サンダーランド対マンチェスター・ユナイテッドの一戦は、18歳の新星ヤヌザイの鮮やかな活躍によりユナイテッドが逆転、2−1で勝利を収めた。モイーズ監督も選手たちもこぞって若き才能の出現を喜んだ。同時に、この試合も出場機会がなかった香川真司は、新たな攻撃的MFが頭角を現したことで行く末が危惧される――。

 これがサンダーランド戦の結果である。だが、それはあくまで結果にすぎない。ヤヌザイが得点(55分)するまでの時間帯は、そのヤヌザイのプレイを含めて、前節ウェストブロムィッチ戦後にモイーズが口にした「poor performance」(ひどいパフォーマンス)そのもの。どう考えても昨季王者の戦いにも、今季の優勝候補のパフォーマンスにも見えなかった。

「立ち上がりの5分から10分以外は我々のプレイは良かった」とモイーズは振り返る。

 だが立ち上がりから、サンダーランドはユナイテッドの攻撃を恐れることなくプレイしていた。4−1−4−1の布陣で、常にリスクマネジメントしながらカウンターからチャンスをうかがった。

 5分に生まれたサンダーランドの先制点は、一見事故のようでありながら、誘発されたものだった。サンダーランドは右サイドをドリブル突破で崩してクロスを入れる。ユナイテッドの右CB、つまり奥にいるCBであるジョーンズがクリアしたボールを、手前にいる左CBビディッチがさらに前に出そうとして相手FWに渡ってしまい失点した。CBの連係ミスではあるが、彼らが慌てる状況を作り出したのはサンダーランドの攻撃陣だった。

 その直後にも、キャリックのバックパスをジョーンズが誤って処理したところを抜け目なくさらわれ、猛ダッシュで奪い返すシーンがあった。つまり、超消極的なプレイが相手にチャンスを与えていたわけだ。

 ユナイテッドの問題はいくつかあるが、最たるものはいかに守るのかという意図が見えないことだ。そのため個の対応が増え、連係ミスが起きる。守備の改善がまずは急務だろう。この時点でモイーズが控えのスモーリングを交代選手として用意しようとしている。CBの連係ミスを目にして、その一枚を代えればすむと考えたのだろうか。だが結局、この前半のウォーミングアップは生かされることなく、スモーリングは試合終盤に右SBで出場することになる。このあたりの意図も全く不明瞭だった。

 昨季までのユナイテッドであれば、先に失点することがあっても、必ず逆転できるという安定感のようなものがあった。だが最近のチームにはその自信が全く見られない。

 この日も先制された後は、攻撃の糸口を探してさまようことになった。サンダーランドは守備に人数をさくようになり、ユナイテッドはボールを保持こそするものの、 最終ラインからボランチあたりで回し、手詰まりになって前線に放り込む。そこでセカンドボールを拾われ一気に運ばれるという展開が続いた。シュートは放つが基本的にミドルシュート。7分にナニ、18分にキャリック。21分にはエブラのクロスをナニがとらえるが枠を大きく超える。その後も22分ルーニー、23分ヤヌザイとミドルシュートが続き、全くゴール前に入れないまま時間が過ぎていった。

 ルーニーがこの時間帯から早くもいら立ちを見せ始めたのも、窮地を物語っているように見えた。サンダーランドは現在最下位であり、過去24戦して1度しか負けてない相手である。ビハインドの時間帯があまりにも長過ぎた。

 それだけにヤヌザイの存在は光明だった。立ち上がりはほとんどボールを持てなかったヤヌザイが、20分頃から攻撃に絡み始めた。果敢に左サイドから中央に切れ込み、強引にでもシュートを放ったことでリズムを幾分取り戻すことができた。今季は調子がいまひとつのファン・ペルシーや、決定力に欠けるナニに比べて、その果敢なトライは目を引いた。後半の2得点は必然と言えるだろう。

 ヤヌザイの活躍で結果的にユナイテッドは今季プレミア3勝目を挙げた。だが、この日の前半の戦いぶりが続くようであれば、いくら新星が活躍してもこの厳しい戦いが続くことは間違いない。盤石という言葉とはほど遠い今季、時間がたてばたつほど他のチームは自信を持ってユナイテッドに立ち向かってくるだろう。立て直すための時間は多くは残されていない。

了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko