実家はタワマンをいくつも持つ超富裕層。32歳医師の息子の28歳彼女に母が抱いた疑惑調査でわかった切ない事情

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「医師に関する調査の依頼は多くあります。絶対医師と結婚したいという方もいれば、医師の夫のハラスメントもあったり……少なくとも調査依頼の中で“医師”というキーワードはとても大きいです。調査をしていると、思いのある医師の方こそ、稼ぐことが難しい現状も垣間見られます」

こう語るのは、キャリア10年以上、3000件以上の調査実績がある私立探偵・山村佳子さん。彼女は、メンタル心理アドバイザー、夫婦カウンセラーの資格を持つ。

山村さん連載「探偵はカウンセラー」は、山村さんが心のケアをどのようにしていったのかも含め、さまざまな事例から、多くの人が抱える困難や悩みをあぶりだしていく。個人が特定されないように配慮をしながら、家族、そして個人の心のあり方が、多くの人のヒントとなる事例を紹介していく。

今回山村さんのもとに相談にきたのは、美容関連会社を経営する60歳の恵美さん(仮名)だ。自慢の息子は32歳で、大手病院の勤務医をしている。28歳の女性と結婚がきまり、両家で顔あわせをした直後に、相手への疑惑がつのり、カウンセリングルームに来た。

32歳のとき、35歳医師の夫と死別

32歳の時、医師の夫と死別した恵美さん。夫は当時35歳で勤務医だったので、財産はほとんどありませんでした。そこで当時4歳の息子を連れて、静岡県の実家に戻り、必死で働きながら育て上げます。息子はシングルマザーで奮闘する恵美さんに負担をかけまいと、国立大学の医学部に進学し、亡き父と同じ道へ。現在は多忙な勤務医として人の命を救うために腕を磨いています。恵美さんにとって、目の中に入れても痛くないほどかわいく、そして自慢の息子なのです。ただ、恵美さんは愛しながらも適切に距離感で育てたので、息子はいわゆる“マザコン”ではありません。

そんな息子から「この人と結婚する」と恵美さんのもとに彼女を連れて来たのが半年前。医師仲間の紹介で出会った女性は、いかにも港区女子という雰囲気。恵美さんは彼女に嫌悪感を覚え、息子に言うと、彼女は実際の社長令嬢で、働かずに父の会社から給料をもらっている、リアルな“パパ活女子”だと判明します。

両家初顔合わせの日、彼女の両親の冷たい印象と、彼女の父親が「医者と結婚するなんてたいしたものだ」と言い放った言葉が心に引っ掛かります。それ以上に気になったのは、息子の恋人の不安定な様子だったとか。恵美さんは30代の頃、ラウンジに勤務しており、男女の機微を見抜く目があると私たちに調査を依頼しました。

ただ、固定観念にとらわれては見えないことも出てきます。調査をすることで浮気をしていない可能性も十分ありえます。むしろそうであれば安心して結婚に進むこともできるだろうとも思い、丁寧に調査することにしました。

働かずとも父親から「給与」をもらう28歳

息子の彼女は、実家がある港区内のタワマンの一室に住んでいます。そこは彼女の父が複数の物件を持っており、息子と結婚した場合、一室を譲渡すると言っているとか。富裕層が持っている財産の多さと発想にはいつも驚かされます。

彼女は父親の会社から「給与」をもらってはいるものの、実際は働いていないので、まずは家の前の張り込みからスタート。1日目は空振りでした。2日目15時に出てきた彼女を追うと、近くのドラッグストアに行き、複数の小瓶のサプリメントと避妊具を購入。彼女はとても華奢でロングヘアもツヤツヤ。たっぷりとお金をかけて全身のメンテナンスをしていることを感じます。

その夜、20時に2000万円はするドイツの高級車が来ると、荷物を持った彼女がエントランスから出てきて助手席に乗り込みました。恵美さんの疑惑が単なる疑惑でありますようにと思っていた私たちは、疑惑が当たっている可能性が高いことを感じます。車はとても安全運転のまま、4時間ほどかけて長野県白馬スキー場の高級ホテルへ。私たちの車は、このような調査に備え、ゴールデンウィークあたりまでスタッドレスタイヤにしており、追跡は楽にできました。

もっとはっきりした証拠を撮ってください

相手の男性は、40代半ばくらいのダンディな人物で、とても目立つ高級時計を身につけています。そしてスキーも上手い。彼女もなかなかの腕前で、朝9時から16時まで、ほぼ休憩せず滑ったあと、手を繋いでホテルに戻っていました。朝、購入した避妊具はここで使ったのでしょう。翌日の早朝に東京に戻り、彼女のマンション前でキスをして別れます。明らかに男女の関係がある雰囲気なので、浮気の証拠になるでしょう。

「男性とスキー旅行をしていました」と恵美さんに報告すると、「そうでしょう。私のカンは間違っていないんです」とホッとしたようでした。ただ、調査の内容を話すと「友達と遊びに行ったともいえる内容です。もっとはっきりしたものをお願いします。出るまで頑張ってください。お金は払います」と言われました。

それから4日間は空振りで、都内の下町に住む息子のマンションに行くこともありましたが、まだ合鍵の交換をしていない家デートのようです。息子と彼女がスーパーで買い物する様子も追いました。仲睦まじい美男美女カップルという雰囲気で、フルーツばかりをかごに入れる彼女に、息子が「肉も食べよう」と優しく言っていました。

