犯罪被害に遭わないためには、どんなことに気をつければいいか。心理学者の内藤誼人さんは「ニュースで強盗事件が報じられた後は、強盗に巻き込まれないように気をつけたほうがいい。犯罪報道があると、類似した模倣事件が増えることは科学的に証明されている」という――。

※本稿は、内藤誼人『防犯心理学 心理学を使って最新犯罪を見極める!』(辰巳出版)の一部を再編集したものです。

写真=iStock.com/Jacob Wackerhausen
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Jacob Wackerhausen

■気温の高さと犯罪の発生率には関係がある

天気予報を見るときには、晴れや雨にだけ目を向けるのではなく、気温についても注意しましょう。なぜなら、気温の高さによって犯罪に遭いやすいかどうかも判断できるからです。

ごく単純に言うと、犯罪が起きやすい気温があるのです。

気温が高くなると、イライラする人が増え、いつもは十分に理性的な人でも、つい衝動的に行動しやすくなってしまうからかもしれません。

アメリカのミズーリ大学のクレイグ・アンダーソンは、約46年間のアメリカの50都市の年間平均気温と犯罪率を調べてみました。

その結果、平均気温が高く、暑苦しさを感じることの多い都市ほど、凶悪犯罪(強盗、殺人)もそれに比例して多くなる傾向がありました。ただし財産犯罪(窃盗や泥棒など)は、あまり気温と関係がなかったそうです。

■凶悪犯罪が起きる気温のピークは23度

同じ結果は、アメリカのフロリダ国際大学のエレン・コーンによっても確認されています。

コーンは、ミネアポリス警察の2年間の犯罪データ(銃やナイフを使った強盗や誘拐など)3万6617件に関して、その犯罪が起きた日の気温をお天気サービスで調べてみました。

すると気温が高くなると犯罪は増え、23度近くでピークを迎えることがわかったのです。ただし、それよりも気温が高くなってくると今度は逆に犯罪が減っていく、という面白い傾向も突き止めました。あまりに暑すぎると、今度は逆に、体を動かすのもおっくうになって犯罪を行うのも面倒くさくなってしまうのでしょうか。その辺はよくわかりません。

さらに個人の犯罪だけではなく、より規模の大きな戦争や紛争も、じつは気温と関連している可能性があります。

アメリカ、プリンストン大学のソロモン・ショーンは1万年以上もさかのぼって集めた世界全体の紛争データについて、気温が1標準偏差分高くなると、個人の暴力犯罪が4%増え、他の集団との紛争が14%増えることを突き止めています。ちなみに、気温の標準偏差とは平均気温からどれだけズレているのかをあらわす数値です。

■春から夏にかけてはフラフラ外出しないほうが安全

ショーンによると、2050年までには、標準偏差2つ分から4つ分高くなる気候変動が予想されているらしいので、今後はさらに戦争や紛争も起きやすくなると予想されます。最近の事例で言うと、ロシアのウクライナ侵攻や、イスラエルとパレスチナの紛争などは、ひょっとすると温暖化とも関連しているのかもしれません。

普段は、あまり気温に注意を払う人はそれほど多くはないと思うのですけれども、じつは気温は犯罪を予想する上で、ものすごく参考になる指標なのです。

春から夏にかけて、または秋は、どうしても犯罪が起こりやすい気温の日が増えますので、そういうときにはあまりフラフラと外出せず、できるだけ涼しい屋内で生活しているのが無難かもしれません。天気のいい日には、テラスやビヤガーデンで飲むお酒はたしかにおいしいのですが、客同士のケンカなども起きやすくなると思われますので、飲みに出歩く頻度は少し抑えたほうがよいでしょう。

■エルニーニョ現象が起きると政治的混乱が倍増する

太平洋赤道域の日付変更線付近から、南米沿岸にかけての海面水温が高くなり、その状態が1年つづくことを「エルニーニョ現象」と呼びます。逆に、同じ海域で海面水温が平年よりも低くなる状態を「ラニーニャ現象」と呼びます。

エルニーニョ現象にしろ、ラニーニャ現象にしろ、世界の異常気象を引き起こす原因とされていますが、引き起こすのは異常気象だけではありません。

先ほど紹介したソロモン・ショーンは、エルニーニョ現象が引き起こす異常気象は、戦争や内戦とも関連しているのではないか、と考えました。

そこでショーンは、約55年間の気象データを用い、エルニーニョ現象と、ラニーニャ現象の発生と、政治的な混乱(内戦・内乱)の関係を調べてみたのです。

すると驚くべきことに、政治的な混乱はエルニーニョ現象が発生している年には、ラニーニャ現象が起きた年に比べて2倍も起きることがわかったのです。

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■食料自給率の低い日本は無関係ではない

大雨やら干ばつなどの異常気象が起きれば、当然ながら、農作物も平年のようには収穫できません。世界中で食料不足が起きるのです。食料不足が起きれば、それが政治的な混乱や戦争の引き金になることは十分に考えられます。

