【私の雑記帳】『財界』主幹・村田博文
経団連の使命は何か──。
2018年5月から経団連会長の任にあった中西宏明さんが病のため、任期途中で辞任、その後任に住友化学会長の十倉雅和さんが内定した。正式には6月1日の定時総会に合わせての交代となる。
デジタル革命、環境問題という時代の変革期にあって、中西さんは第14代の経団連会長に就任。
日本のモノづくりを代表する日立製作所の構造改革を推進した実績と人柄が買われての起用だった。
日本経済団体連合会──。とかく、旧来型の産業の集まりと言われた経団連。IT(情報技術)やAI(人工知能)などの若い産業が台頭し、それらIT関連企業をいかに取り込むかも会長の重要な仕事の1つである。
楽天グループの総帥、三木谷浩史氏のように、自分たちで経済団体をつくろうと『新経連』を立ち上げる若き経済人も登場。
こういう中で、中西さんはアントレプレナー(企業家)たちとも親交があり、新興企業との対話も推進。DeNAの南場智子さんを副会長に選任。中西さんは包容力のある経済リーダーである。
『不確実性の時代』の成長
『。新成長戦略』──。中西経団連が打ち出した日本の成長戦略のタイトルである。
最初に、『。』と終止符が打たれているのも、新機軸を打ち出すぞという意気込み。
なぜ、こういう新奇なタイトルにしたのか? という本誌の問いに、中西さんは、「コロナ禍を機に、資本主義のサステナビリティが真剣に問われていることを踏まえ、企業がそこにいかに貢献するかを議論の出発点としました」と切り出し、次のように続けた。
「このような事態を、1年前には誰も予測できなかったと思います。まさに不確実性の時代と言えます。他方、コロナ禍でDX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れなど課題が浮き彫りになり、一気に加速させるチャンスでもあります。危機の最中から、ニューノーマル、そしてその先のアフターコロナの経済社会の在り方を見据えて、いち早く新しいビジネスモデルを打ち出した者が次の時代を制することができます」
未来を自ら創り出す
日立製作所はリーマン・ショック後に製造業としては当時最大の赤字(7873億円余)を出し、子会社を含めて厳しい構造改革に迫られた。その時に白羽の矢が立てられたのが川村隆さんと中西さんで、お二人は改革を断行。
その構造改革は現在の同社CEO・東原敏昭さんに引き継がれている。改革に終わりはない。今後も中西氏の改革魂は新しい経営陣にも受け継がれていくであろう。
中西さんは経営トップに望まれるものとして次のように述べた。
「経営トップには、変化にひるまず、変化を恐れず、むしろ変化をチャンスと捉えて、不確実な未来を予測しようとするのではなく、未来を創り出していく気概が求められるのではないでしょうか」
コロナ危機の今、経営トップに求められる資質がこの言葉に込められていると思う。
十倉新会長への期待
経団連新会長の十倉雅和さんは1950年7月10日生まれの70歳。74年(昭和49年)に東京大学経済学部を卒業して住友化学工業に入社。住友化学としては、米倉弘昌さん(故人)に続いて2人目の経団連会長となる。
経営企画畑や半導体材料関係にもたずさわり、韓国・サムスン電子の実力者・李健煕氏(前会長)にも信頼されたという。
課題解決型の経済リーダーという評価。温厚な人柄で、「人の意見をよく聞く人」、「笑いの絶えない人」という評価がどんな人からも出てくる。
