不具合多発… 「中国製・EVバス」なぜ今リコール? 2年前から把握? 「ブレーキ欠陥」と現場が震える実態、何が起こっているのか

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EVモーターズ・ジャパンはなぜ今リコールを届け出た?

 2025年11月28日金曜日午後2時、中国3社からEVバスを輸入販売するEVモーターズ・ジャパンはかねてから噂があったリコールを国交省からの指摘を受けて届出をしました。

 今回のリコールは重要保安部品であるブレーキホースの不具合です。

【画像】これがEVモーターズ・ジャパンの扱う「EVバス」です!(17枚)

 これまでの経緯を含めて解説していきます。

EVモーターズ・ジャパンはなぜ今リコールを届け出た?(出典:国土交通省)

 EVモーターズ・ジャパンは自動車メーカーではなく、インポータ(輸入業者)になります。

 日本での登録のスタイルは「並行輸入」として新規検査(ナンバーを付けるための最初の車検)を受けていますが、中国のバスメーカー3社と直接契約しているため輸入方法としては「正規輸入」です。

 ただし、EVモーターズ・ジャパンのバスメーカー3社に関しては、中国政府による輸出許可を有しているかという点をジェトロ(日本貿易振興機構)や中国商務省にも問い合わせましたが、該当なし。

 正規の輸出許可を得ているかどうかは不明です。(2017年から電気バスも対象)

 そんなEVモーターズ・ジャパン(EVMJ)が輸入販売するEVバスを巡り、深刻な欠陥と組織的な隠蔽疑惑が露呈しています。これまでの主な経緯は以下の通りです。

 発端は2025年9月1日、大阪で発生したオンデマンドバスの単独事故です。EVモーターズ・ジャパン側は当初「運転手の不注意」と主張しましたが、実際は車両の制御不能が原因でした。これを受け、国交省は9月3日、同社が扱う300台以上のバスに対し「全台点検」を指示しました。

 しかし、その後の点検でもブレーキ等の重要保安部品に不具合が見つかったにもかかわらず、EVモーターズ・ジャパンは事業者(大阪メトロ等)に対し「異常なし」と虚偽報告を行っていた疑いが持たれています。

 大阪・関西万博の現場などでは、ドライバーが乗務を拒否するほど不具合が日常化しているとのことです。

 こうした状況を受け、9月26日には環境省が同社製バスへの補助金申請に対し、異例の警告文を出しました。高額な補助金を目当てに導入が進んでいましたが、車両がまともに稼働できない場合は補助金返還の可能性も示唆されており、安全性軽視と公金利用の在り方が問われています。

 そんなEVモーターズ・ジャパンですが、今回リコールを届出をしました。なお、国交省では「リコール制度」を以下のように定義づけています。

「設計・製造過程に問題があったために安全・環境基準に適合していない(又は適合しなくなるおそれがある)自動車について、自動車メーカーや輸入元が自らの判断により、国土交通大臣に事前届出を行った上で、回収・無料修理を行い、事故・トラブルを未然に防止する制度」

リコール内容(出典:国土交通省)

 こうしたリコール制度ですが、今回のEVモーターズ・ジャパンのリコール内容で、特に注目すべきは届出一覧表にある、以下の部分です。

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 1.不具合の部位(部品名)⇒ 制動装置(ブレーキホース)

 2.基準不適合状態にあると認める構造、装置又は性能の状況及びその原因

前輪ブレーキホースにおいて、ブレーキホースの取り回しの設計検討が不十分なため、ハンドル転舵時に車体等へ接触することがある。そのため、そのまま使用を続けると、ブレーキホースが損傷し、最悪の場合、ブレーキホースに穴が空き、制動力が低下するおそれがある。

 3.改善措置の内容⇒全車両、ブレーキホース一式を対策品に交換する。
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 2.の基準不適合状態の状況や原因には、「ブレーキホースの取り回しの設計検討が不十分」とあります。

 また改善措置の内容としては3.に全車両のブレーキホース一式を対策品に交換する、と記されています。

 なお、「リコール届出一覧表」には記載がありませんが、「ブレーキホース一式を対策品に交換する」の中には、メーカーであるWISDOM社による設計変更も含まれるとのこと。

 さすがに今回はその場しのぎの対応ではなく、設計変更まで考えられているようです。

 実はEVモーターズ・ジャパンのEVバスは多数の不具合を抱えており、ブレーキホースに関しても2年以上前からバス事業者から不具合が報告されており、EVモーターズ・ジャパンは個別にその場しのぎの対応を行ってきました。

 2年以上前からこのような危険な不具合を把握していたにも関わらず、やっとリコールの届出が今になって実現したのです。

これまでのブレーキホース不具合にありえない対応をしてきてた!

