ダイハツ「“軽”SUV」がスゴい! 丸目「旧車顔」×無骨「カクカクデザイン」で「ちょうどイイサイズ」! 斬新“鉄板むき出し”内装も超カッコいい「ネイキッド」に注目

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当初市販予定はなかった「大人の遊び道具」

 自動車の歴史には、市場調査のデータよりも、作り手の純粋な情熱から生まれるクルマが存在します。

 1999年11月に発売されたダイハツ「ネイキッド」は、まさにそんな一台でした。

斬新“鉄板むき出し”内装が超カッコいい!

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 その物語は、1997年の東京モーターショーにまでさかのぼります。

 ダイハツが参考出品したコンセプトカー「NAKED X070」は、当初、市販の予定が全くないデザインスタディでした。

 しかし、この「売るつもりのないクルマ」は来場者から熱狂的な支持を集め、その反響の大きさが経営陣を動かし、異例の市販化が決定しました。

 そのコンセプトは「自由自在クリエイティブ・カー」。

 オーナーの創造性を刺激し、ライフスタイルを豊かにするための「素材」としてのクルマを目指したのです。その着想は、開発者が軍用車両のようなタフなクルマから得た「男の軽」というアイデアでした。

 ネイキッドのデザインは、「タフ&シンプル」という哲学を内外装の隅々にまで徹底して反映しています。

 エクステリアの最大の特徴は、バンパーやグリルを固定するボルトや、ドアのヒンジをあえて剥き出しにした点です。これは単なる装飾ではなく、オーナーがDIYで容易に交換・カスタマイズできることを意図した、機能美の表れでした。

 特にアウターヒンジの採用により、ドアは約85度というほぼ直角に近い角度まで開閉可能となり、乗降性や荷物の積載性を高めました。

 ボディパネルはプレスラインを極力排したフラットな鉄板のような質感とし、ホイールキャップを装着しないことを前提としたスチールホイールなど、細部まで「道具」としての思想が貫かれていました。

 その思想はインテリアにもおよび、ピラーやドアトリムの一部にはボディ色の鉄板が露出していました。

 これはオーナーがマグネット式のアクセサリーを自由に取り付けられるようにという、意図的なデザインでした。シートには撥水加工が施され、フロアには防水素材が採用されるなど、アウトドアでの使用も想定されていました。

 ネイキッドの真骨頂は、その比類なき多用途性にありました。

 5対5分割可倒式のリアシートは、工具なしで簡単に取り外すことができ、広大なフラットフロアを生み出せました。さらに天井やピラーにはM6サイズのナットが多数埋め込まれており、オーナーが自作の棚やフックなどを自由に取り付け、室内を自分だけの「基地」に仕立て上げることができたのです。

 パワートレインは、最高出力58PSを発揮する660ccの自然吸気エンジンと、64PSを発生するインタークーラー付きターボエンジンの2種類が用意されました。

 これらに5速MTまたは4速ATが組み合わされ、駆動方式もFFとフルタイム4WDから選択が可能でした。ターボモデルは全域で力強い加速性能が高く評価されました。

 快適装備も、エアコン、パワーステアリング、パワーウィンドウなどが多くのグレードで標準装備されており、「ネイキッド(裸)」という名前とは裏腹に、充実した内容を持っていました。1999年の発売当初の価格は、消費税を含まず91万9000円から133万7000円という設定でした。

 しかし、これほど革新的なコンセプトにもかかわらず、ネイキッドは一代限りで、約5年という短い期間で生産を終了しました。その最大の理由は、当時の市場環境とのミスマッチでした。

 当時、軽自動車市場はスズキ「ワゴンR」やダイハツの「ムーヴ」が牽引するハイトワゴンが全盛期を迎えていました。「室内の広さ」が最も重要な価値基準だったのです。

 ネイキッドの全高1550mmは、都市部の立体駐車場への入庫を考慮した実用的な設定でした。しかし、これが結果的に最大の足かせとなりました。

 全高が1600mmを超えるライバルたちとショールームで並べられた時、多くの消費者の目には、どうしても室内が狭く映ってしまったのです。

 また、「趣味の道具」というコンセプトも、時代を先取りしすぎていたのかもしれません。

 ネイキッドの生産終了から約10年後、スズキ「ハスラー」やダイハツ自身の「タフト」といったクロスオーバーSUVテイストの「遊べる軽」が市場を席巻したことからも、ネイキッドの登場がいかに早すぎたかがうかがえます。

 商業的には成功を収められなかったネイキッドですが、その物語は終わりませんでした。

 生産終了から20年近くが経過した現在、中古車市場でカルト的な人気を博し、その価値を再評価されています。DIYでのカスタムを前提とした設計思想が現代のユーザーの心に響き、リフトアップや全塗装など、思い思いのカスタマイズが施された車両が数多く存在します。

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 ネイキッドの存在は、商業的な成功だけがクルマの価値を測る指標ではないことを、静かに、しかし力強く物語っているのかもしれません。

 それはダイハツが放った、時代への早すぎる問いかけだったのでしょう。