大事なことは、「United Nations」というのは、連合国という意味です。ところが、UNといったら国際連合となってしまう。

 日本が戦後、「United Nations」を「国際連合」と訳したのは世紀の大誤訳と言われていますが、これは意図的に訳したものなのです。あたかも国を超えた世界機関があるかのような印象を与えるためです。ですから、中国には国際連合という言葉はないのです。

 ─ 国際連合ではなく、連合国だと。

 寺島 連合国です。

 ですから「連合国共同宣言」というものが、いかにUNというものの軸であるかということです。国連憲章もそれによって成り立っているわけです。

 そういう意味合いにおいて、日本が主張しなければいけないのはこの一点で、そこにアメリカを引き込まなければいけない。

 アメリカは、自分が掲げた連合国共同宣言があるがために、本当は領有できたはずの沖縄を領有しなかった。そして、信託統治のような形で預かって、1972年に返還したわけです。

 血まみれになって奪い取った沖縄なのだから、それまでの世界観では沖縄に軍事基地をつくって領有しても、誰も反対できなかった。ところが、アメリカは自制した。それは、自ら掲げた共同宣言があったからです。


恐怖の円安が
日本にもたらすもの

 ─ その立場にあるからこそ、アメリカも北方領土に対して発言権があるわけですね。

 寺島 ええ。アメリカもアシスタントなスタンスで臨むべきことなのです。

 日本は政治的現実主義に立って、北方領土は施政権をロシアに持っていかれてしまっているのだから、2島でも返ってきたほうがベターではないかというところで煙幕を張ってきたわけです。ところが、ロシアが自分たちの本性を明らかにして、日本が何を主張すべきかを明らかにしてくれた。そういう意味合いにおいて、この展開は大きな意味があるのです。

 だからこそ、岸田政権も、けれん味なく、米欧の連携の仕組みに参加して、非友好国といわれても構わないというスタンスでロシアに向き合い始めた。

 問題は、そうした流れの中で、一番考えておかなければいけないのは、経済に対するインパクト、つまり「悪い円安」どころか「恐怖の円安」です。

 従来のエコノミストの常識からいうと、「戦時の安全通貨」という言い方があります。つまり、円というのは、世界にもめ事が起こると安全通貨として、円高になるという論です。

 ─ 有事の円高と言われていました。

 寺島 ところが、今回は円高になっていない。

 それは、わたしが言い続けてきた日本という国の埋没の象徴であり、経常収支の悪化があるからです。

 つまり、貿易収支も、経常収支も赤字化している日本が、円高に向かうはずがないという状況が起こってしまっている。

 このことが何を意味しているかというと、いわゆる「川上インフレ、川下デフレ」という、川上の原材料価格の高騰というインパクトを実体経済がもろに直面しているということです。

 去年1年間の動きの中でも、「川上インフレ、川下デフレ」の進行はすさまじいものがありました。具体的に言うと、素材材料は6割高くなる一方で、最終財は4%しか上がらなかった。

 それに加えて、今度は円安のインパクトが加重されてくるわけです。原油価格の入着価格も円ベースで年間81%上がってしまっている。

 その中で、悪い円安を通り越して恐怖の円安になり、仮に1ドル120円台で動いていったら、日本の経済は大変なことになります。

 アベノミクスと称して金融をジャブジャブにして、財政出動で景気を支え、株高と円安にもってきていましたが、金融をジャブジャブにして、経済を水ぶくれさせてきたことの余波が、「川上インフレ、川下デフレ」という中、円安がさらに加速すると、いわゆるスタグフレーションの最も深刻な国に日本がなっていく可能性があるわけです。