オールブラックスを経験した男 三菱重工相模原の26歳ヘモポが日本を選んだワケ
12年ぶりトップリーグ昇格の三菱重工相模原に新加入、期待の大型フォワード
日本ラグビーにおける最高峰リーグ、ジャパンラグビートップリーグが12日、2019-2020シーズンの開幕を迎える。昨年のワールドカップ(W杯)開催に伴い、1月12日から5月9日までの期間に全16チームが総当たり戦を行い、優勝を争う。今季はトップチャレンジリーグから2チームが昇格。その1つが2007-2008シーズン以来、12年ぶりのトップリーグ復帰を果たした三菱重工相模原ダイナボアーズだ。「THE ANSWER」では、今季チームの鍵を握る3選手をインタビュー。第2回は新加入のLO(ロック)ジャクソン・ヘモポだ。
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トップリーグへの定着を狙う三菱重工相模原は、PR(プロップ)川俣直樹、FL(フランカー)武者大輔、SO(スタンドオフ)竹田祐将らトップリーグ経験者が新戦力として加入。さらには、ニュージーランド(NZ)代表経験を持つ期待の26歳、ジャクソン・ヘモポの獲得にも成功した。マオリ族の血を引き、オールブラックスの誇りを持つ男は、なぜ日本でプレーすることを選んだのか。
身長195センチ、体重112キロ。ウェービーな長い黒髪にびっしりヒゲを貯えたワイルドな風貌。グラウンドでは圧倒的な存在感を光らせるが、グラウンドを離れれば腰が低く礼儀正しい26歳の青年だ。2018年に初めてオールブラックス入りを果たすと、同年11月3日の日本代表戦では先発出場。2019年のラグビーチャンピオンシップにもNZ代表メンバー39人の一人に選ばれるなど、最後までW杯登録メンバー(31人)入りを目指したが、惜しくも叶わなかった。
スーパーラグビーでは2015年からハイランダーズに所属。2018年には世界選抜(World XV)の一員として来日し、日本代表に勝利した経験も持つ。実績も十分あり、選手として全盛期にあるヘモポは、母国を離れて日本のトップリーグ、三菱重工相模原でプレーすることを選んだ。
「以前から頭の片隅には、いつか海外でプレーしてみたいという想いがあったんだ。W杯のメンバーを外れ、自分の中でいろいろな可能性を探ろうと考えていた時に、日本でプレーしてみないか、という話をもらって、心機一転、新たなチャレンジに取り組む決意をしたんだ」
オールブラックスは「選手としても人間としても成長させてくれる場所」
簡単な決断ではなかった。日本でプレーすることになれば、再びオールブラックス入りする可能性は減ってしまうかもしれない。ただ、レギュラーとしてプレーする時間が欲しかった。
「やっぱりラグビーが好きだし、ラグビー選手だからプレーする時間が欲しい。僕がオールブラックスに選ばれる時は怪我人の穴埋めが多くて、初めからメンバーに選ばれているわけではなく、ベンチを温めることが多かったんだ。NZでは26歳といっても決して若くはない。若くて素晴らしいタレントが次々と現れる中、僕は日本で新たなチャレンジに踏み出すことに決めたんだ」
もちろん、ラグビーを国技とするNZに生まれた男だ。たとえレギュラーに定着できなくても、オールブラックスに選ばれたことは極上の幸せ。NZが世界に誇るトップ選手とともに過ごした経験は、大きな誇りにもなっている。
「学校で将来の夢を書く時、NZではほとんどの子どもたちが『オールブラックスでプレーしたい』って書くんだ。僕もそう書いた一人。オールブラックスに選ばれたことは本当にアメージングな経験だった。周りにいる選手やスタッフは、みんなが一流。ラグビーの経験や知識が格段に増して、ラグビーというスポーツに対する理解も深まる。選手としても人間としても成長させてくれる場所なんだ」
漆黒のジャージーを身にまとい、キックオフの前には勇壮なハカを舞うオールブラックスには、伝統と実績に裏打ちされた品格が漂う。NZラグビー界を代表する選ばれし者、という自覚は、時として大きな緊張感にもなったようだ。
「オールブラックスの選手になると、周りから格別な尊敬を受ける。自分も誇らしい気持ちになるけれど、その名に恥じない振る舞いをしようと緊張しっぱなしで(笑)。練習、ミーティング、滞在ホテル……どこにいても気持ちが張り詰めたままで、家に帰った途端にホッとした気分になったことを覚えているよ」
ジャージーの色は変わっても変わらぬ「勝者のメンタリティー」
世界に名高い猛者集団の中で得た経験、そして勝者のメンタリティーを持って、日本で迎える今シーズン。12年ぶりにトップリーグに返り咲き、記念すべき1勝を目指す三菱重工相模原が今、まさに必要としている人材がヘモポなのかもしれない。
「12年ぶりのトップリーグということで、チームに高揚感が溢れているのを感じる。戦力も揃っているし、楽しみなチーム。僕はNZで過ごした25年間で学んだ、日々全力を尽くして準備を重ねる、という教えを実践していきたい。毎日後悔のないように全てを出し切ること。そこが原点。毎日の積み重ねで、誰にも負けない準備をしてきたという強い自信が生まれる。ラグビーは鍛え上げた大男が全力でぶつかり合うスポーツだから、最後はどちらがより強い気持ちを持てたか、そこに尽きると思う」
ジャージーの色が漆黒から緑に変わっても、その体に染み込んだ勝者のメンタリティーは変わらない。三菱重工相模原がトップリーグで勝利を重ね、常連となるために、全力を尽くす。
◆ジャクソン・ヘモポ(Jackson Hemopo)
1993年11月14日、ニュージーランド生まれ。195センチ、112キロ。ポジションはLO、FL。子どもの頃からラグビー選手として頭角を現し、アンダー世代でNZ代表として活躍。オタゴ代表を経て2015年からスーパーラグビーに参加するハイランダーズでプレーし、2017年にはマオリ・オールブラックスに選ばれた。2018年にオールブラックスに初選出され、3キャップを記録。今季から三菱重工相模原でプレーする。ラグビー好きの両親はシーズン中に来日予定。NZに残してきた愛犬と恋人に会えないのが寂しいが、会った時に驚かせたいと目下、日本語を勉強中だという。趣味はサーフィンとラグビー。(THE ANSWER編集部・佐藤 直子 / Naoko Sato)