金曜日の夜は何かがあるのではないかと、気合を入れて待っていると、18時に出てきた彼女はタクシーで西麻布のレストランに向かいます。調べると会員制なので外で待機。そこには続々とお金持ちそうな男性と、美しい女性が入っていく。21時にお開きになって、彼女はある筋肉質な男性と腕を組んでいました。男性は彼女にハードなボディタッチをしており、彼女も満更でもなさそう。

タクシーに乗り、歌舞伎町の高級なラブホテルの前で横付けしたので、私たちも後を追います。男性は既婚者のようで、左手の薬指に指輪が光っている。部屋を選びながらも彼女にボディタッチをしており、これは浮気の証拠になります。

複数の男性と交際を…

以上、8日間の調査内容を恵美さんに報告しました。

恵美さんは「想像よりも激しいですね」と苦笑していました。これは後でわかることですが、スキーの男性も既婚者だったのです。彼女は恵美さんの息子を本命にしながら、2人の既婚者のほか、複数の男性と交際していたのです。もしかしたらお小遣いなどももらっていたのでしょうか。

恵美さんは息子に対し包み隠さずに「気になるところがあったので、探偵に調べてもらった」と言います。ただ、ラブホテルはやめておこうと判断し、息子にはスキー旅行までの証拠を見せます。すると「彼女はさみしがりやで精神的に不安定。恋愛体質なのは知っていたけれど、これほどだとは思わなかった」と驚いていたそうです。

息子は「彼女は親から『優秀なお兄ちゃんたちが、全てをやってくれる。好きなことだけやっていればいい』と甘やかされて育った」と言っていたそうです。彼女は名門私立の女子高で小学校から大学までエスカレーターで育ち、なんの挑戦も不安もなく28歳まで生きてきたとか。

「挑戦しようとすると親が『そんなことはやらなくていい』と阻止したんでしょうね。これもまた、虐待ですよ。あちらの母親はパーティだ旅行だとほったらかしていたそうなので、ネグレクトもあったのかも。彼女は寂しさを埋めるために男性の肌を求めていたのでしょう」

私もまさにその通りだと思いました。もしかすると愛着障害を抱えているかもしれません。そうなると、彼女に必要なのは、“寂しさを満たしてくれる男”ではなく心理カウンセラーや精神科医です。

親からの暴力は、心身に大きな傷を残します。これが原因で大人になってから心の病になることもあります。ここでいう「暴力」は実際に手を挙げることばかりとはいえません。「無関心」も十分暴力なのです。これが結婚や人間関係に大きな影響を与えることがあります。私が見る限り、親が子供を愛し、適切なサポートを受けながら育った人は、人間的にも強いと感じます。まさに恵美さんの息子さんはそういう強さがあるからこそ、「人を救いたい」という思いを抱けたのでしょう。

彼女の父親から言われたこと

その後、息子は彼女と別れることを決めたそうです。

「息子は、『他にも証拠があるんだろうけど、僕はこれで十分』と話し、彼女と別れることを決めます。息子も周囲の圧力や彼女からのアプローチで『結婚しなければならない』と責任を感じていたようですが、内心では結婚はまだ早いと思っていたみたいです」

彼女と別れることを伝えたところ、彼女の父が大激怒。息子のところに怒鳴り込んできたそうですが、証拠を見せると黙ってしまったそうです。その後、彼女は両親からひどく叱られて、「あなたとどうしても別れたくない」と泣いて連絡してきましたが、息子の心はもう離れていました。そして「あなたが心の病に向き合ったら、その後のことを考えよう」とアドバイスし、彼女はメンタルケアの病院に行きます。

その後、彼女の父親から恵美さんに連絡があり、「娘が色々な男性と関係を持っていたことがわかりました」と話していたそうです。父親は「愛着障害からセックス依存症になっていることがわかりました。調査がなかったら、とんでもないことになっていた」と感謝の念を伝え、恵美さんに「調査費用を全額支払う」と言ってきたそうです。さらに、息子にも慰謝料と口止め料として100万円を振り込みたいという申し出も。

「さすがに慰謝料は辞退し、調査費用だけはいただきました。上っ面しか見ていない人だと思っていましたが、さすがに自分の娘のことはちゃんと考えているんだなと安心しましたよ。息子も彼女に対して違和感があったみたいです。私は息子に『強烈な母の愛を発揮するのは、これが最初で最後だからね』と伝えたら笑っていました。つまり、笑って済ませるほど、彼女のことが好きではなかったってことですよ。身内だと許せませんが、他人という距離感で見ると、彼女は可哀想な子だな、と感じます」

恵美さんは、目の前の稼ぎよりも人を助けたいという気持ちで医師の仕事をする息子さんを誇らしく思っています。そんな息子さんを健やかに育てたのは、自分の人生を重ねるのではなく、息子個人の人生を尊重した恵美さんだと感じました。しかし、医師が「命を救う仕事をする」と選びやすくするために長時間労働賃金格差の問題を解決する必要があることも頭をよぎります。

自分と向き合い受け入れることは、新しい道に進むためには実はとても大切なことです。幸い、父親が現状をきちんと受け入れ、彼女のさみしさや心の病も明らかになりました。そこに向き合い、回復することを祈るのみです。

今回の調査費用は200万円(経費別)です。

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