新NISA、オルカンだけじゃない…富裕層の「知られざる防衛術」と資産1000万円から始めるべき「最強の通貨分散」

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タイ移住で可処分所得は2倍に

南アジアに行けば、日本よりもはるかに安く豪遊できる

そんな昭和から平成にかけての常識を未だに信じている日本人は少なくない。だが、現実は残酷だ。日本経済の停滞が続く一方、タイでは富裕層や中間層の底上げが進んでいるのだ。

前編記事『「高い」と文句を言う日本人の横で“2万円のカニ”を爆食いするタイ人…バンコク飲食店オーナーが明かす「絶望の格差」』では、安藤功一郎氏の証言をもとに、タイと日本の残酷な「購買力逆転」の現実をお伝えした。

国全体で見れば日本経済の先行きは決して明るくはない。しかし、主語を「個人」に変えれば話は別だ。この状況を逆手にとり、資産を賢く守り抜く現実的な生存戦略は確かに存在する。

海外不動産のスペシャリストであり、自身もタイやドバイなど複数に拠点を持つ宮脇さき氏は、海外へアセットを移す実利を次のように語る。

「タイに移住した場合、日本と比べて可処分所得が体感で2倍ほどに増えます。例えば、日本で年収1400万円を稼いでも、月の手取りは税金などを差し引くと80万円程度。都内で少し良い暮らしをすれば、手元にお金は残りません。一方でタイは生活費が安く、プールやジムが付いた高級コンドミニアムでも家賃は月15万円ほど。1時間のマッサージが2500円程度で受けられ、ゴルフも格安です」(宮脇氏、以下同)

生活費の安さ以上に決定的なのが、税制の違いだ。

「タイは海外で発生した収入に対して、国内に持ち込まなければ非課税です。また、タイには相続税制度がありますが、基礎控除額が高く設定されているため、一般的な資産規模では課税対象とならないケースが多いのが特徴です。日本のように富の再分配が厳しくないため、富裕層はもちろん、これから資産を形成したい人にとっても非常に有利な環境と言えます」

「1億円あっても安心できない」円建て資産の悲惨な末路...

とはいえ、大半の日本人にとって「海外移住」はすぐに決断できるものではない。では、日本に住みながらこれまで通り「円預金だけ」を続けるとどうなるのか。実はこの「何もしない」ことこそが、現在では致命的なリスクになり得る。

「今の時代、『円建ての資産しか持っていない』ことは最大のリスクです。仮に、1億円をそのまま銀行に預けていた人は、近年の急激な円安によって、ドル換算で30万ドル近い資産を失った計算になります。逆に、1ドル=100円前後の時期に外貨預金へ移していた人は、特別な投資をしていなくても為替差益だけで5000万円相当の利益が出ているケースもあります」

さらに深刻なのが、将来の支払いが「外貨」で決まっているのに、資産を「円」で持ち続けてしまうケースだ。

「お子さんをヨーロッパのボーディングスクール(寄宿学校)に通わせているご家庭で、その学費を日本の学資保険など『円建て』で準備していた事例がありました。結果的に、急激な円安と現地のインフレというダブルパンチに遭い、用意していた円資産では到底学費が足りなくなってしまったのです。為替への見通しが甘いと、最悪の場合は『学費が払えないから帰国してほしい』とお子さんに頼まざるを得ない事態に追い込まれます」

円のみを持つリスクへの防衛策として、外貨建ての実物資産、とりわけ「海外不動産」の保有は有力な選択肢となる。

「日本に住みながらでも海外不動産は購入できます。例えば、ドバイの不動産は個人でも購入のハードルが低く設定されています。タイの場合は外国人向けの価格がやや割高になりますが、現地の法人を設立することで、通常は買えない戸建てを購入するという手法もあります」

さらに富裕層の間では、「プライベートバンク」を活用して資金効率を最大化する『2階建て運用』が定石になっているという。

「仮に手元に1.5億円の資金がある場合、全額を現金で払って不動産を買うようなことはしません。まず『1階部分』として、その1.5億円をそっくりそのままプライベートバンクに入れ、手堅い債券や株式で運用して年5%程度の配当を得ます。

