広島のMF川村拓夢【写真:Getty Images】

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【インタビュー】9月の月間ベストゴール受賞、清水戦のロングシュート弾に迫る

 各月のリーグ戦において最も優れたゴールを選定する、J1リーグ月間ベストゴール。

 9月はサンフレッチェ広島のMF川村拓夢が、9月3日に行われた清水エスパルス戦で決めたハーフウェーライン手前からの推定約60メートルの超ロングシュートが選出された。

 手前に出ていたGKを見逃さなかった視野、さらに正確かつ力強いキックでなければ決して決まらないゴールだった。退場者を出したなかで、この試合では先制&ダメ押しゴールも決めることとなった川村は、なぜこの得点を決めることができたのか。本人にこの裏側を解説してもらった。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部)

◇   ◇   ◇

――月間ベストゴール受賞、おめでとうございます。
「ありがとうございます。すごくビックリしています。まさか自分が月間ベストゴールに選ばれると思っていなかったので、すごく嬉しいです」

――今回は清水戦のロングシュートが選出されました。このゴールが決まった直後はどのような気持ちでしたか?
「スタジアムの歓声がすごかったのですが、すごいアドレナリンが出ていて、自分ではあまり覚えていないんです」

――試合は1人少ない劣勢の状況でしたが、途中出場から2点を取りました。どんな思いでピッチに入りましたか?
「最初に広島が1人退場者を出して、ずっと押されていた状況だったので、自分が入って、まずはとにかく守備からやろうと思い、そのなかでチャンスがあれば狙っていきたいと思っていました」

――2点目の河村選手のゴールは、自陣の深い位置からのスローインからスタートしています。
「スローインを受けたドウグラス選手が、うまく張ってくれました。そのあとでボールがこぼれたのですが、自分としては、ここのボールを回収できたのが、良かったかなと思います」

――ボールを回収した後、少しドリブルで運びました。
「この時に自分の横と前に選手がいませんでした。時間帯的にもアディショナルタイムだったので、ここでボールを奪われてカウンターを受けるよりは、相手のコートでプレーを終わらせたかったのですが、ボールを持って前を向いた時に1回、顔を上げたんです。その時、GKが思った以上に前にいたので、思い切り狙ってみました」

――そしてロングシュートが見事にゴールへ吸い込まれていきました。
「よくロングシュートって言われているんですが、自分の感覚ではロングパスのイメージです。振り抜くというよりは、ロングパスをゴールの中に入れるイメージで決めました」

――蹴った瞬間に「入った!」という感覚でしたか?
「そうですね。蹴った瞬間に『入った!』と思ったので、ベンチに向かってゆっくり歩いていきました」

FIFA公式SNSも注目「そんなにすごいゴールだと思っていなかった」

――プロの選手でも難しいゴールだと思っていたのですが、では同じシチュエーションになれば、次も決められますね?
「ちょっとそれは分からないです(笑)。でも、次もそこを狙っていきたいと思います。ああいうシュートを狙うことで、GKも前に出て来られなくなりますし、GKとDFの間にスペースができて、僕たちがやりたいサッカーがもっともっとできると思います。そこは隙があれば、もっともっと狙いたいと思います」

――リードしていたこと、絶対にゴールを狙うというよりも、時間を使うキックをするという意図。0-0の状態だったら、同じキックでもプレッシャーがかかったように感じるのですが、そのあたりはリラックスして精度の高いキックをするうえで、プラスに働いたのでしょうか?
「はい。やっぱり1点目のゴールで自分としては乗れた感じもありました。1点目を決めたので、自分としては本当にノっていました」

――FIFAの公式ツイッターでも取り上げられました。周囲の反応はありましたか?
「すごく反響はありました。自分としては、そんなにすごいゴールとは思っていなかったので、周りの人たちから言われて、『すごいゴールだったんだな』と感じました」

――「そんなにすごいゴールとは思っていなかった」とおっしゃっていましたが、あそこにボールを届けるのは、そんなに難しいことではないという感覚なのですか?
「多分、僕に限らずプロの選手であれば、あのゴールの大きさで、ハーフウェーライン付近からなら決められる選手が多いと思うので(笑)。そこまで自分ではすごいゴールだとは思わなかったです」

――かなりキック力も必要かと思ったのですが、より飛距離を伸ばそうとすれば、もっと遠くまで蹴れそうですか?
「このキックは滞空時間を長くして、そんなにパワーを使わないキックなので、多分もっと飛ばせると思います」

――キック練習をしている選手や子供たちに、何かアドバイスをいただけますか。
「自分が小学生、中学生の頃から、とにかく蹴り続けて自分のフォーム、自分に合う蹴り方を見つけてきました。回数を重ねて自分に合う形を見つけてほしいですね。僕がロングキックの練習をする時は、対面パスなど人に向かって蹴ることが多いです。中学生時代は特に人に蹴る練習が多かったので、そこで磨かれていったのかなと思います」

