キャリアについての“哲学”“本音”を著名な方にお伺いすべく、新R25が立ち上げた新連載「キャリ凸」。

1人目のゲストは田端信太郎さん。

7月31日に公開した前編に続き、後編となる今回は、コンデナストジャパン→LINE→ZOZO→現在のフリーランス…と、田端さんを一躍「ブランド人」にした“キャリアの核心期”に迫っています!

「年収が上がりつづけてる要因は?」
「ヘッドハンターから声がかかるには?」
「どうやったら前澤さんから“ウチに来て”って言われるの?」

など、フツーじゃきけない質問をぶつけまくってますよ。

〈聞き手=天野俊吉(新R25副編集長)〉


【田端信太郎(たばた・しんたろう)】NTTデータを経てリクルートへ。フリーマガジン『R25』を立ち上げ、創刊後は広告営業の責任者を務める。その後ライブドア、コンデナストジャパン、NHN JAPANを経て、株式会社ZOZOコミュニケーションデザイン室本部長に就任。現在は退職

【ライブドア→コンデナスト】キャリア強者の代名詞“ヘッドハンティング”ってどうやったら来るの?

天野:
ここからは、田端さんのキャリア後半戦。ライブドア→コンデナストジャパン(※1)への転職からお話を聞ければと思います。


※1 コンデナストジャパン…『VOGUE JAPAN』『GQ JAPAN』『WIRED』など複数の国で発行される雑誌媒体を展開する企業の日本法人

田端さん:
2010年かな。このときは、ヘッドハンターから声がかかったんですよ。


キャリア強者の代名詞、ヘッドハンティングだ!

天野:
ヘッドハンターってよく聞きますけど、読者もあんまりイメージがつかないと思うんですよね。

どれぐらいの実績があればヘッドハンターが来るようになるんですか…?

田端さん:
業界のカンファレンスで登壇するとか、バイネームで名が知られてないとまず無理でしょうね。20代のうちに来るって人は多くないはず。

最近だとLinkedInで連絡が来ると思うけど、僕のころは「ぜひお会いしたい」って封書が来たんです。

天野:
田端さんの場合はどういうオファーが来たんですか?

田端さん:
たぶん誰かが具体的に僕の名前を挙げたんだと思う。

それまでも、角○とかぴ○とか、出版社や新聞社のデジタル事業部からお誘いがしばしばあって…

でも、本気で気持ちが動かなかった。「どうせこいつら本気じゃねえしなあ」と思っちゃったからさ(笑)。


関係者の皆様、10年前の話ということでお目こぼしください

天野:
そのなかで、コンデナストに転職しようと思った理由は?

田端さん:
ひとつは、コンデナストには大学生のころから憧れていた斎藤和弘(※2)さんというスター編集者がいたこと。

あとは当時、iPadとかタブレットが出てきて、紙をめくるようなUIで電子書籍が読めるようになっていた。「これは雑誌のビジネスに革命が起こる!」って考えたんですよ。

転職するなら、自分のなかでそういう仮説立てをしてベットできるといいよね。


※2 斎藤和弘…マガジンハウスで『BRUTUS』編集長、『Casa BRUTUS』創刊編集長を務め、のちにコンデナストで『GQ』『VOGUE』の編集長を務めた人物。現在はフリー編集者


「うちの奥さんは『あなたファッションに興味がないのに務まるの?』って言ってたけど(笑)」

天野:
ちなみにこの連載では、前回同様「転職で年収がどう変わったか」も聞かせていただきたいんですが…

コンデナストへの転職ではどれぐらい上がりました?

田端さん:
う〜ん…だんだん話が今に近づいてきてるからな〜…


そんなにイヤそうな顔しないで

田端さん:
…ライブドアで最後のほうは1000万円台後半ぐらいにまでなってて。

コンデナストに行って2200万円に上がりました。

天野:
ついに2000万を超えてきた…!

田端さんに「転職のたび年収が上がりつづけてる成功要因」をきいてみた

天野:
ここまで上がりつづけてる「年収の変遷」を聞いて思ったんですが…

会社を渡り歩いても、パッとせず年収も上がらない人もいるじゃないですか。そういう人たちと田端さんの一番の違いはどこにあるんでしょうか?

田端さん:
これは話をはぐらかされたって思うかもしれないけど、「運がよかった」のが一番大きいよね。


運なのか

田端さん:
自分が転職の面接官をするときも、運が悪そうな人って通さない

面接のフィードバックでは絶対こんなこと言われないと思うけど、運気が悪い人に関わるとこっちまで運勢悪くなっちゃいそうだから採りたくないのよ(笑)。

天野:
たしかに、採用で「ポジティブなオーラがある」とか「顔つきがいい」って要素が決め手になるとよく聞きますけど…

それってどういうことなんですか? 顔がよければいいってこと?

田端さん:
キャリアにおける“運”が何なのか言語化するなら… 「被害者意識が強くないこと」だよね。

被害者意識が強い人って、にじみ出るから、面接しててわかるのよ。

天野:
そういうものなんですか…

田端さん:
不適切なたとえをすると、“美人だけど、話してみるとメンタルがやばそうで好きになれない子”っているでしょ?