次に『2階部分』として、その運用資産を担保に入れ、金利2%という低金利で1億円〜1.2億円ほどの資金を借り入れます。そして、その借りたお金でドバイの不動産を購入するのです。こうすれば、元の1.5億円を減らさずに運用益を得ながら、さらにドバイ不動産からの家賃収入(年間750万円程度)をまるごと上乗せして狙うことができます」

手元の現金を減らさずに収益源を増やす合理的な手法だが、当然ながらリスクも存在する。担保価値が下落した際の「マージンコール(強制清算)」だ。

「相場が下落して担保価値が目減りした際、現金で補填できなければ強制的に資産が売却されてしまいます。これを防ぐには、最大7割まで借りられる枠があっても、あえて借入を5割程度に抑えてバッファを持たせること。

また、価格が変動した瞬間に即清算するような金融機関ではなく、1ヵ月程度の猶予期間を設けてくれる海外の金融機関を選ぶなど、事前の見極めが必須ですね」

資産1000万円からできる、通貨分散入門

プライベートバンクのような手法は富裕層に限られるが、資産1000万円〜3000万円規模の一般的な会社員は、どうやって資産を防衛すべきか。宮脇氏が勧めるのは「年齢に応じた資産配分」と「少額からの通貨分散」だ。

「20代、30代と若ければ株式の割合を大きくしても問題ありません。しかし60代以上であれば、株式は全体の4割以下に抑え、残りの6割は、債券、不動産、アンティークコイン、外貨建てMMFなどの手堅い運用に回すのが基本です」

外貨建てMMFとは、為替リスクはあるものの元本割れしにくく、いつでも換金できる金融商品だ。富裕層もポートフォリオに組み込んでいる定番の手法だが、国内のネット証券(楽天証券やSBI証券など)から少額で簡単に購入できるため、通貨分散の入り口として使い勝手がよい。

一方で、昨今の「新NISAでS&P500やオルカン(全世界株式)に全力投資しておけば安心」という極端な風潮については、そう単純ではないと語る宮脇氏。

「今は円安の影響もあって、円ベースでは資産が増えているように見えます。ただ、これが円高に振れれば、そのぶん評価額は一気に縮みかねません。資産が3000万円くらいまで育ってきたら、同じ株価指数に偏って持つのではなく、値動きの異なる資産にも少しずつ目を向けたほうがいいでしょう。

例えば、ビットコインETFを少額だけ組み入れたり、海外の証券口座を開いてファンド運用を活用したりする方法があります。大事なのは、資産全体が円だけの動きに振り回されない状態を作っておくことです」

現金より武器になる。日本国内の「信用力」を使い倒せ

ここまでの事実を突きつけられると、「一刻も早く海外へ資産を逃がし、移住すべきか」と焦る人もいるかもしれない。だが、宮脇氏は安易な海外進出に釘を刺す。

「何の武器も持たずに『チャンスを探しに海外へ』というのは甘すぎます。日本人が最も恵まれているのは、国内の金融機関から融資を引ける信用力や、低金利の住宅ローンを使える点です。会社員としての属性や国内の事業基盤があるなら、まずは日本に留まってその『信用力』を徹底的に使い倒すほうが、圧倒的に効率よく資産を拡大できます」

つまり、海外移住が明確なメリットになるのは、国内の融資枠を使い切った投資家か、暗号資産などで30%以上の重い税負担を抱えている層などに限られる。

「まずは日本国内で働きながら、実物資産も含めた分散投資でしっかりと自己資金を作る。十分な余力を持ったうえで海外展開を検討するのが、もっとも失敗しにくいルートです」

日本の国力や円の価値が落ちているのは、もはや変えようのない事実だ。円建ての給与と預金だけでやり過ごせる時代はとっくに終わっている。

しかし、悲観して立ち止まる必要はない。

外貨建てMMFのように、少額からリスクを抑えて通貨を分散する手段はすでに用意されている。マクロ経済は変えられなくとも、個人の資産防衛は今日から始められる。

まずは手持ちの資金を少しでも「円以外」に振り分けること。それが、今の日本においてもっとも現実的な生存戦略となるはずだ。

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