映画『教場 Requiem』©フジテレビジョン ©長岡弘樹/小学館

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 木村拓哉の活躍がますますめざましい。2024年には映画『グランメゾン・パリ』をヒットに導き、2025年には山田洋次監督作『TOKYOタクシー』で倍賞千恵子と共演、そして2026年に入ってからは映画『教場 Reunion』『教場 Requiem』が配信・公開となり、立て続けに話題作の主演を務めている。

参考:『教場』は“何者”であるかを模索しつづける物語 『Requiem』への納得感といささかの疑問

 平成のスターと称されることも多い木村だが、令和に入ってもその人気は衰えることがない。ここまで長く活躍を続ける木村拓哉の魅力とは何なのか、改めて考えてみたい。

 木村は言わずと知れたSMAPのメンバーであり、アイドルとしてデビューしている。順風満帆なスター街道を歩んできたイメージだが、実は不遇ともいえる時期もあった。俳優デビューにしても、いきなり主演といった華々しいものだったわけではない。今でこそアイドルが演技することは当たり前になっているが、当時はまだ“色物”的な見方をされることも少なくなかった。

 木村自身も「それまでほんとに、ちょっと言葉に語弊があるんですけど、ナメてたんですよ」と言い、演技に目覚めたのは蜷川幸雄の舞台への出演がきっかけだった。17歳だった1989年に『盲導犬』に出演し、「あの舞台を経験していなかったら、たぶん今、自分『この仕事を』やってないです」と話している。(※1)

 それからはテレビドラマへの出演が続くが、最初は脇役がほとんどだった。木村の俳優としてのブレイクは、1993年のドラマ『あすなろ白書』(フジテレビ系)の取手治役だろう。仲間内のムードメーカーのような役で、「俺じゃダメか」と言いながら、石田ひかり演じるヒロインのなるみを後ろから抱きしめる演技が大きな話題となった。しかし、取手はなるみに告白するも「掛居くん(筒井道隆)が好きなの」とフラれてしまう。いわば「当て馬」役だったのだ。アイドルがそういう役を引き受けるというのは、実は相当な覚悟だったのではないだろうか。

 しかし、この役で木村は俳優としてのキャリアを大きく前進させる。1996年『ロングバケーション』(フジテレビ系)、1997年『ラブジェネレーション』(フジテレビ系)、2000年『ビューティフルライフ』(TBS系)と恋愛ドラマに主演すると、“平成の視聴率男”として不動の人気を誇るようになる。

 木村の代表作は、人によって意見が分かれるところだろうが、2001年からの『HERO』シリーズ(フジテレビ系)は、間違いなく代表作の一つといっていいはずだ。2006年には特別編、2014年には第2シリーズ、2007年と2015年にはそれぞれ映画版も制作されている。木村が演じた久利生公平は、ジーパンを履いて現場にすぐに向かっていく破天荒な検事だ。真面目でお堅い周りの検事たちとトラブルを起こしながらも、核心をついていく仕事ぶりに次第に仲間たちの信頼を得ていく。木村は、この「仲間と仕事をする」ということをテーマにした作品が良く似合う。『グランメゾン東京』(2019年/TBS系)然り、映画『マスカレード』シリーズも然りだ。そして、それはやはり木村がSMAP出身であることと関係があるように思う。グループでの活動を実はとても大切にしていて、だからこそ役柄でも仲間思いの側面が際立つのではないだろうか。

 例えば、バラエティ番組『この世界は1ダフル』(フジテレビ系)に出演した際、Snow Manの渡辺翔太がニューアルバムを渡そうとすると、木村は受け取りを拒否した。なぜなら、そこに目黒蓮のサインだけがなかったからだ。木村には、CDを渡すときはメンバー全員のサインを書くべきであり、メンバーが欠けている状態で渡すのはグループとしての気遣いに欠けるという考えがあるようだった。それは、グループ活動をしてきた木村だからこその仕事の流儀にほかならない。そしてこの木村自身の哲学が、近年のドラマや映画の役柄にも生かされているように感じる。

 そんな木村にとって、2016年のSMAPの解散は、少なからずキャリアに影響を及ぼしたはずだ。逆風が吹いた時期もあったかもしれない。しかし、そんなときも『A LIFE~愛しき人~』(2017年/TBS系)、『BG~身辺警護人~』(2018年/テレビ朝日系)といったドラマにコンスタントに主演し、ソロでの活動を止めることはなかった。そして、いよいよ2019年『グランメゾン東京』が大ヒットを果たす。それは信頼を失ったシェフ・尾花夏樹がもう一度仲間を集め、再起にかける物語だった。その姿は、木村のこれまでの経験とも重なってみえ、木村拓哉の新章が始まったかのようでもあった。

 それにしても、木村は決して古びることがない。ただそれは、いつも同じままでいるということではなく、時代や年齢に合わせて自分を変革していったということでもあるのだろう。木村は『HERO』映画版の際のインタビューで、「求められることに応える。求められることの凄さは何にも代えられないと思うし。それが『できない』という一言で終わらせられることも、ありっちゃありなんでしょうけど、そこはなかなかできないですね」と話している(※2)。求められることに応え続けることで、自分自身をアップデートしてきたからこそ、木村拓哉は時代を超えて愛され続けているのだろう。

参照※1. https://www.excite.co.jp/news/article/E_talentbank_306823/※2. https://mantan-web.jp/article/20150802dog00m200025000c.html(文=尾崎真佐子)