「これ動物園だった?」母が遺したアルバム――正装して出かけた山形屋 遠かった鴨池…”蘇る昭和の鹿児島”
「これ動物園?動物園ですよ鴨池動物園」
「こちらが焼失して今の場所に本店を移した」
地域の店や家庭のアルバムに眠る“昭和の鹿児島”を1冊の写真集に。写し出された懐かしい風景とともによみがえる“残したい記憶”とは。
■戦火を逃れた写真がつなぐ記憶
「お世話になります」
江戸時代から続く鹿児島市の菓子店、明石屋。奥から出てきたのは、モノクロの写真です。
(明石屋・新福里恵さん)
「下の2枚が昭和初期ですね。名山町の産業会館の近くに本店がありまして、あとは高見馬場の交差点の角に支店がありまして、その時の写写真になります。こちらが4代目の岩田喜藤次」
昭和10年頃に撮影されたという名山町と高見馬場交差点にあった店。どちらも戦争で焼失しました。
(明石屋・新福里恵さん)
「戦争で殆ど焼けてしまったのでなかなか資料が残っていなくて…」
戦火を逃れた貴重な写真。男性は、カメラを構え写真を複写します。こうした古い写真を地域の店や家庭から募集し、1冊の写真集にしようという取り組みです。
(樹林舎取材担当・安田考治さん)
「応募があった所を回って70件ぐらいですかね。4月の1日ぐらいから」
■“身近な一枚”を歴史の記録に
制作するのは愛知県名古屋市の出版社です。これまで鹿児島を含め、全国各地でこうした写真集を手掛けてきました。今回は「鹿児島・日置の100年」と題した写真集をつくります。
(樹林舎編集部・折井克比古さん)
「ほんの数十年前の地域の写真、しかも身の回りを写しただけの写真であってもやはり、それは時代をしっかり記録しているものだったり大事な資料だと思うので、それを今のうちに集めておきたい」
主に集めているのは、家庭のアルバムに眠っている写真です。
(樹林舎編集部・折井克比古さん)
「自治体で出されている歴史の本とかに載らないような、もうちょっと身近なもの、ああ懐かしいとか、ああここがこんな様子だったんだとか一目でわかるような地域のアルバムにできたらと思っている」
■懐かしさとともに蘇る記憶
この日、取材を担当する安田さんたちが訪ねたのは、鹿児島市内のお宅。澁谷さんが見せてくれたのは親から引き継いだという古いアルバムです。
(澁谷幸一さん・取材担当大脇直さん)
「どこですかね?」
「天文館の蜂楽饅頭がありますよ。その隣においどんが店ってあるその前なんですよ」
当時両親が働いていた土産物店の近くで撮られた写真だといいます。
(澁谷幸一さん・大脇直さん)
「お店がどこか?」
「江戸屋です。お菓子の江戸屋。もうなくなって」
江戸屋があった場所は今はボートレースのチケット売り場になっています。
(澁谷幸一さん)
「天文館に行くにしても、山形屋も今ならラフな格好で行くけどあの頃は正装で、多分母も着物までとは言わないけど化粧して行楽地に行くイメージで行った」
一昨年、閉店した「イオン鹿児島鴨池店」の場所にあったのは――。
(澁谷幸一さん)
「(これ動物園?)動物園ですよ。鴨池動物園」
1972年に平川町に移転するまで鴨池にあった動物園。中には遊園地や水族館もあり、年間90万人以上が訪れた年もありました。
(澁谷幸一さん)
「鴨池の電停が高台になっていて、それを下りて行って動物園に。その頃は、鴨池はすごい遠くにあるイメージだった」
子どもの頃の思い出は他にも――。
(澁谷幸一さん・大脇直さん)
「これは桜島が映ってるから城山。城山遊園地(城山遊楽園)でしょうね」
「ああ、そうそう城山」
「城山ホテルになる前ですね」
1963年、当時の城山観光ホテルの隣に開園した「城山遊楽園」です。
(大脇直さん)
「ぐるっと回る展望台がありましたね。ジェット滑り台もありましたね。噴水もあった、ウルトラマンの怪獣がよくきよった」
アルバムをめくれば次々に蘇る懐かしい記憶。
(澁谷幸一さん)
「(これは太陽国体の時?)そうそう。太陽国体の聖火(炬火)リレーにうちの弟が出たんです」
このアルバムを作ったのは、母・弘子さん。我が子への愛情がにじみ出ています。
(澁谷幸一さん)
「懐かしいですよね。特におふくろは、写真好きっていうか旅行好きでしたから…まあ早く亡くなってしまったなとは思う」
幸一さんが18歳のころ、弘子さんは40歳の若さで亡くなりました。
(澁谷幸一さん)
「子どもには厳しいでも愛情ある母だった。主旨はちょっと違うけど「生きた証」っていうか、残せればなと思って応募した」
遠方に住む子どもや孫に写真を見せたい気持ちもありますが…
(澁谷幸一さん)
「これ見ても誰?って私たちの代、私と兄弟ぐらいしか分からないから多分こういうのは、下の代に引き継いでも、どこか倉庫に閉まっておくか、次引っ越した時には処分されるかってなると思うんです。だから少しでもこういうの(写真集)に出させて頂いて少しでも後に残ればなと思って」
懐かしい写真が蘇らせる、後世に残したい大切な記録と記憶――。制作する樹林舎では今月末まで写真を募集し。10月ごろの出版を目指しています。
(KYT news.everyかごしま 26年4月16日放送)
