産業別労働組合のUAゼンセンは12月、消費者による従業員への嫌がらせを指す「カスタマーハラスメント(カスハラ)」に関する調査結果を発表した。調査は7〜9月にアンケート形式で実施し、サービス業に従事している組合員2万6927人から回答を得た。

「新型コロナウイルスの影響による迷惑行為があった」(20.3%)と答えた人は5人に1人にのぼった。

「どうにかしてマスク買ってきて並べろよ」などの暴言


新型コロナウイルスの関連にかかわらず「直近2年以内で迷惑行為の被害にあったことがある」(56.7%)と答えた人は過半数。迷惑行為のうち、最多を占めるのは「暴言」(39.3%)で、次いで「同じ内容を繰り返すクレーム」(17.1%)、「威嚇・脅迫」(15.0%)、「権威的態度」(11.2%)、「長時間拘束」(7.8%)などと続いた。

実際に被害に遭った人からは「コロナの影響で入荷しない商品が欠品していることに対して、店内で怒鳴られた」といった体験談が多く集まったほか、

「コロナ禍の営業活動に対してお申し出を受けた。営業していることに対して感染拡大を助長しているという内容に加え、『菌がうつるから近寄るな!』と言われた」(総合スーパー)

「コロナ感染拡大している時期にマスクや消毒が無いときはお客様も困ってしまっているのは理解できるが『マスクが売れてるからっていい気になるな!』と言われた時は悔しく嫌な感情になった」(ドラッグストア)

「緊急事態宣言が出された後、マスクが無いことやトイレットペーパーの在庫切れ等に対しての暴言が多かった。いずれの大声で怒鳴るように『どうにかしてマスク買ってきて並べろよ』『デマに踊らされてるんじゃねーよ』といった、半分八つ当たりだった。目の前で大声で怒鳴られるので、すみません、すみません、と繰り返し謝ることしかできず、ただただ恐怖でした」(同)

などと具体的なエピソードも寄せられた。また、パチンコ店では「来店するも遊技はせずに、休業要請を強く言われた。店内に唾を吐いて帰るなどの嫌がらせも発生した」という事例もみられた。

加害者は50〜70代の中高年層がメイン

また、「直近2年以内で迷惑行為が増えていると感じる」(46.5%)と答えた人は約半数。業態別では「スーパーマーケット」(56.3%)、「総合スーパー(GMS)」(55.7%)などで多かった。

加害者の性別として多かったのは「男性」(74.8%)。推定年齢は「50代」(30.8%)が最多を占め、次いで「60代」(28.0%)、「40代」(18.9%)、「70代以上」(11.5%)などと続く。

被害時の対応では「謝りつづけた」(44.4%)が最も多く、次いで「上司に引き継いだ」(35.6%)、「複数人で対応した」(15.8%)などと続いた。他方、対応に要した時間を聞くと、6割強が「1時間以内」(61.6%)だったが、中には「7日〜1か月以内」(2.8%)、「1か月〜半年以内」(1.8%)、「半年以上」(1.3%)という人もおり、対応の難しさを感じさせられる。

「迷惑行為を受けた時に、心身の状態に変化があったか」という問いでは、半数が「嫌な思いや不快感が続いた」(49.9%)と回答。「寝不足が続いた」(1.5%)、「心療内科などに行った」(0.7%)という回答も一定数あり、健康面の被害を受けている人もいた。

一方、就業先で実施されている迷惑行為の対策について聞くと、最多は「特に対策はなされていない」(43.4%)という声だった。次いで「マニュアルの整備」(27.9%)、「専門部署の設置」(23.5%)と回答した人もいたが、全体の4分の1程度だった。

UAゼンセンは12月3日、都内でカスタマーハラスメント実態報告集会を開き、

「法律による防止、消費者への啓発活動については、まだまだ対策が不十分だと思いますので、法制化なら条例化なりを進めていく必要がある」

との見方を示した。