「その土地って、あんたが作ったものなのか?」「土地なんて国からのリース品」…古舘伊知郎が“マイホーム信仰”を一刀両断する深い理由〉から続く

「喋りの仕事は体力勝負」と語り、71歳になった今も圧倒的なエネルギーで第一線を走り続けるフリーアナウンサーの古舘伊知郎氏。その若さとモチベーションの源泉は、実は「モテたい」「見られたい」というあられもない煩悩にあった。

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 ここでは同氏の著書『寝ても覚めても煩悩』(小学館集英社プロダクション)の一部を抜粋し、自らを「欲まみれのスケベ野郎」と称する氏の、ユーモアと狂気にあふれる“若さの秘訣”を紹介する。


古舘伊知郎氏 ©文藝春秋

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 古舘さんは71歳とは思えないほどに元気そうですが、若さを保つために気をつけていることはありますか?
 また、どのようにして健康へのモチベーションを維持していますか?
 参考にさせてもらいます。(PN.とらお/60代男性)

【古舘】
 ずばり、「古舘伊知郎」という人間をメディアにさらし続けること!
 とにかく見られたい。
 モテたい。
 根っからの露出狂なのです。

齢71にして煩悩まみれ

 職業柄もありまして、見た目には気を配っています。

 だらしなく太ってはいけないと戒め、最低限の筋トレを心がけております。(毎日ではないですが)

 喋りの仕事は、とにかく体力勝負です。喉も筋肉で出来ています。

 テレビ番組の収録では、立ちっぱなし、喋りっぱなしで何時間も働きます。

 話すというのは、全身を使った筋肉労働です。

 現場に行けば「年だから」という言い訳は、一切通用しません。

 僕がライフワークにしている一人喋りの舞台『トーキングブルース』では、マイク1本で2時間以上喋り続けるので、自分で言うのも変ですが、アスリート級のエネルギーと体力が必要となります。

 日々いただける、ありがたい仕事のオファーに応え、クオリティを維持するためにも筋肉の維持には、少しは努めています。

 と、ここまで「喋りの仕事のため」とカッコいいことを申しましたが、本音は違います。

 いつまでもモテたいからです!

 仏教に深く傾倒しておりますけれど、齢71 にしてなお、反仏教的な煩悩にまみれております。

 私など、欲まみれのスケベ野郎であります!

 そのことをしっかり自覚しているがゆえ、欲を軽減するお作法として、仏教に強い憧れを抱いているのです。

 いつまでもフルパワーで働き、なんなら若く見られたい!

 そしてモテたい!

 あられもない欲望をさらけ出し、皆さまのお悩み相談を、受けさせていただいています。

 それも私なりの、誠実な姿勢であります。

 スケベ野郎だとご了解のうえ、引き続きお付き合いください。

 トレーニングジムには通っていません。

 過去には近場のジムに通っていましたが、性分的に何だか合わず、入会・脱会を繰り返し、いまは亜流・自己流のトレーニングを続けています。

 ジム通いしてる大人を、否定はしません。

 チョコザップなんかは、忙しいビジネスパーソンには、いいスタイルですね。

 早朝や仕事終わりに毎日走ったり、ハードなマシントレーニングをしている人は大勢いるでしょう。

 ジム中毒、全然いいと思います。

 単純に私には、ジムが合わないというだけです。

 通うのではなく、入会したことで満足して結局「行かない」という、無意味な場所になってしまいます。いつでも行けると思って「明日行けばいい」と毎日思っちゃう。

 通わないのにお金を払っているのは、もったいないです。

 意欲があれば、筋トレは独学でも充分、継続できます。

 いつでもどこでも好きな運動、向いているトレーニングをやれるのが、独学のいいところです。

トレーニング中毒になるように、脳を仕向ける

 お腹のぜい肉を取るには有酸素運動、ウォーキングがベストだと言われますが、私は歩くのがあまり面白くないので、やっていません。

 腕立て、腹筋、スクワット。この3つを中心に、仕事の合間や空いている時間、こまめにトレーニングしています。

 1日やったら1日休む。

 70歳を越えてから、私はこのペース配分です。マッチョを目指すわけではなく、年齢からくる筋力の衰えに緩やかなブレーキを踏むだけですから。これだけは鉄則です。

 筋肉疲労の蓄積を避けるため、週に3日は休息日を入れます。

 続けるのに必要なのは根性ではありません。

 脳に持続性バイアスを持たせること。簡単に言うと「筋トレを休みつづけると気持ち悪い」状態にします。

 筋肉に負荷をかけて、身体をいじめ続けるのは言うまでもなく大変です。

 ほとんどの人は仕事も忙しいですし、途中でやめてしまいます。

 モチベーションを保つのが、面倒くさくなってるんですね。その面倒くささとは何か?

 筋トレをやめ続けるというほうを選んだ持続性バイアスでしょう。

 そうならないよう脳を、ジム中毒に近いモードへ変えます。

 ジム中毒の人は、「トレーニングしないと収まらない!」「せっかくつけた筋肉が落ちる!」という不安で、通い続けるわけですよね。

 その中毒症状だって、ジムに行かなきゃ気がすまない脳の持続性バイアスです。

 具体的には「休んじゃうと、気持ち悪いぞ!」「身体も重くなるし、怠けたぶん負い目が出るぞ!」「再開しづらくなるから、やめるな!」と、己を励まし続けます。すると持続性バイアスが動き出します。

