キャンプや旅行を女性ひとりで楽しむ姿が人気のYouTuber・miiさん。「個室居酒屋で自己啓発本を読みながら泣いていた」会社員が、ソロキャンプと出会い、累計登録者数77万人超のインフルエンサーになるまでの経緯を聞いた。

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miiさん ©石川啓次/文藝春秋

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きっかけはコロナ禍で誘われたキャンプ

――miiさんは、幼い頃からキャンプに親しんでいたのですか。

miiさん(以下、mii) 実は、すごく小さい頃に何回かしたことがあるくらいでした。どちらかというと、虫は苦手だし、日焼けしたくないし、冷暖房がないところで寝泊まりするなんて私にはハードルが高いな、なんて思っていました。

――では、ハマったきっかけは何だったのでしょうか?

mii 6年ほど前、知り合いの集まりで「一緒にキャンプに行こう」と声をかけてもらったんです。普段なら「虫も日焼けも嫌だなぁ」と思って断っていたかもしれません。

 でも、その頃はちょうどコロナ禍真っ只中でした。仕事も完全リモートワークになって、家にこもって鬱々とした日々を送っていたから、「行ってみようかな」と。暑いし、虫はいるしで大変でした。でも、いろいろ準備が終わって、静かに揺れる焚き火を眺めていたら、久しぶりに穏やかな気持ちになれて。

 またこの気持ちを味わいたいと思って、ゼロから道具を揃えて2カ月後にはソロキャンプを始めました。今では、会社が休みの日にはソロキャンプに行くか、一人旅に行くかどっちかで充実しています(笑)。

上司との関係に悩み、お酒を飲んでは泣いていた

――では、キャンプを始める前まで、休日はどのように過ごしていたのでしょうか?

mii 飲み歩いていることが多かったです。社会人になったばかりの頃は、会社の人とよく飲みにいっていました。でも、私は相手が誰でも、長時間一緒にいると疲れてしまうタイプで……。

 だから、途中からは個室のある居酒屋で、一人で飲んでいました。ただ、それも楽しいかと言われたらちょっと違うというか。当時は人間関係に悩んでいて、飲みながらよく自己啓発本を読んでいたんです。でも、自分のダメな現状がより浮き彫りになるような気がして、一人でお酒を飲みながらシクシク泣いていました。

――そこまで追い詰められていた原因は。

mii どうしても合わない上司がいて、休みの日も頭の中はその人のことでいっぱいで。一人でいるほうが気楽だけど、家で一人っきりだと上司のことばかり思い出してしまう。少しでも気を紛らわしたくて、居酒屋に足を運んで飲みに行っていたんです。

 でも、コロナ禍で外食が難しくなってからは、その生活ができなくなってしまって。どうしても耐えられなくて、お酒を抱えて人気のない夜の公園に行ったこともありました。

「泣きながら後悔した」初めてのソロキャンプ

――そんなときに、キャンプに誘われたのですね。

mii キャンプをしている間は、上司の顔を忘れられたんです。根本の問題が解決したわけじゃないけど、当時の私にはそれがすごく嬉しかった。

 それに、キャンプならコロナ禍でも関係なくできるなって。もともと一人で行動するのが好きなのもあって、ソロキャンプを始めようと思ったんです。

――ソロキャンプを始めるのとほぼ同時に、YouTubeも始めたそうですね。

mii はい。YouTubeは前から興味がありました。その当時、ソロキャンプ女子がすごく増えていたのもあって、これでいこうと思ったんです。

 あと、キャンプ初心者だから初期費用が結構かかったんですよ。だから、YouTubeで少しでも収益化できれば、道具代にまわせるなと。会社員の給料だけで急な出費はなかなか厳しかったので。

――一体いくらかかったのでしょうか。

mii 30万円はかかったと思います。キャンプブームの真っ只中で、テントが品薄で高騰していたのも痛手でしたね。それに加えて、私はペーパードライバーだったから、電車とバスと歩きだけで行く「徒歩キャンプ」スタイルを選んだんです。だから、通常よりも費用がかかっているかもしれません。徒歩で運ぶには、コンパクトで軽い道具が必要になるのですが、軽量のものほど値段が高いんですよ。

――初めてのソロキャンプはどうでしたか。

mii とにかく疲れました。まず、荷物を全部背負って行ったんですよ。キャンプ道具だけじゃなく、撮影のためにカメラやバッテリーも詰め込んだから、30kg近くあったと思います。

 その状態で、傾斜のきつい坂道を歩かなきゃいけなくて……。キャンプ場に到着してからも、当たり前ですけど一人だから、どんなにヘトヘトでも全部自分で準備しなきゃいけない。なのに、雨風や虫が追い打ちをかけてきて。「私、なんでこんな辛いことしてるんだろう」って泣きながら後悔しました(笑)。

 ゴールドジムに通って鍛えていたから、体力には自信があったんです。それでも想像以上にしんどかったですね。

ソロキャンプもYouTubeも会社員も続けていきたい

――でも、そこから約6年キャンプを続けていますよね。そんなにしんどかったのに、どうしてでしょう?

