フィリピン、南シナ海の「行動規範」に意欲 ASEAN議長国、対中国で法的拘束力を

2026年の東南アジア諸国連合(ASEAN)議長国フィリピンが、中国と南シナ海で紛争を回避する「行動規範」の策定を目指すと表明した。長く停滞してきた策定交渉を軌道に乗せ、威圧的な海洋進出に歯止めをかけたい考えだ。だが領有権問題を抱えるASEAN加盟国と中国の間では見解の隔たりが大きく、専門家は年内の期限について悲観的だ。(共同通信マニラ支局=菊池太典)
「取りまとめの時が来た」。フィリピンのラザロ外相は2026年2月、シンガポールのシンクタンク主催の会合で強い意欲を示した。2026年のASEANのロゴには船をあしらったデザインを採用。実務者協議の頻度を増やす考えも明らかにし、議長国として最難関テーマに正面から取り組む姿勢をアピールした。
フィリピンが必死になるのは中国の実効支配の拡大を止められないためだ。中国とASEANは2002年、行動を自制する「行動宣言」に署名。しかしその後もフィリピンの排他的経済水域(EEZ)内では人工島の建設が進み、“紳士協定”では抑止できない現実が浮き彫りになった。
宣言を法的拘束力のある行動規範に格上げする話し合いが続けられ、2018年には各国の意見を集約したたたき台をまとめたが、交渉は遅々として進んでいない。
中国は、国連海洋法条約に基づく仲裁裁判所が2016年に南シナ海での主権主張を否定した判断を受け入れていない。行動規範を巡っても法的拘束力を持たせることを警戒しており、領有権を争うASEAN加盟国とは立場に「根本的な隔たり」(専門家)がある。
中国は一方で、行動規範に署名しない国とは軍事演習できないようにする措置を求め、けん制する。フィリピンがマルコス政権下で自衛隊や米軍と海洋演習を繰り返していることが念頭にある。
フィリピン国内で対中国感情は悪化している。近年、中国船から放水攻撃される事案がたびたび発生し、世論調査では79%が「最大の脅威国」は中国と答えた。シンクタンク「ファクツ・アジア」の安全保障問題担当アナリスト、ジャスティン・バキサル氏は、フィリピン政府は「(国内世論に配慮すれば領有権問題で)妥協できる余地はほとんどない」と語る。
しかし中国がASEANで最も対立しているフィリピンに対して「外交成果をプレゼントするとも思えない」と指摘、早期の行動規範策定には悲観的だ。