――練習でボールを蹴る際に、何か意識していたことはありますか?
「キックの回転を意識していました。とにかくバックスピンになるように、バックスピンの回転数を多くできるように意識していたんです。とにかく蹴っていて気持ちいいという自己満足ではあるのですが、バックスピンが多いボールだと受け手もトラップしやすいボールになります。どれだけスピードがあっても正確に足もとに届けば受け手はトラップしやすいですし、トラップしてからもいろんな選択肢を持ちやすくなると思ったので、どうすれば受け手がコントロールしやすいかは中学生の時に意識していましたね」

――この時に限らず、ボールを持った時というのはゴールに近い位置、遠くの選択肢を第一に見ているのでしょうか?
「監督からは、とにかく『遠くを見ろ』と言われています。自分としても、まずはゴールを見ていたので、そういったところはつながっているかなと思います。なので、今後もロングキックには期待してください」

賞金の使い道はカフェ巡りと同期との食事、残りは貯金!

――この試合は2年6か月振りとなる声出し応援が可能になった試合でした。ファン・サポーターの反応も嬉しかったのではありませんか?
「自分はこのクラブを見ながら育ってきましたし、応援歌もずっと小さい頃から聞いていたので、自分にとってすごくパワーになりました」

――試合終了後には、ユースから同期の大迫敬介選手が駆け寄ってきたシーンもありました。試合後、どんな話をしましたか?
「とにかく、『すごいね!』とか、そういうことしか言われなかったのですが、僕としては大迫選手、満田誠選手の活躍が刺激になっていたので、同期で切磋琢磨しながら、良い関係を築けているかなと思います」

――9月は公式戦でかなり点を取れていますが、要因はありますか?
「やっぱり清水戦の2ゴールですね。自分のストロングポイントが通じるというのが、自信につながりました」

――そのストロングポイントを具体的に教えてください。
「左足のキックの部分ですね。自分としてもストロングポイントだと思っています。あとはゴール前に入るところ。嗅覚の部分でもここ最近、優れていると思うので、そういうところは自分の強みだなと思っています」

――以前、野津田選手もベストゴールを受賞しました。同じ左利きで中盤を務め、キックの精度も高い選手ですが、参考にするところもありますか?
「そうですね。でも、野津田岳人選手と自分ではキックの種類が違うというか、野津田選手の得意としているボールは、シュートとか落ちていくボールです。自分はどちらかというとストレートなボールなので、このシュートの時もストレートボールなら、外れる確率も減るので、ロングパスを選択しました。僕とは違ったタイプの左利きの選手なので、違った刺激を受けながら、良いプレーができているかなと思います」

――今シーズン、J2の愛媛FCから復帰して、多くの試合に出場し活躍されています。ご自身の成長をどのように感じていますか?
「J2である程度試合に出て得点を重ねてきたのですが、キャンプではスピードなどが全然、違いすぎて、練習に付いていくのが精いっぱいだったんです。僕自身ミスがすごく多くて、とにかくJ2で付けてきた自信が一瞬でなくなりました。本当に『このままプロのキャリアが終わるかも』と思ったくらいだったのですが、コーチングスタッフが話を聞いてくれたりして、慣れてきました。本当にビックリするくらいJ1とJ2ではレベルが違っていたのですが、そのなかで自信を積み重ねていくことができたのか、周りに慣れたのか、7月くらいになってやっと自分のプレーを出せるようになってきたかなと思います。本当にJ2とは全然違いました」

――今、ご自身でも成長を実感されていて、非常に充実していそうですね。
「そうですね。試合に出れば出るほど、自分としては良くなっている感覚があります。J1とJ2を比べたら、J1でプレーしているほうが早く成長できている感じはします。今回、ベストゴール賞を受賞させていただいたことも自信になるので、この先のプレーにつなげていきたいです」

――ちなみに、月間ベストゴールの賞金は20万円です。
「聞きました。貯金したいと思います(笑)。でも、普段からカフェ巡りをしたり、ピッチ外でも一緒にいる時間がすごく長い、大迫選手、満田選手たち同期とご飯に行って、残りは貯金したいと思います」

――最後に、今シーズンも終盤に来て、勝ち点を落とせない状況が続いていますが、残りの試合に臨む意気込みを聞かせてください。
「J1リーグ3位以内をチームとしても目標にしています。また、ルヴァンカップ、天皇杯と決勝に残っているので、そこで必ず勝って優勝したいと思います」

川村拓夢(かわむら・たくむ)/1999年8月28日生まれ、広島県出身。サンフレッチェ広島ジュニアユース―広島ユース―広島―愛媛FC―広島。2018に広島の下部組織からトップチームへ昇格。翌年から3シーズン、愛媛への武者修行を経て、今季から広島へ復帰した。正確なキックと展開力を武器にチャンスを掴み、2022年のリーグ第24節鹿島アントラーズ戦でJ1初ゴールをマークすると、第28節の清水エスパルス戦では2ゴールを奪う活躍を見せた。(FOOTBALL ZONE編集部)