ベントレー 次世代車コンセプト『EX 15』発表 最上級リムジン、ミュルザンヌ後継か
伝統を守りながら大きく進化
ベントレーは、新型のコンセプトカー『EXP 15』を発表した。今後の市販モデルのフォルムとデザインを予告するもので、フラッグシップモデルであるミュルザンヌの後継車となる可能性がある。
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全長5.4mのEVで、セダン、SUV、グランドツアラーの境界を跨ぐスタイルは、ベントレーの歴史的モデルからインスピレーションを得ており、現行モデルのコンチネンタルGT、フライングスパー、ベンテイガとは一線を画す未来的な外観となっている。

ベントレー『EX 15』コンセプト
これは、デザイン責任者ロビン・ペイジ氏の意思表明でもある。同氏は17年間にわたってインテリアデザイン部門で活動した後、ボルボへ移籍し、2023年に古巣のベントレーに戻ってきた。
ペイジ氏はAUTOCARの取材に対して、EXP 15の開発では、ベントレーを特徴づける要素を忠実に守りつつ、それを大幅に進化させることが目標だったと語った。
「ベントレーの直線的なデザインラインを踏襲していますが、これは新たなスタートであり、新しいデザイン言語なのです。ポイントは、ちょっとした衝撃を与えること。つまり、次の章への扉を開くことです」とペイジ氏。
「また、このプロジェクトは、よりモノリシックで、より力強く、よりクリーンで、過度に複雑ではない、新しいモダンなデザイン言語を試すチャンスにもなりました」
今後の特徴となる新しいデザイン
EX 15の主な目的は、次世代のベントレー車を定義する5つのデザインテーマを紹介することだ。5つのテーマはすべて、最初期のGTカーの1つ、1928年の『スピードシックス』(ボディはコーチビルダーのガーニー・ナッティングによるもの)から着想を得ている。
スピードシックスは1930年にカンヌからロンドンまでのブルートレインレースで勝利を収めたことで知られている。EX 15では、このスピードシックスを現代風に再解釈した、さまざまなスタイリング要素を取り入れた。

