商談の上手い人は何をどう伝えているか。営業コンサルタントの菊原智明さんは「稼げる営業は、例えば業務提携の商談だとしたら「他にもお考えですか?」とは聞かずに、『どうして当社と業務提携をしようと考えたのでしょうか?』と質問する。こう聞かれれば、自然にその会社のいいところを探すから、商談をまとめられる」という――。

※本稿は、菊原智明『決定版 「稼げる営業」と「ダメ営業」の習慣』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。

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※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

駐車場の有効活用を提案しても、あっさり拒否される

稼げる営業はお客様に解決させ、
ダメ営業は自ら解決する。

あるお客様と家の建て替えの商談をしていた時のことです。

そのお客様の敷地は台形で、建物が収まりにくく間取り作りは難航します。

設計スタッフと考えたあげく、駐車場の位置を今までとは反対にすることで、何とか収めることができました。

私「設計とじっくり相談しまして、駐車場を反対側へ持っていく案を考えました。こちらですと、清水さんのご要望通りの間取りが可能になります」

お客様「そうですか」

私「西から東に駐車場を持っていくことで、デッドスペースは格段に少なくなり土地を有効利用できます。また空いた部分に物置や自転車置き場も作れます」

このように、私は自信満々で説明を続けたのですが、お客様は何やら気乗りしない感じです。提案書を最後まで見る前に「駐車場は今のままでないと……」と言いだしたのです。

確かに長年慣れている場所が変わると抵抗感を持つ人もいます。また駐車場が変わると車がとめにくくなる場合もあります。しかし、そのお客様の場合、デメリットはほとんどなくメリットばかりです。

にもかかわらず、あっさり拒否されたのです。その後も必死に説得を続けましたがうまくいかず、この商談は破談になりました。

■解決に必要だったのは、お客様自身の「気づき」

その後のことです。別件ですが、やはり土地の形が変わっているお客様と商談しました。今度は南から北への駐車場の変更です。「普通に説明したら間違いなく拒否されるだろうな」と思いながら商談をスタートしました。

私「今まで通り南側に駐車場をとりますと、敷地が有効に使いにくくなります」

お客様「はい」

私「お客様の要望の間取りにしますと、無駄なスペースができてしまいます」

お客様「これじゃ、建て替えた方が住みにくくなりそうですね」

私「以前、駐車スペースを変更してうまくいったケースもあるのですが……」

このような話をしていると、お客様は、ひらめいた!、と言わんばかりの顔で、「でしたら北にすればいいのではないですか?」と言いだしたのです。お客様自身が気づいたことは説得する必要がありません。問題は解決され、話が一気に進みました。

この違いは何でしょうか?

前者のお客様にはこちらから問題解決しようとして、駐車場位置の変更を必死に説得しようとしていました。人は営業から「絶対にこちらの方がいいですから!」と説得されることを嫌います。それに対して後者はお客様自身に気づいてもらうように進めました。

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■カウンセラーと同じでトップ営業も回答を導く

自分自身で気づいたことは、お客様自身が自己説得をします。

説得など全く必要なくスムーズに話が進むのです。

知人の心理カウンセラーとお会いした時のことです。

ポイントでいくつか質問するだけで、ほとんど私が話をしています。

しばらくして、話をしながら頭の中が整理されていくのを感じます。

そのうちに「解決策が見つかりました」と言っている自分に気がつきました。

何もアドバイスを頂いていないのに、私が抱えている問題は解決したのです。一流のカウンセラーはクライアントに話をさせその人自身が気づくように導いてくれます。これはトップ営業も同じです。

お客様に上手に話をさせ、お客様自身に何かを気づかせ「私にはこっちの方が使いやすそうなので、これをお願いします」と言わせているのです。

お客様自身が回答を出すように導く!