mii 個室居酒屋で何時間本を読んでも消えなかった上司の存在が、キャンプをしている間は、一度も現れなかったんです。目の前のことに必死すぎて、日常の嫌なことが“上書き”されていったんだと思います。フィジカルのしんどさが、メンタルのしんどさを塗り替えてくれる感覚というか。それで「よし、続けよう」って思えました。

――その上司とは、その後どうなったのでしょうか。

mii 異動で離れることになったので、結果的にですが悩みは解決しました。

――でも、悩みがなくなったあとも、ソロキャンプもYouTubeも続けた。

mii はい。やっているうちに、自分が楽しいのはもちろん「視聴者さんが楽しんでくれること」が新しいモチベーションになっていたんです。例えば、ソロキャンプでは予期せぬトラブルが起こることも多いのですが、あえてそのままアップしたりして。

――これまで、どんなトラブルがあったのでしょうか。

mii ハンモックでキャンプを楽しむ動画を撮影する予定だったのに、ハンモック自体を忘れてしまったり。小型ストーブが椅子に燃え移って火傷をしてしまったり、ゲリラ豪雨でテントが浸水する中キャンプを続行したりしたこともあります。

 その時は必死だから、見られるのはちょっと恥ずかしいんですけど(笑)。でも、楽しいだけじゃないリアルな姿も見せることで、視聴者さんが関心を持ってくれたらいいなと思っています。

――miiさんの動画には、現在の上司も出演されていますよね。

mii はい。上司とキャンプって、意外性があって面白いんじゃないかなと思って。思い切って誘ってみたら、「暇だからいいよ」って快く引き受けてくれました。

 私の会社はリモートワークかつシフト制なので、普段会社の人たちと顔を合わせる機会はあまりないんですよ。だから、YouTubeが良いコミュニケーションにもなっています。

――今も会社員を続けながらYouTubeをしているのですね。

mii 会社には、YouTubeの活動を伝えています。すごく理解してくれているので、両立できているんです。

――とはいえ、会社員とYouTuberを両立するのは大変ではないですか。

mii 平日は仕事、休みの日はソロキャンプか一人旅か、動画の編集作業。何もしない時間は、たしかにほとんどないかもしれません。

 でも、もともと一人で過ごす方が好きでしたし、会社員とYouTubeでは違うやりがいがあるので、今のところどちらも辞めるつもりはありません。

YouTubeを続けてきて印象的だったコメント

――miiさんの視聴者さんは、どんな方が多いのでしょうか?

mii キャンプ好きの方やこれからキャンプを始めたい方、あとは「miiさんが寒さに震えている動画を、暖房のきいた部屋で見るのが爽快」という声も聞いたことがあります(笑)。

――キャンプ場で声をかけられることもありますか?

mii あります。「応援しています」ってお菓子やお酒をプレゼントしていただくこともあって、嬉しいですね。少し変わったものだと、近くのテントで宿泊していたご夫婦から、海外の珍しいお酒をお裾分けいただいたこともありました。真っ白くて、すごく強かった……!

――YouTubeを続けてきて、嬉しかったコメントはありますか?

mii たくさんあります。時々「miiさんのYouTubeを見て、私もソロキャンプ始めました」とコメントをいただくのですが、素直に嬉しいですね。

 他にも、私の動画を見てアドバイスをくださる方も多くて、とても参考にしています。例えば、私が食材を切るのに苦戦している様子を見て、キッチンバサミを勧めてくれた方がいたんです。使ってみたら、とっても切りやすくて! 包丁やまな板もいらないから、荷物も少なくてすむし、良いことだらけ。視聴者のみなさんからのアドバイス、いつも感謝しています。

新しい経験が嫌なことを上書きしていく

――一方で、批判的なコメントが届くこともあるのではないですか。

mii そうですね。大勢が見ている場所で批判されたことなんて、それまでの人生で一度もなかったから、最初は落ち込みました。でも、今は何も思わなくなってきました。

――それはどうして?

mii そもそも、顔も名前も知らない人に言われてもなぁって。そう思えるようになったのは、キャンプの力が大きいかもしれません。特にソロキャンプだと、テントを設営するのも、ご飯を準備するのも、片付けをするのも、全部自分でやらなきゃいけないから、結構忙しいんですよ。それに加えて、電波が弱いキャンプ場も少なくないから、自然とデジタルデトックスになるんです。定期的にその時間を取ることで、メンタルが安定するような気がしています。

――まさに、目の前のことに集中することで日常の嫌なことが上書きされるのですね。

mii そうなんです。苦手な上司も、誹謗中傷もそう。新しい経験をどんどんして、嫌なことをどんどん上書きしていくんです。それでもモヤッとしたときは「私は1週間後、同じことで悩んでいるかな?」と自問自答するようにしています。

「どこに泊まってるの?」旅先でしつこくつきまとう男も…女性キャンプYouTuberが語る一人旅の危険と「それでも一人で行く理由」〉へ続く

(仲 奈々)