ベントレー『EX 15』コンセプト ベントレー
まず、フロントエンドの「アップライト・エレガンス(美しくまっすぐに立つ)」は、現行モデルよりも緩やかに弧を描くラインで構成され、堂々とした威厳のあるたたずまいを演出している。
ペイジ氏は、「デザインを後方に傾けるようにしましたが、ヘリテージカーに見られる力強い直立の要素が、フロントで表現したかった誇り高い自信を与えています。わたし達はそれを馬に例えています。サラブレッドが立ち止まるときの姿を想像すると、その胸はまっすぐに立っているでしょう」と語っている。
このように直立した塊感のあるフロントエンドは、他社が効率性を追求して採用している、低くて彫刻的なデザインとは対照的だ。しかし、ペイジ氏は、ベントレーはEV航続距離で新記録の樹立を目指すようなことはしないと言う。
「航続距離に関しては、最適なポイントがあることがわかってきました。当社の顧客からは、基本的に480〜560kmが最適だと伺っています。それ以上の距離なら、プライベートジェットを使うそうです」
「エンドレス・ボンネットライン」も重要な特徴であり、独特の形をしたスリムなランニングデイライトの開口部が、従来型と新型の顕著な共通点の1つであるという。
一方、リアエンドは、同社の『B』エンブレムから着想を得た新しいライトシグネチャーを採用し、「プレスティージャス・シールド」と形容されている。これは過去のベントレー車に装備されていた、リアのラゲッジスペースがモデルになっている。
4つ目のデザインテーマは、「レスティング・ビースト」のプロポーションだ。長いボンネット(1930年代風のピアノヒンジ式リッドを備えた大型のフランクを装備)、キャビンを後部に寄せたシルエット、強調されたリアアーチが特徴だ。
「これは、虎が横たわったときの力強い肩に着想を得ています」とペイジ氏は説明する。「後脚に力強さがあるのです」
EXP 15は、現在のベントレーのデザイン概念から劇的な転換を遂げたモデルだが、同社の最も重要な特徴をいくつか継承している。
ペイジ氏は、グリルをモチーフにしたフロントの「アイコニック・グリル」をその代表例として挙げる。
「グリルを当社の主なコミュニケーション手段として維持することに決めました。これまで、グリルは内部に空気を送り込むためのものでした。しかし、もはやその必要はなくなったため、アートとして捉えることにしました」
フロントエンドの大部分をダイヤモンドパターンが占め、その背後には「クリスタル」をモチーフにしたLEDライトディスプレイが配置され、見る角度によって変化するダイナミックな効果を生み出している。また、ヘッドライトは従来の円形デザインからスリムな縦型レイアウトに変更されている。
ペイジ氏は、円形のヘッドライトは、照明技術が他の形状を許さなかった時代の名残だと述べた。「円形のライトを採用すると、レトロな印象を与えることがわかっています。わたし達は、人々が円形のライトにどれほど情熱を持っているかを試したいのです」
ベントレーの過去から影響を受けながらも、あからさまにレトロなデザインは避けるように努めたという。「模倣を始めると、すぐにレトロの罠に陥ってしまう」と同氏は言う。
「顧客やディーラーからは、もっとモダンで進歩的であるべきだというフィードバックをいただいています。古いクルマも大好きですが、結局のところ、街で一番クールな存在になりたいのです」
ファーストクラスのキャビン
EX 15は、大型のラグジュアリーカーとしては異例の3シーターレイアウトを採用。助手席は電動で前後にスライドし、ドアを開けると90度回転してエレガントに乗り降りすることができる。このレイアウトは、かつてのベントレーの会長であり、レーシングドライバーでもあったウルフ・バーナート氏のクルマを彷彿とさせるものだ。
「バーナートは遊び心のある人物でした。自ら好んで運転していましたが、時には後部座席でウイスキーを飲みたくなることもあったようです。また、ガールフレンドも一緒に乗せて、彼女が後部座席に座ることもありました。それはまさに、自分のためのクルマでした」とペイジ氏は語る。

ベントレー『EX 15』コンセプト ベントレー
テールゲートにはピクニックシートとシャンパンクーラー、助手席側に逆開き式(観音開き)ドア、そして駐車時に開くルーフが備わり、乗員は降りるときに車内で立ち上がることができる。さらに、助手席の足元に設置するドッグキャリアも特別に設計された。
「人々は真のラグジュアリーという概念を大変好んでいるということに気づきました。そして、犬は今や非常に重要なアクセサリーとなっています」
キャビンは、VIPの乗員が目的地に到着した際に、ドラマチックな登場を演出することを目的としている。
「最も重要な人物が後部座席に座り、目的地に到着すると、2枚のドアが開き、シートが回転し、ルーフが後方に開いて『到着の芸術(the art of arrival)』が表現される、というコンセプトです。インスタグラムで話題になるような、スタイリッシュに到着する人物の姿を捉えたかった」
通常、このような奇抜な機能は量産バージョンでは不採用となってしまうが、ペイジ氏は「このコンセプトが魅力的かどうかを判断するため、すべて実現可能なパッケージに基づいて設計しました」と語っている。
一方、ダッシュボードの中央には、車内のさまざまな機能を操作するための物理ダイヤルがあり、その中に充電状態やナビゲーションの方向指示などを表示できる小さなデジタルディスプレイが組み込まれている。
「機械式時計とデジタル時計を同時に持っているようなもの」とペイジ氏は述べ、タッチスクリーンを中心としない新しいダッシュボードデザインを模索し、EXP 15ではアナログ操作に重点を置いていることを強調した。
「特に当社が参入している市場では、フルデジタルスクリーンに少し飽きてきていると感じます。プレミアムブランドだからこそ、他社にはできないような、ハイレベルの機械的なディテールを維持しているのです」
量産バージョンの計画は?
EXP 15は、まず第一にデザインのショーケースとして考案されたが、ペイジ氏によると、このジャンルを超えたシルエットが好評であれば量産化の可能性も高まるという。
EXP 15をショールームに並べることはできるのかと尋ねられると、同氏は「可能です」と答えた。

