交換留学が中止になりそうな女子大学生。日本語の参考書を手に思いを打ち明けた(4月30日、中国・上海で)=守谷遼平撮影

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 【上海=田村美穂、北京=吉永亜希子】中国政府が昨年11月の高市首相の国会答弁に反発した後、中国の複数の主要大学が日本への交換留学生の派遣を止めていることがわかった。

 大学関係者や学生らが明らかにした。日中関係の悪化が、将来の両国の交流を担う若者の可能性を奪っている。

交換プログラム

 留学生の派遣が停止しているのは、日中の大学間の協定に基づいて実施される交換留学プログラム。中国教育省は首相答弁9日後の昨年11月16日、日本の治安が悪化していると主張し、日本への留学計画を慎重に検討するよう促した。

 北京の大学関係者は「各校が政府の意向を忖度(そんたく)し、プログラムを止めている」と説明する。外国語教育を専門とする北京の有名大学や、上海の名門・復旦大学などが留学生派遣を停止している。

 大学を通さずに私費留学する学生は制限を受けていない模様だ。ただ、北京の大学教授は「両親らに反対されて留学を控えるケースも出ている」と語る。

 25年間、留学仲介業を営む中国人男性によると、昨年は4月の新学期に合わせて約60人を日本に送り出したが、今年は約5人になった。男性は「政治的な対立があっても、民間交流や留学は止めてはならない」と憤った。

長期化も

 日中関係筋によると、日本政府が2012年に沖縄県の尖閣諸島を国有化した際、中国各地で反日デモが起きて両国関係は冷え込んだが、中国側で日本との留学プログラムを止める目立った動きはなかった。日中関係改善の見通しが立たない中、留学生派遣の停止は長期化する可能性がある。

 こうした動きに日本留学を希望する中国人学生が翻弄(ほんろう)されている。

 「今後の人生に影響する残念な出来事になった」。春からの交換留学の予定が白紙になった江蘇省の大学院に通う女性(23)は4月下旬、涙声で語った。

 将来の夢は裁判官で、東京都内の大学院で約5か月間、法律を学ぶ予定だった。昨年11月に留学が決まったが、約1か月後に大学側から「安全面の懸念がある」などとして中止を伝えられた。女性は、「『何があっても自己責任』という誓約書を書く」とかけ合ったが無駄だったという。

 上海の女子大学生(19)も、「今秋からの留学は諦めるしかない」と落胆している。4月から日本に交換留学する予定だった大学の先輩から「留学が中止になった」と聞いた。大学側は「秋も日本への留学は難しい。中止になる心の準備をしておいて」と説明しているという。

 女子大学生は「留学は本来、政治に影響されないはずだ。これまでの努力で得られた貴重な機会なのに」と悔しそうに話した。