 これまでの不具合に対してはどのような対応をしてきたのか。

 EVモーターズ・ジャパンの関係者やバス事業者、整備業者に取材した内容をまとめました。

「今回のリコール対象はウィズダムの小型85台だけですが、実は始まりはウィズダムの大型です。

 万博会場周辺のシャトルバスを含めて、全国に合計163台(2025年3月末時点)が納入されています。最初の異変は2023年秋に大型で発覚しました。

 ブレーキホースの素材が低品質で耐久性がなかったことに始まるのですがブレーキホースの配置が悪く普通に使っていても車体に当たるような設計になっていました。

 根本を保護するスプリングがバラけてホースに当たっていました。

 素材を頑丈なものに変更したのでホースは傷みにくくなったのですが、根本が硬くなって曲げなければ設置できなくなりました。」(EVモーターズ・ジャパン関係者)

「ホースを保護しているスプリングがホースの外皮部分にあたっており、傷みが早くなっていました。

 EVモーターズ・ジャパンはこの状況に対して当たりやすいところに保護剤をつけてブレーキホースの損傷を一時的に防ぐような対応をしただけでした。

 その後、全国各地で大型はもちろん小型(6.99m)のブレーキホースにも損傷が起きていることが発覚しましたがその時のEVモーターズ・ジャパンの対応は『ホースの素材を強化した対策品』に交換することでした。

 しかし素材があまりにも強固であったため今度はホース根元の金具が硬くなって、小型ではスペースの関係上ホースを曲げないと設置できなくなりました。

 さらに使っているうちに動いてタイヤハウスに干渉するようになったのですが、こんな状況でも根本的な改善をせず、EVモーターズ・ジャパンは『当たらないように設置するコツを教える』という対応で逃げていました」(バス事業者)

 なおブレーキホースは重要保安部品であるため、そもそもほかの部品に干渉する状態での取り付けは絶対NGです。また、ねじったり曲げたりして付けることも厳禁。

 取り回し部分の設計から変更し「設計上の欠陥を解消」する必要があります。事情に詳しい整備関係者は以下のように話してくれました。

「バス事業者から指摘があってブレーキホース素材を強化する、ホースをねじったまま設置するなどについては国交省にも他のユーザーにも問い合わせがあるまでは積極的に対応していませんでした。

 何しろ整備するにも手順書が存在しないし、車両ごとに設置角度などもバラバラです。

 中にはハンドルの部品に干渉するバスもありました。部品精度、組付け精度が一定していないのは納車時期によって異なる部品が付けられているからだと聞きました」(事情に詳しい整備関係者)

改善箇所(出典:国土交通省)

 ところで、リコール届出書の「発見の動機」は「国土交通省による指摘」とありますが、これも大問題です。

 前述したとおり、ブレーキホースの不具合は2年以上前から報告があったもののその場しのぎの対応しか行わず、リコールはもちろんほかのバス事業者に対して注意喚起をすることも点検や交換を行うこともありませんでした。

 その結果は2025年9月の国交省による「総点検」指示で現れました。

 全国のバス事業者からたくさんの「ブレーキホースの不具合」が報告されたのです。

 国交省も見て見ぬふりもできず、EVモーターズ・ジャパンに指示をしてEVモーターズ・ジャパン経営陣がリコールを届け出る対応を決めたというわけです。

走行中にインバータから出火し消火したあと。ところどころ消火器の白い粉がのこっている。

※ ※ ※

 今回は小型だけですが、ゆくゆくは大型もブレーキホースに関するリコール対象となる可能性があります。

 対応策も、単に強化したブレーキホースに交換するのではなく設計から安全第一で全社をあげて見直すべきだと筆者は考えます。

 また、EVモーターズ・ジャパンが輸入販売してきたEVバスにはブレーキホース以外にも多数のリコール案件が存在しています。

 過去にはブレーキチャンバー自体が走行中に脱落(溶接不足?)したり、低速走行中に足回りの部品が破断したり、またインバータからの発火も2件発生。

 今のところこれらの不具合に関するリコール届出の動きは全くありません。

 これらの深刻な不具合が原因の事故が発生しないことを願うばかりです。