 やらずにはいられない! という状態は、誰にでもありますよね。

 ゲームでもマンガを読むのでも、スマホチェックでも構いません。

 そのときの脳のモードを、筋トレに立ち上げる意識です。

 根気強くモードチェンジを施していれば、ちゃんと「クセ」になります。そして71歳になり、トレーニングをやる日のために、積極的に週3日は休日とするのです。

 ただし、努力しなきゃ! という気持ちはダメです。

 脳は、努力を嫌います。

 多少なりとも心身に無理をかける苦役の方には、働きづらい性質があるのです。

 努力は続かない……というのは、この辺りの脳の特徴に関係しています。

「それをしないと気持ち悪い」方に脳のモードを持っていくと、身体はスムーズに動きます。

 いい意味で脳を騙し、持続性バイアスを利用してください。

スケベ根性は生命力の根幹

 私は顔の皺も、気にしています。

 年を取ると、口角が下がり、口の周りに皺が増えてきました。

 喋りの仕事で人前に出る以上、やはり口周りの変化には敏感になります。老化による皺の増加は、どうしたって抗えません。

 皺のない20代のツルツルの肌のままでいたいのは、やまやまですが、ここで「分を知れ」という仏教です。過ぎたるは及ばざるよりもなお悪し状態です。

 私が10代の頃、親父が「顔が垂れてくるんだよ」と、ぶつぶつ言っていました。

 あるとき洗面所で「こうやって上がってほしいんだ!」と言いながら、木製の洗濯ばさみで目尻を引き上げた状態でクリップし、我々家族の前に現れました。

 八つ墓村の殺人鬼みたいな顔でした。

 相当痛いはずなのに、何やってんだ親父? と呆れました。

 だいぶ経ってからその時のことを思い出し、ふざけて「オヤジ、整形してたるみ取ったら?」と吹っ掛けると、別人のように「ふざけたこと言うなよ」とかわされました。

「じゃなんで八つ墓村をやったんだよ」とむきになると「あーやって不自然なことをやるとしっぺ返しがくるんだと、自分に言い聞かせたに決まってるじゃないか。何言ってんだ」

 と返されました。これも脳を騙しています。

「いい大人が、馬鹿か?」とか、「ムダな抵抗しているね」と、呆れられるかもしれません

 私は少し前に、美顔器を買いました。

 ヤーマンというメーカーの人気機種でした。

 2日に1回、寝る前に顔に当て、電流を流します。

 その美顔器を使うと、腹筋マシーンのように、ピクピクと顔の筋肉が細かく動き、刺激されます。

 施術の後はお肌がぷるぷるになって、若返った気がします。

 あくまで、気がするのです。私の場合。

 皺が消えた! 若返った! という自己暗示が、私にとって一番の効用です。

 美容に興味ない人からすれば、「いい大人が、馬鹿か?」とか、「ムダな抵抗しているね」と、呆れられるかもしれません。

 はい、馬鹿です!

 いつまでもモテたいのだから、無駄であろうと必死に抵抗します。

 好きにさせてください! と、堂々と反論いたします。

 スケベ根性は、ほどほどの場合、生命力の根幹です。

 この欲望に寄り添うことも、また諸行無常の世を生きぬく、有効な術であろうと都合よく考えています。

健康のためなら死ねる!

 サプリメントもたくさん飲んでいます。

 10年ぐらい前は48種類ほど、同時に飲んでいました。

 若くありたい、仕事をいつまでも続けたい、病気になりたくない……歳を取っていく恐怖と不安を打ち消すように、飲む種類が増えてしまったのです。

 小心者で、死に近づいていくことに、ずっと怯えていた。本当に、怖がりなんです。

 喋れなくなり、寿命が尽きるのが、ものすごく怖い。

 だから仏教に、強く魅せられたのだと思います。

 仏教を学ぶようになってからはサプリメントの数は、ぐっと減りました。

 最も大量に飲んでいた頃は、悪い意味での加点主義で、飲めば飲むほど健康になれると信じきっていました。

 「健康になるには、体調不良もやむなし!」「健康のためなら死ねる!」という、大いなる矛盾を生きていました。

 昔、よく知っているお医者さんに会ったとき「古舘さん、何だか顔色が悪いですね。いま飲んでいるお薬を、全部持ってきてください」と言われました。

 私は友人の医者の目の前に、飲んでいた48種類のサプリメントの錠剤・粉薬を、ドサッと置きました。

 医者は怖い声で「気でも触れたの?」と、言いました。

 本当に、どうかしていたと思います。

 医者にも言われました。

 ひとつひとつのサプリメントは身体にいいけれど、たくさん合わせて飲むことで、いろんな副作用が生じる可能性は拭えない。

 有効成分が体内でバッティングして、深刻な健康被害を引き起こすこともあります。

 サプリメントをいっぱい飲むのは、身体にとっては病気を招くリスク行為にもなるんですよ。

「いい意味で中途半端」を心がける

 現在の私は仏教の勉強とお医者さんによって、心持ちが養われました。

 薬の量は、大幅に減りました。

 でも、まったく飲まないわけではありません。

 仏教を頼りにしようと、老化を疎ましく思う気持ちは、ゼロにはならないのです!

 それが悟れない人間というものの実相でもあります。

 いい意味で中途半端、セコい自分を心がけています。

 セコく筋トレして、セコく薬を飲んで、セコく老化に抵抗しています。

 そういった小出しの欲望のお陰で、私は未熟のままでいるのです。オオサンショウウオという大人になりきれないまま、遺伝子の変異で子どもっぽいままで大人になった、ウーパールーパーです。私は口角が下がったウーパールーパーです。気持ち悪い!

 私の若さは、挽き割り納豆の粘つく糸のような、細かく途切れないセコさで、保たれていると言えます。

(古舘 伊知郎/Webオリジナル(外部転載))