■商談の行方を大きく左右する余計な一言

稼げる営業は「どうして当社に」と聞き、
ダメ営業は「他にもお考えですか」と聞く。

以前、業務提携のお話をさせて頂いた時のことです。

商談中に担当者の人が突然こんな質問をしてきました。

担当者「他にも提携をお考えなのでしょうか?」

その質問にどういう意図があったかは分かりませんが、その時に私は、「そうか、他の会社との提携も考えてもいいのか」と頭をよぎりました。その質問をされるまでは、他の会社のことは全く考えていませんでした。それからしばらくして、本当に他の会社も検討するようになったのです。

余計な一言が商談の行方を大きく左右するものです。担当者は何気なく聞いたのかもしれません。しかし、それがきっかけで他の会社とも話をするようになったことは事実なのです。

という私もお客様に対して墓穴を掘るような質問をしていました。あるお客様と商談していた時のことです。このお客様は他社の影はなく私とだけ商談をしていたようですが、思わずお客様にこう聞きました。

私「他にも検討されている会社はありますか?」

お客様「そうですねぇ。今はありませんが、あと何社かは検討しようと思っています」

この答えを聞いた瞬間「余計なことを言っちゃったな」と後悔したのです。

こうして後から競合に入られ、敗戦を続けたのです。

■無駄な競合を増やさず、商談をまとめる質問の仕方はこれ

稼げる営業は決して墓穴を掘るような質問はしません。

そんな質問をしても、百害あって一利なしということを熟知しています。

菊原智明『決定版 「稼げる営業」と「ダメ営業」の習慣』(明日香出版社)

例えば先ほどの業務提携の商談だとしたら、「他にもお考えですか?」とは聞かずに、「どうして当社と業務提携をしようと考えたのでしょうか?」と質問します。

こう聞かれれば、自然にその会社のいいところを探します。

「そうですね。担当の○○さんが親切でしたし、それに……」といい点を探して話したでしょう。

こうなれば無駄な競合を増やすことなく、商談をまとめられます。

先日お会いした電器店の店員さんは、私にこう質問してきました。

店員「たくさんお店がある中で、どうして当社にご来店頂いたのでしょうか?」

私「私は地元のY社より、ここの電器屋さんが好きなんですよ」

店員「ありがとうございます。それはどうしてですか?」

私「店員さんが強引ではないですし、親切ですから。それに商品の陳列もよくて見やすいんです」

気づけば私はその電器店のいいところを自ら語っていました。

その後、商品を気持ちよく買って帰ったのは言うまでもありません。

これはいわゆる自己説得というものです。

いくら営業から熱心に説明されても納得はしませんが、自ら「この商品は前からすごくいいと思っていたのですよ」と言うことで自己説得が起こります。

自分で言ったことは疑ったりしません。どんな素晴らしい営業トークをもってしても、自己説得には敵わないのです。面と向かって営業の悪口を言うお客様はいません。

こうなれば商談は自然にいい方向へ進むのです。

お客様がいい回答を言うような質問を
逆算して考える!

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菊原 智明(きくはら・ともあき)
営業コンサルタント
営業サポート・コンサルティング代表取締役。関東学園大学経済学部講師。社団法人営業人材教育協会理事。1972年生まれ。群馬県高崎市出身。群馬大学工学部卒業後、トヨタホームに入社し、営業の世界へ。自分に合う営業方法が見つからず7年間、ダメ営業時代を過ごした後、手紙で情報を提供する営業に切り替えたことをきっかけに4年連続トップ営業に。2006年に独立し現職。主な著書に『訪問しなくても売れる!「営業レター」の教科書』(日本経済新聞出版社)、『売れる営業に変わる100の言葉』(ダイヤモンド社)、『面接ではウソをつけ』(星海社)、『トップ営業マンのルール』『「稼げる営業マン」と「ダメ営業マン」の習慣』『残業なしで成果をあげるトップ営業の鉄則』(明日香出版社)、『営業1年目の教科書』『営業の働き方大全』(大和書房)、『リモート営業で結果を出す人の48のルール』(河出書房新社)、『仕事ではウソをつけ』(光文社)、『使ったその日から売上げが右肩上がり!営業フレーズ言いかえ事典』(大和出版)などがる。
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(営業コンサルタント 菊原 智明)