《“品位を下げるドレス”を警戒…》カンヌ映画祭が 「レッドカーペット」で過熱するネイキッドドレス着用にまた規制…「品位」か「表現の自由」か
5月23日まで開催される第79回カンヌ国際映画祭。日本からはコンペティション部門に『箱の中の羊』をはじめ、『急に具合が悪くなる』『ナギダイアリー』が出品され、綾瀬はるか(41)や松たか子(48)がレッドカーペットを歩き、国内でも注目されている。
そんなカンヌでは、昨年に続いてドレスコードに「ヌード(裸)禁止」が掲げられ、シースルー素材を使った"ほぼ裸"に見えるドレスは「映画祭の品位を保つため」着用を認めないとした。セレブたちが競うように露出度を上げていた「ネイキッドドレス」ブームに、映画祭側が「ここから先は認めない」と線を引いた形だ。
【全身を見る】カンヌでの松たか子の立ち姿ほか、物議を醸したフローレンス・ピューの露出が多いドレス、強調したバストトップがおそろいのカーダシアン家の衣装など
昨年のカンヌ映画祭開幕直前、オフィシャルサイトに追記された一文は、スタイリスト業界に衝撃を与えた。
「品位上の理由から、ヌードはレッドカーペット及びフェスティバル会場全域において禁止とする」
スタッフには違反者の入場拒否権限も与えられた。突然の新ルールは昨年、混乱を招いたが、今年はとりわけ「過度な透け感」が警戒されている。
海外ジャーナリストが続ける。
「2010年代半ば以降からレッドカーペットでは"ブーム"が加速。火付け役のひとりとされるのが、現在38歳のリアーナが2014年に、アメリカ・ファッション・デザイナー協議会(CFDA)主催の授賞式「CFDA ファッション アワード」で披露したドレスです。
全身にクリスタルを散りばめたようなシースルーのドレスで、胸元を大胆に見せたその装いは大きな話題となり、ブームを象徴する一着となりました。これをきっかけに、ブームは過熱。2018年、カンヌに登場したアメリカの女優、ケンダル・ジェンナー(30)は、スキャパレッリのシースルー素材を使ったドレスを着用し、 "ネイキッドドレス時代"を代表する存在となりました」
当初は「エレガントな肌見せ」として受け入れられていたネイキッドドレスだが、2022年、ローマで開かれたヴァレンティノ・オートクチュールショーで、イギリスの女優、フローレンス・ピュー(30)は、胸元が完全に透けたフクシアピンクのチュールドレス姿を披露したのを境に、「生々しい」「品がない」といった批判がSNS上で噴出するようになった。
フローレンスはInstagramで、「布越しに私の乳首が見えただけで、なぜそれほど取り乱すのか。男性が女性の体を公然と貶めることが、いかに簡単に行われるのかを目の当たりにした」と怒りをあらわに。この発言は「ボディポジティブの宣言」として拡散され、"女性の体を誰が評価するのか"という議論にまで発展した。
ネイキッドドレス、過熱する背景
「こうしたドレスは、単純に露出を競う"セクシー衣装"ではありません。体型や年齢を隠さないボディポジティブ、SNSで一瞬にして拡散される話題性、そして1990年代リバイバルの中で再評価されるスリップドレスやランジェリー風ファッション。そのすべてが、透けるドレス、肌を見せるドレスへと流れ込んでいます。
その根底には、かつて"セックスシンボル"の名のもと、男性によって性的対象として扱われてきた女性の体を、女性自身が"取り戻す"という意識もある。自分の体をどう見せるかを自分で決める、"主導権の表明"としても機能しています」(同前)
もっとも、露出表現は次第に過熱している。2026年のグラミー賞ではチャペル・ローンが乳首ピアス風リングをあしらったネイキッドドレスで登場し、ドイツ出身のスーパーモデルであるハイディ・クルム(52)は自身の体を石膏型取りした"究極のヌードレザードレス"を披露した。
メットガラでも、ケンダルとその妹であるカイリー・ジェンナー(28)、キム・カーダシアン(45)が胸元の"見せ方"で話題を集めたが、米ファッション業界紙「WWD」は、ジェンナー家/カーダシアンの衣装に共通する要素を「nipple」だと皮肉まじりに指摘している。
こうした流れに、カンヌが"待った"をかけた。しかし、ファッション界の反応は複雑だ。「マリ・クレール」やCNNは「"ヌード(裸)"の定義が曖昧なままだ」と指摘している。
「誰が」「どこまで」見せてよいと判断するのか
ドレスコードをめぐる緊張はカンヌに限らないが、世界最高峰の映画祭が「ヌード禁止」を明文化した意味は大きい。レッドカーペットでは昔から、「格式」と「自己表現」のせめぎ合いが繰り返されている。
女性の体を「誰が」「どこまで」見せてよいと判断するのか。「品位」を守るためのルールか、「表現の自由」への介入か。華やかなレッドカーペットの足元で、その境界線はいま揺れている。
