iPhoneのほとんどはFoxconnを始めとする電子機器製造企業の中国工場で製造が行われていますが、昨今の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるロックダウンや従業員の抗議デモ、サプライチェーンの混乱などの影響を鑑み、Appleが製造拠点をインドやベトナムに移す計画を加速させていると伝えられています。

Apple Makes Plans to Move Production Out of China - WSJ

https://www.wsj.com/articles/apple-china-factory-protests-foxconn-manufacturing-production-supply-chain-11670023099



Inside the Covid revolt at the Zhengzhou ‘iPhone City’ plant | Financial Times

https://www.ft.com/content/083e038c-9b10-45d1-85e2-3eb339313a38

2022年11月6日、中国河南省鄭州市にあるFoxconnのiPhone製造拠点でロックダウンが行われ、同年のiPhone最新モデルであるiPhone 14 ProおよびiPhone 14 Pro Maxの供給が大幅に遅延しました。さらに11月24日には約束されたボーナスの支払い条件をFoxconnが守らなかったという理由等から従業員による大規模な抗議デモが発生し、さらなる混乱が生じました。一部では、このデモは中国政府が進めた厳しいロックダウンから来る不満が原因だったのではないかとも伝えられています。2022年11月末にロックダウンは解除されたものの、感染への恐れやFoxconnへの不満から、20万人いたFoxconnの従業員のうち2万人が工場を去ったとも報じられています。

Appleは自社製品の製造のほとんどを「iPhone City」とも呼ばれるFoxconnや中国に工場を構える電子機器製造業、Pegatronなどに頼っていますが、アナリストやAppleのサプライチェーンに関わる人々によると、安定した製造拠点としての中国の信頼性が弱まり続けているため、1カ国に集中して拠点を置くことにAppleが不安を感じてもおかしくはないとのこと。

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、Appleは2022年5月頃にもロックダウンによる生産の遅れを経験していたため、一時的に中国以外の地域に生産拠点を拡大することを検討していたそうです。しかし、パンデミックにより計画を停止せざるを得なかったとのこと。何度も行われるロックダウンのあおりを受け、Appleが以前の計画を再び推し進めようとしていると伝えられています。



Appleのサプライチェーンに関わる人々は、生産が一極集中となっている現状への一つの対応策として、より多くの製造業者と取引することを挙げているとのこと。Appleとの取引拡大を狙う中国企業はLuxshare Precision IndustryとWingtech Technologyの2社だといいます。

事情に詳しい人物によると、Appleは製造パートナーに対し、中国以外の国で生産を行うよう求めているとのこと。TF International Securitiesに所属するアナリストのMing-chi Kuo氏によると、Appleはインドでの増産に焦点を当てており、長期目標は2022年時点で数%程度の割合を40%〜45%にまで増やすことだそうです。Foxconnやその他同業者もベトナムやインドインドネシアに工場を設立して生産拠点の分散を図っていますが、Appleが必要とする規模で製造するにはほど遠く、生産能力は中国に比べるとわずかであると専門家により指摘されています。