地球温暖化は稲の進化の5000倍で進んでおり耐熱限界に達しつつある、大勢の命を支える「米」の生産に暗雲

米は世界の約半数の人々が主食にしている重要な穀物であり、米を作る稲作の多くはアジア一帯で行われています。ところが新たな研究により、地球温暖化によって稲は耐熱限界に達しつつあることが指摘されました。
Projected warming will exceed the long-term thermal limits of rice cultivation | Communications Earth & Environment
Global warming is accelerating 5,000 times faster than rice can evolve | Live Science
https://www.livescience.com/planet-earth/global-warming-is-accelerating-5-000-times-faster-than-rice-can-evolve
米は稲の実から外皮を取り去った穀粒のことであり、小麦やトウモロコシと並んで世界三大穀物のひとつに数えられています。世界人口の半数以上が米を主食としていますが、栽培面積の約90%はアジアに広がっているという地理的な特徴があります。
しかし、予測されている地球温暖化の進行速度は、稲が歴史的に適応してきた気温上昇のスピードをはるかに上回っています。2070年までに生じる気温上昇は、ほとんどの品種が進化の過程で経験してきた速度の5000倍というスピードで進むと予測されているとのこと。
すでに地球温暖化は一部の稲作地帯に深刻な影響を及ぼしており、米の収穫量に影響が出ているそうです。米は高温を好む作物ですが、光合成は40℃前後で停止し、過度な高温は花粉の生存率や穀粒の成長にも影響を与えます。
また、米は大量の水を必要とする作物のため、気候変動によって雨期と乾期のサイクルが乱されることも問題となります。さらに地球温暖化による海面上昇が起きると、低地に作られた水田に海水が入り込み、稲が枯れてしまう可能性もあるとのこと。

今回、フロリダ自然史博物館の人類学者であるニコラス・ゴティエ氏らの研究チームは、米の栽培に関する現代の記録や過去の考古学的データ、過去および将来の気温予測を統合し、地球温暖化が稲作に及ぼす影響について調査しました。
研究チームは、過去約1000年にわたる稲作の痕跡が発見された遺跡から、過去の気候に関するデータを収集しました。データを分析したところ、人類が耐寒性のある稲を品種改良によって生み出したことで、稲作はしばしば温暖な地域から寒冷な地域に拡大してきたことがわかりました。
しかし、約9000年前に稲作が始まって以来、稲作の生育限界の上限温度は変わっていないとのこと。稲作の長い歴史において、稲作は年間平均気温が28℃を超えるか、夏季3カ月間の平均最高気温が33℃を超える場所ではほとんど繁栄してこなかったと研究チームは指摘しています。
もちろん、地球温暖化によって記事作成時点では稲作に適さない寒冷な地域が温暖な気候となり、稲作の地理的な移行が可能になるかもしれません。しかし、多くの水田は数世紀にわたって築かれてきたものであり、簡単に移動できるものではないとのこと。
また、長らく稲作を収入の柱にしてきた農家や国家にとって、稲作の中断は経済や食糧安全保障上の問題も引き起こします。稲作地帯を移動させることで、世界全体の米生産量を維持することは可能かもしれませんが、それは米を食糧および収入源とする南アジアの人々の問題を解決するものではありません。

ゴティエ氏は、「私たちは人間の適応能力の柔軟性を過小評価するつもりはありません。しかし、稲作に関する人間の適応は、すでに起こっているという事実も認識するべきです。場合によっては、その時間内で合理的に適応できる限界に近づいている可能性もあるのです」と述べました。
