直すべきは「教師の対応」…”学級づくり・人間関係づくり”に役立つ教材「五色百人一首」を効果的に使うコツ

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学校にいる子どもを、どうしたら成長させてあげられるのか。「教材の力が半分、教師の腕が半分」と言うのが、著者・長谷川博之氏の持論だ。教材が優れていても、それを使いこなす技量がなければだめ、ということであろう。今回は「五色百人一首」を例に、教材を効果的に用いるためのポイントを解説する。

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【前編を読む】きっかけは、まさかの「百人一首」! 九九もできない「いわくつき」の小学生が算数で100点をとるまで

百人一首で教室が荒れる?

五色百人一首に取り組む中学教師が増えている。今までに築き上げられてきた、「学級づくりに役立つ」という事実が大きな魅力なのである。

今年こそ取り組もうと決意し、教育技術研究所から発売されている副読本やDVD、あるいはYouTube上に公開されている動画などを使って学び、初めて授業にかけてみる。

多くの生徒は熱中する。中学校ではなかなか見られない光景がそこに広がっている。

だが、一部の生徒はしらけている。「なんだこれは」という顔をしている。「やってられるか」というような反抗的な態度を取る生徒もいる。

以後何回百人一首に取り組んでも、彼らを巻き込むことができない。大勢が熱中しても、一部がその熱中に水を差すような態度を取りつづけていれば、それは教室全体に波及していく。

「雰囲気が悪くなってしまうから、取り組むこと自体を止めようと思っている」

そんな相談がセミナーで寄せられる。ひとつやふたつではない。

「学級づくり」「生徒対生徒、教師対生徒の人間関係づくり」を目的として行っているはずの取り組みで、ねらいとは逆の事態が生じてしまっていることに悩んでいる教師がいるのである。

特性を理解すれば、マイナスの指導が減る

発達障がいの理解が進むと、校内の怒鳴る指導、皮肉を言う指導が激減する。勤務校では、7年間かけて、「理不尽な力の指導」がなりをひそめた。

もちろん、自分を変える痛みから逃げるために、発達障がいを受け入れない教師もいる。

そのような教師は、全員に対し、同じ時に同じことを同じレベルですることを求める。

それをしない子どもを叱責する。自分に対して反抗しているとか、やる気がないからしていないのだとか、常に現象をマイナスに捉える。子どもたちが自分の意図した通りに動かないことに腹を立て、目を吊り上げ、大声を出したり、皮肉ったりする。そのような「指導」の連続で、子どもの心を追い詰めていく。

子どもを犠牲にして自分の心の平安を保っている。まさに犯罪だ。

TOSSでは、百人一首や名句百選、チャレランの取り組みを通して「負けを受け入れなかった子どもが、受け入れるようになった」事実が数多く報告されている。

そのような事実を生み出したのは、教材の力が半分、そして、教師の腕が半分である。

「百人一首をしたら授業が崩れた」

「やりたくないという声がどんどん増えた」

このような声が耳に入る。その教師たちは、「それは、この教材が悪いのだ(目の前の子どもたちには向かないのだ)」という思いを抱いている。

私は、それは違うと考える。そういう教師は、ただただ百人一首をしているだけなのではないか、と考えるのである。

ユースウェア(効果的な使い方)は決まっている。決まっているが、目の前の子どもたちに必要な指導ならば、躊躇(ちゅうちょ)なく入れていく必要がある。

●札を取れない子が取れるように工夫をしているか。

●札を取れない子が取れるようになるまで、継続的に支援をしているか。

百人一首も授業である。授業であるから、このような働きかけをするのが教師の役目である。そういった仕事をせず、ただ毎回札を読むだけだとしたら、取れない子は永遠に勝てるようにならない。

指導の仕方を直すのが、解決の道である

やってもやっても勝てなかったら、嫌になるのも無理はない。そのうちに、逃避したり、反抗したり、他人を攻撃したりするようになる。それらはすべて、自分の心を守るための言動なのだ。

「やりたくねえ!」と言う子は、これ以上負けることが嫌で、負けると決まっている勝負から逃げているのである。「めんどくせえ!」も同じだ。

ひとつ対応を間違えば学級のその後にも影響を及ぼしていくような事態に思える。

だが、落ち着いて考えると現状打破のヒントが見えてくる。

様々な生徒がおり、諸事情あることは承知の上だ。そのうえであえて述べると、彼らは百人一首に反抗しているのではない。その生徒と教師との人間関係がまだ築かれていないから、そのような態度を取るのである。

直すべきはこちらの指導の仕方であり、その「ひとり」との人間関係を確かなものにするために、授業中の、また授業時間以外の教育行為を選択し、次々に実行していけばよい。根気が必要だが、必ず成果はあがる。次回は私の経験を述べる。

*初出『教育トークライン』2011年4月号。最低限の加筆修正を数カ所行った。

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【前編を読む】きっかけは、まさかの「百人一首」! 九九もできない「いわくつき」の小学生が算数で100点をとるまで