、ビジョンを見ろというものだった」と、ケッセル氏は言う。「2019年においては、はっきりとした宣言を打ち出さなければればいけない。我々は女性のための女性によるスペースを欲している。彼女らが自分たちのためのスペースを獲得したのは、これがはじめてであり、注目に値すると伝える必要がある。願わくば、これはあくまでもプロセスの一部であり、将来的にはわざわざ説明するような必要をなくすべきだ」。

Lucinda Southern(原文 / 訳:塚本 紺)