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走行中の車の窓から、上半身を乗り出し、水鉄砲を噴射する様子をとらえた動画が話題になっている。

報道によると、車が目撃されたのは、神奈川県の横浜横須賀道路(自動車専用道路)下り線だという。

拡散している動画には、ナンバープレートと窓に浮き輪をぶらさげたまま走行する車が映っている。また、窓から上半身裸の2人が身を乗り出し、水鉄砲を噴射している様子も。

このような行為は危なく感じるが、どんな法的問題があるのか。平岡将人弁護士に聞いた。

●「同乗者にも、周囲にも危険を及ぼす運転」

ーーこのような危険な運転には、どのような法的な問題があるのでしょうか。

高速道路で、窓から手や身を乗り出し、周囲に水鉄砲を噴射し、浮輪らしき荷物をはみだして積載して自動車を運転するのは、同乗者だけでなく、周囲にも危険を及ぼす運転です。

まず、動画の車のナンバープレートは浮き輪らしきもので隠されているようですが、自動車のナンバープレートは表示の義務があります(道路運送車両法19条)から、これを故意に隠して運転した場合は罰則があります(50万円以下の罰金)。

自動車の運転にあたり、運転者には「他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転」しなくてはならないという安全運転義務が課されています(道路交通法70条)。

この動画の運転者は、同乗者が身を乗りだしたり、水鉄砲を噴射して他車両の通行を妨害していることを認識しながら運転を続行しているので、安全運転義務違反となるでしょう(3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金)。

もちろん、同乗者にシートベルトを装着させる義務の違反(道路交通法71条の3、2項)にもなります。

ーー万が一、車の同乗者が転落して死傷したり、他車両の事故を引き起こした場合には、運転者は責任を問われるのでしょうか。

はい。運転者は「同乗者が悪い」と責任逃れすることはできず、当然に責任を負うことになります。もしも、同乗者が今回のような行為を始めたら、運転者としては、ただちに安全に自動車を停車して交通妨害を停止し、交通安全を守る義務があるわけです。

●運転者だけではなく、同乗者も責任を問われる

ーー運転者のみならず、同乗者も責任を問われるのでしょうか。

もちろん、同乗者も違法とされます。東京都道路交通規則は「車両等の中から身体若しくは物件を出すこと」を禁止行為と定めているため、この違反となるでしょう。

さらに、水鉄砲の噴射によって事故を誘発したような場合には、過失致死傷罪も十分に視野に入るものと思います。

ーー万が一、同乗者が転落して後続車が衝突した結果、死傷した場合はどうなるでしょうか。後続車にも責任が問われてしまうのでしょうか。

事故が起きた要因は転落者およびその運転者にありますから、大きな責任を問われるというわけではありませんが、結論からいえば、後続車にも一定の責任が問われることになるでしょう。

窓から身を乗り出した結果、転落するというのは、危険な先行行為から起きるべくして起きたものであって、危険な行為をした人のほか、後続車両にも責任を分担させるのはおかしな気もします。

しかし、後続車両には前方の安全を十分に確認し、十分な車間距離をとって走行する責任があります。前方車両が危険だからといって、後続車両に課せられた義務がなくなるわけではないのです。

ーーどのぐらいの過失責任となるのでしょうか。

状況にもよりますが、2割程度の過失責任は取られかねないと思います。今回のケースのような状況を認識した場合、後続車両の運転者は、人が転落することも予見したうえで、車間距離を広げるなどの安全措置(もはや自己防衛措置)を取るべきといえるでしょう。

動画の車は、きっと海水浴に出かける友人、または家族が乗った自動車だろうと思います。テンションが上がって、騒ぎたかったのかもしれませんが、一歩間違えれば、その大切な友人や家族が亡くなっていたでしょう。場合によっては、他車両の事故を引き起こしたかもしれません。

運転者は、大切な友人や家族、そして他者を守る責任があります。二度とこのような運転をしないでほしいと思います。

【取材協力弁護士】
平岡 将人(ひらおか・まさと)弁護士
中央大学法学部卒。全国で10事務所を展開する弁護士法人サリュの前代表弁護士。主な取り扱い分野は交通事故損害賠償請求事件、保険金請求事件など。著書に「交通事故案件対応のベストプラクティス」ほか。実務家向けDVDとして「後遺障害等級14級9号マスター講座」「後遺障害等級12級13号マスター講座」など。
事務所名:弁護士法人サリュ銀座事務所
事務所URL:http://legalpro.jp/