事業再編で、住友化学はかつて、三井化学との統合を模索したことがあった。あと一歩という所まで、統合交渉はいったのだが、結局破談となった。

 住化の某首脳が「上から目線でモノを言ってくるので……」と関係者からは、破談理由について、こんな声も聞かれた。

 共に、旧財閥系の代表企業であり、歴史と伝統を持つ両社。統合したほうが成長できると合理的判断を下したはずなのに、いざ統合作業を進めると、”人間的感情”のもつれで破談となってしまった。

 この時の十倉さんの立ち居振る舞いについて、「十倉さんは終始、紳士的に話ができた人。じっくりこちらの話にも耳を傾けてもらったし、対話はすすみましたよ」と三井化学某首脳は語る。
 
 こうした人と人のつながりが、新しいステージでどう生かされるか。DXの時代であっても、その基礎を担うのは「人」。人の力をどうまとめ、グローバル世界に情報発信していくか、十倉さんの人間力と情報発信力に期待がかかる。

求められる『覚悟』
 確かに時代は大きく、激しく変革している。ソフトバンクグループが純利益で約4・9兆円もたたき出して国内最高益を記録。コロナ危機下でIT、デジタル関連業種の好調が目立つ半面、航空、観光・宿泊の不振と明暗が分かれる。K字回復といわれるユエンである。

 また、米中対立で『経済安全保障』がいわれ、経済と政治が絡む時代でもある。価値観の対立の時代でもある。

 そして、気候変動・環境問題や人権問題というグローバルな共通の課題にどう取り組んでいくか。こうしたマクロ問題に企業も取り組まないと生き残れなくなった。

「脱炭素にしても、2050年に温室効果ガスの排出を実質ゼロにするという目標を日本は掲げましたが、そう簡単なことではない。業種によって、その深刻度も違いますからね」と某経済人は語り、次のように続ける。

「新しい目標を実現しようとすると、経済の縮小均衡も覚悟しないといけない。われわれは、これまで拡大均衡で成長を追ってきたわけですからね。それを構造改革していくとなると、縮小均衡も避けられません。本当に知恵の出しどころです。やり遂げねばならない」

 経済リーダーに覚悟が求められる時代と言っていい。

倉本聰さんの訴えに……
 危機の中をどう生きるか──。

もっと言えば、みんながコロナ禍の中で死と直面している。

 生老病死。昔から、生と死は一体で考えられてきた命題。いかに生きるかは、いかに死ぬかに通ずる。

 この根源的なテーマについて、本号では倉本聰さんに執筆していただいた。題は、『そしてコージは死んだ』。長い間、苦楽を共にしてきた仲間の死についての考察。

「この歳になって、死ぬことに対してはもうあまり恐怖はないんです。ただ、死ぬ時の苦しみというのが一番恐怖としてあるんです」

 尊厳死という言葉はあるが、内科医と外科医で解釈が違うという現実。昔は、死を家族が看取ったが、今は病院になった。人の生き方と尊厳死を真剣に考え直す時だ。倉本さんの訴えは実に重く響く。