ベントレー『EX 15』コンセプト ベントレー
「(EX 15は)実現可能なパッケージとプラットフォーム、そして既存のメカニズムを基に設計されています。わたし達が知りたいのは、このコンセプトに興味を持っていただけるかどうかです」とペイジ氏は述べた。
具体的にどのプラットフォームを念頭に置いて開発されたかについては確証を得られなかったものの、兄弟会社のポルシェが次世代のフラッグシップSUV『K1』に採用するSSPスポーツ・プラットフォームが適しているだろう。
もし量産化されれば、EXP 15は2020年に生産を終えたミュルザンヌのあとを継ぐことになる。ベントレーにとっては、ロールス・ロイス・ファントムと直接競合するモデルだ。
ただし、量産化を判断する前に、ベントレーはEXP 15コンセプトへの反響を注意深く見守り、このアプローチの実現可能性を評価する予定だ。
「わたし達はGT市場を熟知しています。この市場はほぼわたし達が作り上げたと言ってもいいでしょう。その基盤は堅固です。顧客のことも深く理解しているつもりです。やりたいことも明確です。高級SUV市場でも、すでに相当な経験を積んでいます」
「わたし達が興味を持っているのはセダンです。フライングスパーは大きな成功を収めました。問題は、このプロポーションのクルマを今後も作り続けるか、それとももう少しレベルアップさせるか、ということです」
コンチネンタルGTやベンテイガを大幅に作り変える計画はない。しかし、ペイジ氏は、高級セダンの市場は変化しており、EXP 15のユニークな形状が新たな成功の鍵となる可能性があると述べた。
「伝統的なセダンの他に、何かあるのではないかということを探求しています。人々は、より高いシートポジションを求めるようになってきています。トレンドを見れば、SUVが常に成長を続け、セダンは安定しています。ですから、わたし達がまだ手をつけていない領域があるかどうかを探っているのです」
Q&A:ベントレーのデザインディレクター、ロビン・ペイジ氏
――後部座席の快適性に重点を置くようになったきっかけは、中国の顧客でしょうか?
「中国ではセダンが大きな成功を収めており、フライングスパーが人気です。そこは間違いなくお客様との接点を作れる領域です。もう1つは、顧客層が変化していること。米国でも、顧客にとって重要なのは目的地への到着方法です。この『到着の芸術』はプレミアムクラスにおいて重要な要素となります。彼らは非常に特別なイベントに参加し、到着時に注目を集めることを重視しています」

ロビン・ペイジ氏(左)と記者(右) AUTOCAR
――では、ドライビングの楽しさなどはあまり重視されていないのでしょうか?
「(かつてのベントレー)3リッターは、ウルフ・バーナート自身が運転したクルマですが、ドリンクを飲むための後部座席も必要でした。これは当社の顧客にも共通しています。彼らは自分でクルマを運転します。そこが違いです。当社の顧客は運転が大好きですが、誰かに素敵な体験を提供して感動を与えたい場合もあれば、イベント会場に運転手付きでの送迎を希望する場合もあります。つまり、その両方を満たす必要があるのです」
――物理的なボタン操作とデジタル操作のバランスはどのように取るのでしょうか?
「両者を融合させます。物理的な操作や隠れたディテールで顧客を喜ばせたい。しかし、デジタル体験はコンテンツやアニメーションの面で非常に優れているため、安易に排除することはできません。お気に入りの音楽をスクロールで選曲したい。最新のナビゲーションシステムを使いたい……。これらもデジタル体験です。わたし達は両方を組み合わせています」
