【ロシアと日本の領土問題】「北方領土問題」に日本はどう向き合うべきか?<寺島実郎氏の見解>
日本総合研究所会長
寺島 実郎
Terashima Jitsuro
ロシアのウクライナ侵攻は世界秩序のあり方を根本からひっくり返した。日本はロシアとの間に北方領土問題を抱える。1955年の日ソ共同宣言以来、この問題は旧ソ連時代から存在し続け、一部には歯舞・色丹の2島返還論もささやかれてきた。ウクライナ危機の今、この北方領土問題にどう取り組んでいくべきか。第二次世界大中にスタートした〝連合国共同宣言〟が鍵を握る。「日本はアメリカを引き込んで、日本の正当性を主張すべき」という寺島氏の主張とは─。
世界の政治を変えた
ウクライナ危機
─ ロシアのウクライナ侵攻で、平和維持のために築いてきた第二次大戦後の世界秩序が崩壊の危機に瀕しています。
寺島 世界の力学が変わったということです。
100年前に第一次世界大戦を背景にしながら、スペイン風邪というパンデミックが起こり、4000万人の人が亡くなりました。
つまり、第一次世界大戦というのは、ロシア帝国とドイツ帝国、それからトルコのオスマン帝国、そしてオーストリア=ハンガリー二重帝国、この4つの帝国を歴史の中から消し去り、4000万人のパンデミックの死者を出すという大きな地殻変動を起こしました。
そして、今まさに、われわれが目撃していることは、パンデミックによる約600万人にのぼる死者と、ユーラシア大陸の心臓部に位置するウクライナ危機に象徴される地殻変動は、歴史的転換点だという文脈で考えなければいけないということです。
そういう中で、皮肉にも何が起こっているのか。
短期的なことでは、アメリカのバイデン大統領と日本の岸田首相を蘇らせたということがあります。
例えば、去年、バイデン大統領はアフガニスタン制圧に手をこまねいて撤退を表明し、その後、タリバンによるアフガニスタン首都カブールの占拠につながりました。このことで国内的にもある種の支持を失っていた。
そして、ロシアの一連の動きについても、アメリカは横目で見ていながら軍事行動を起こせないということで、プーチンは今回の行動に踏み切った部分があるわけです。
ところが、バイデンは事前にロシアの行動を世界に発信して、国際世論の中でいつの間にか、同盟国を踏み固めた部分があるわけです。
実は、中間選挙を前に、バイデン大統領の支持率は下がり、風前の灯だと言われていました。つまり、トランプが後ろ盾になっている共和党が大勝利するとみられていました。
ところが、ここへきて、そうともいえない状況になってきた。
つまり、トランプが「プーチンは天才だ」などと言って持ち上げている空気感に、さすがのアメリカ人も、このままいったら大変なことになるという空気を感じ取ってきたわけです。
さらに、バイデンも同盟国ではないから軍事行動は起こせないという枠組みの中で、緩んでいた同盟国関係を束ねて、NATOとの関係も経済制裁を含めて、ロシアを締め上げる展開を演じて見せ、支持率が上がってきています。
ですから、皮肉なことに、結果的にプーチンはバイデン大統領を蘇らせたと言えるわけです。
それから、国内を見ると、岸田首相も7月の参議院選挙前は〝ロープロファイル政権〟、つまり不人気になることはやめて、好感度だけを維持する政権として低エネルギーで進んでいこうとしていた瞬間に、ウクライナ危機が起こりました。