食料がなくなると、どうせ飢え死にするくらいなら、いっそのこと「他の豊かな国に攻め込んで奪うしかない」と考えてしまうのも、むりのないことでしょう。「人のモノを奪うことなど、道徳的に許されることではない」などときれいごとを言っていたら、自分が死んでしまいますから。

先ほど、温暖化による気温の上昇が人を暴力的にさせるというお話をしましたが、エルニーニョ現象にも注意をしておかなければなりません。

エルニーニョ現象が起きると、日本では「冷夏・暖冬」になる傾向があるそうです。涼しい夏はありがたいことではないかと思われるかもしれませんが、それは日本だけの話で、日本以外の世界中のあちこちで深刻な食料不足が起きるので、その影響を日本も受けます。

農林水産省によると、日本の2023年のカロリーベースの食料自給率は38%。残りは海外の国に頼っている状況です。決して歓迎できる現象でもありません。

気象予報士が、「エルニーニョ現象が起きています」と報道しているときには、世界中で内戦やら政治的なクーデターが起きたり、戦争も起きやすくなったりするのではないかと警戒する必要があります。

■強盗犯罪の報道後には模倣犯罪が増える

ニュースを見ていて、強盗犯罪の報道がなされたら、しばらくは強盗犯罪に巻き込まれないように気をつけましょう。

なぜかというと、犯罪報道の後には、類似の模倣犯罪が増えるからです。テレビで報道されると、「強盗をすると、簡単に金品を得ることができる」ということを視聴者に教えてしまうことになります。そういう影響を受けた人は、「それじゃ、俺もやろう」という気持ちになり、模倣犯罪が増えるのです。

特に危険なのは、強盗がうまくいってしまったケース。

強盗犯が、まんまと金品を奪って逃走することに成功したケースが報道されると、「なんだ、簡単に成功するんじゃないか」と思い、模倣犯罪を増やしてしまうことが考えられます。

アメリカのインディアナ大学のロバート・ホルデンは、アメリカ国内のハイジャック事件について、成功した事件78件と、失敗した事件38件を分析してみました。

すると、ハイジャックが成功した場合には、テレビや新聞のニュースでも、まるで英雄のように扱われるので、その後の模倣犯罪が増えました。ハイジャックが失敗したという報道の後には、「やっぱり悪が栄えたためしはないんだよね」ということで、犯罪が減少することもわかりました。

私たちは、テレビや新聞、最近ですとSNSやYouTubeの動画の影響を受けます。

いつもは、ごく普通の生活を送っている人でも、犯罪事件のニュースを見た後には、「自分も同じことをしてみようか」と思う人も出てくるでしょう。ですので、犯罪事件のニュースの後には、なるべく外出を控えたほうがいいのです。

■有名人の自殺が後追いを引き起こしてしまう理由

犯罪とはちょっと違うかもしれませんが、有名人やタレントが自殺したというニュースが流れた後には、「私も自殺しよう」という気持ちになるかもしれませんので注意してください。

内藤誼人『防犯心理学 心理学を使って最新犯罪を見極める!』(辰巳出版)

この心理効果は、「ウェルテル効果」と呼ばれています。

ゲーテの小説、『若きウェルテルの悩み』が発表されると、その小説の影響を受けて自殺する人が続出してしまいました。

こうして有名人が自殺すると、後追い自殺をする人が増えてしまう現象を、ウェルテル効果と呼ぶようになったのです。

マスメディアの報道は、私たちにいろいろな形で影響を与えます。そういう心理を知っておくと、テロ事件の後にはテロが増えそうだなと予想できますし、タレントの自殺の報道の後には、自殺者が増えそうだなと予想できるわけです。

列車事故や飛行機事故も、普段はほとんど起きないのに、どこかでひとつ事故が起きると、しばらくは似たような事故が連続して起きてしまうことがあります。したがって、もし列車事故などがニュースで報道されたら、少しの間は旅行などに出かけないほうがよいということも言えるのです。

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内藤 誼人(ないとう・よしひと)
心理学者
慶應義塾大学社会学研究科博士課程修了。立正大学客員教授。有限会社アンギルド代表。社会心理学の知見をベースに、心理学の応用に力を注ぎ、ビジネスを中心とした実践的なアドバイスに定評がある。『心理学BEST100』(総合法令出版)、『人も自分も操れる!暗示大全』(すばる舎)、『気にしない習慣』(明日香出版社)、『人に好かれる最強の心理学』(青春出版社)など、著書多数。
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(心理学者 内藤 誼人)