実在しない人の顔写真を無限に生成できるWebサイトが公開。ディープラーニング技術を応用
ThisPersonDoesNotExist.com

人の顔写真にはプライバシー保護の問題が伴うものですが、AIが実在しない人物のリアルな顔画像を無限に生成できるWebサイト「ThisPersonDoesNotExist.com」が公開されています。

緻密な画像を創造かつレンダリングするには非常に高価で強力なハードウェアが必要となりそうですが、このサイトはただブラウザを開くだけ。画面をリロードする度に、アルゴリズムがゼロから新たな非実在人間の顔をわずか数秒で生み出してくれます。本サイトは、Generative Adversarial Networks(GAN)というAIアルゴリズムを使用しているとのこと。これはディープラーニングにおいて、生成ネットワークと識別ネットワークの2つを競合させてトレーニングするものです。

たとえば猫の写真を認識して学習を行う場合、まず生成ネットワークが猫のように見える偽の画像を生成。次に識別ネットワークが猫の写真を本物かどうか判別するという過程を繰り返す。前者はより精度の高い猫画像を生成し、後者は偽物の猫画像を見分ける能力を高めていく。あたかも「偽造者と警察」のように腕と眼力を磨き合うわけです。

GANのメリットは、1つには人が関わらずに競合ネットワークが互いに鍛えるため、膨大な手作業が省けるということ。もう1つは利用できるデータの少ない分野(たとえばプライバシー保護の厳しい医療など)でも不足したデータセットを自ら生成して補完できることです。

本サイトの制作者でソフトウェア開発者のPhilip Wang氏いわく、以前NVIDIAの研究者がGithub上で公開したコードを使用しており、強力なGPUを備えたレンタルサーバー上で動作しているとのこと。世界中からアクセスされても2秒ごとにランダムな顔を生成できるようにしており、特殊な仕組みはないと語っています。



AIがこの世のどこにも存在しなかった画像を描く上で、今やGANは様々なかたちで世界を驚かせています。AIの描き上げた肖像画が約4800万円で落札され、動画から特徴的なシーンを抜き出してマンガ風に仕上げる「Comixify」も発表されていました。

不用意に写真を撮るとプライバシー侵害になりかねない昨今、非実在の顔写真を無限に生成できるサービスはイラストの作成やデッサンの練習など、クリエイティブな方面での応用も考えられそうです。反面で、非実在ユーザー写真付き絶賛レビューのねつ造を防ぐなど、倫理的な歯止めも必要となるのかもしれません。