“豪華観光特急”の概念を変えた近鉄「しまかぜ」の今 全席プレミアム超え!? 1編成だけの激レア個室も体験
新幹線のグリーン車でも見られない革張りの座席
「最も豪華な私鉄特急」は何でしょうか。2013(平成25)年に登場してしばらくは、議論の余地がないほど傑出していた車両が近鉄の50000系電車「しまかぜ」です。
その後、2020年に同等以上のプレミアムシートを備えた近鉄80000系電車「ひのとり」が登場。2023年には東武のN100系「スペーシアX」によって、「最も豪華な個室設備」は「コックピットスイート」となりました。しかし、「しまかぜ」は現在も、総合的に見ると最もハイグレードといえる私鉄特急です。
「しまかぜ」は、伊勢神宮の第62回式年遷宮に合わせて2013年に登場しました。それまでの近鉄特急は、レギュラーシートとデラックスシートなどで構成されてきた、あるいはサロンシートといった上級座席の組み合わせでデザインされていました。
しかし「しまかぜ」は、「専用車両による豪華観光特急」というコンセプトのもと、通常の車両でも全座席が1+2列に座席間隔が1250mmで、新幹線グリーン車でも見られない革張り座席を備えています。「プレミアムシート」と称されるこの座席は、それまでのデラックスシートを大きく上回る居住性を誇ります。座席鉄の筆者(安藤昌季:乗りものライター)としても、「国内最高の鉄道座席の一つ」と評価できるものです。
先頭の1号車と6号車は、この時期には珍しくなっていたハイデッカー構造を採用。側窓は1列1枚で、かつ支柱が細いため眺望性に優れ、先頭付近では前面展望も楽しめます。中間車には超大窓を配した個室もあり、「乗ること自体が楽しみになる」列車といえます。
また、2階建て構造のカフェテリア車両があり、食事を楽しめます。定期運行される特急列車で、予約なしにある程度本格的なメニューが提供されるのは、私鉄特急では「しまかぜ」だけ。JRを含めても九州の観光特急「36ぷらす3」や四国の「四国まんなか千年ものがたり」程度で、かつての特急食堂車と同等の設備を備える唯一無二の私鉄特急といえます。
さらに、洋風個室や和風個室などグループ向け設備が充実しているのも特徴です。特に個室は1列車各1室のみのため、運行開始から現在まで予約困難なプラチナチケットになっています。
衝撃のデビューを飾った「しまかぜ」は、運行開始から13年目を迎えています。現在はどのように利用をされているのかを確かめるため、2026年1月の火曜に近鉄名古屋発「しまかぜ」に乗車しました。
「しまかぜ」は大阪難波、近鉄名古屋、京都の3ターミナルから賢島まで走ります。近鉄名古屋駅は平日にもかかわらず、行楽客が列をなしていました。「しまかぜ」が入線するとカメラが向けられ、先頭車では記念撮影が始まります。運行開始当初から見られた人気者ぶりは、現在でも変わらないように感じられます。
1編成にしかない激レアの和風個室
列車は近鉄名古屋を10時25分に出発。その時点でほぼ満席でした。筆者が友人と利用した和風個室は、編成中1室のみのレア設備です。しかも赤と黒を基調とした和風モダンスタイルは、三つある編成のうちの第3編成のみで、第1・第2編成の和風個室は落ち着いた色合いになっています。第3編成はプレミアムシートもクッション構造が改良されていて、さらに座り心地に優れます。
予約してくれた友人も「見たことがない」と興奮するほどのレア設備でした。「しまかぜ」の和風個室は掘りごたつがあり、座椅子はリクライニング機能があります。大々的に案内はなされていないので、気が付かない人もいそうです。室内はゆとりがあり、荷物も充分に置けるほか、窓が鉄道車両ではトップクラスの大きさで開放感が抜群です。個室内の壁に備え付けられたモニターで、前面展望などの映像コンテンツを楽しめます。
隣の洋風個室の座席は、リクライニングはしないものの、とてもゆったりとしたL字型のソファです。窓向きに配置されていて、景色を楽しみやすいのも特徴です。
カフェ車両は1階席と2階席があり、どちらも窓向きに座席が設置された独特のスタイル。営業開始前から行列ができていました。
乗車時の食事メニューは「松阪牛カレー」「松阪牛重」「はまぐりのシーフードピラフ」「カツサンドセット」で、友人と手分けして全メニューを注文しました。カレーはしっかりとしたコクのあるルーがすばらしく、松阪牛重も上品な味付け。カツサンドは肉厚でボリューム満点でした。個人的には「はまぐりのシーフードピラフ」の高級感が好みでした。40分ほど利用しましたが、退席時もほぼ満席のままでした。
特筆すべきはスイーツセットです。特にケーキの質に関しては、富士山麓電気鉄道「富士山ビュー特急」の「スイーツプラン」で提供されるケーキと並び、最高レベルの品質と感じました。
始発駅でほぼ満席のため、途中駅での乗車はほとんど見られません。伊勢市駅で下車客がいたものの、7割以上の乗客は乗ったままで、賢島を起点にリゾート地へ向かう足として機能としてるといえそうです。
なお、11時54分着の鳥羽停車前後でカフェ車のスタッフが個室に来て、デリバリーサービスを案内します。私は友人の食べていた「シーフードピラフ」が気になったので注文したところ、個室内でカフェ車両と変わらないメニューが提供されました。
12時27分賢島到着。5割程度の乗客が終点まで乗り通している印象で、「しまかぜ」ならではの旅を楽しんでいるようでした。