あれに近い(笑)。

履歴書はキレイなんだけど、会社に迎え入れてしまうとお互い不幸になりそうだな…っていう。


「いるでしょ?」って言われても。まあわかりますけど

田端さん:
実力と自己評価が乖離してて、「俺はこんなに頑張っているのに、私はこんなに頑張っているのに」っていう気持ちが強すぎるとそうなってしまう。

“査定のフィードバックで被害者意識が大噴火して会社辞めてきました!”みたいな人、たまにいるもん。

天野:
転職における「いい顔つき」とは被害者意識の有無。なるほどなあ…

田端さん:
あともうひとつは、「謙虚な姿勢」ってことじゃないかな。

30代、40代以降で、「100%自分の実力でここまで来たんだ」っていう傲慢な態度で新しいキャリアに挑んで、大敗するパターンが多い。

謙虚さが大事です、なんて言うと、読者には田端らしくないって思われそうだけどね(笑)。


キャリアにおける運とは「被害者意識」と「謙虚さ」。気をつけよう…

【コンデナスト→LINE】「家出息子が頭を下げた」。一方でTwitterが人気上昇

天野:
コンデナストジャパンではデジタルマガジンのビジネスを担当し、その後はいよいよLINEに転職するわけですね。

田端さん:
この転職はね…さっき言った、「タブレットで雑誌のビジネスにルネッサンスが来る」という俺の目論見がカンペキに外れたんですよ。

あと、デジタルに本気だと言いつつ、ネット上で写真のコンテンツが拡散することに否定的な会社のスタンスにも少し疑問があった。

高名なファッション誌を多く扱ってるから、コピーライトの違反を訴えまくったりしてたんだけど、「じゃあ、今流行しだしてるTumblrとかInstagramをどうとらえるんだ?」みたいな。ロンドンでオーナーに直談判したこともある(笑)。


このあたりは、田端さんのキャリアのなかで唯一少しだけ“被害者意識”が顔をのぞかせている時期な気がする

田端さん:
ライブドアがLINE(当時はNHN Japan)に子会社化されてたから、以前からの知り合いには「いつ戻ってくるの?(笑)」なんて言われてたわけですよ。

そんななかで2012年の1月、暗くて寒い冬のロンドンに出張に行ってさ。

往復のフライト25時間、そしてロンドンで1週間考えて「やっぱり俺、戻ろう…」って思った。

帰国してすぐ、出澤さん(出澤剛。LINE代表取締役社長)に「家出息子が頭を下げて戻りたいと言うようで恐縮なのですけれども…」みたいなメールを送ったの。

天野:
「キャリア強者」の田端さんにもそんな時期があったんですね…

ただ、おそらくそのころから、いち早くTwitterで有名人になって「個人でのブランド化」が始まってますよね?

田端さん:
そうだね、コンデナストからLINEに移るときにフォロワー3万人ぐらいいたのかな。当時はそれでもけっこう多いほうだった。

相関はわからないけど、個人で講演する機会も多くなってきた時期だね。『MEDIA MAKERS』っていう初めての本も出したし。

天野:
講演料としてお金を稼げるようになったのもこの時期ですか…?

田端さん:
うん、LINEにいた2013年ぐらいからかなあ。

まぁでも当時は高くても1回30万円ぐらい。せいぜい年100〜200万円の収入ってところね。


年200万円…全然十分です…

【LINE→ZOZO】意欲的な経営者ほど「倦怠期の夫婦」になりがち。的確なディスをせよ

天野:
そして、「転職しただけでバズった」と言われたZOZOへの転身になるわけですね。

前澤(友作)さんに呼ばれて、初対面で食事に行ったと聞いたんですが、本当ですか?

田端さん:
そうそう。

当時のZOZO(名称はスタートゥデイ)は、ECプラットフォームとしてだけじゃなく、プライベートブランドに注力しようとしていた時期でね。

天野:
どんなプレゼンをしたら、前澤さんから「ぜひウチに!」って言われるんですか…?



田端さん:
プレゼンっていうか、とにかくベラベラ喋った。お店の人に「前澤さんと食事していてこんなによく喋る人は初めて見ました」って言われたぐらい(笑)。

僕なら前澤さんという個人を有名にして、それをベースにプライベートブランドを広げていきます」とか、「前澤さんは高卒だけど、それは財産。もっと公言してアピールしまくったほうがいいですよ」とかね。

天野:
転職の面接でもエライ人と話す場面ってけっこうありますが、そういうときR25世代はどんなことを言えばいいんでしょう…?

田端さん:
意欲的な経営者ほど、対等にディスカッションできる人を求めてる。もっといえば、“ちゃんとしたディス”を求めている。

なぜなら、創業オーナー社長と会社の経営陣っていうのは、倦怠期の夫婦みたいになってることが多いからさ。

天野:
倦怠期の夫婦?



田端さん:
たとえば前澤さんって、いろいろと賛否両論を起こす仕掛けをやるじゃない。「ZOZO ARIGATO」(※3)とか。

そういうとき、まわりはいろいろ意見を言うんだけど、最後は前澤さんが“華麗にスルー”して決行しちゃうわけよ。


※3 ZOZO ARIGATO…会員登録するとZOZOTOWNで購入する商品が1割引になるサービス。各ブランドから「自社サイトから顧客が流れていってしまう」などの反発があり、開始半年でサービス終了となった

田端さん:
そういうことが3回ぐらい続くと、だんだん倦怠期の夫婦みたいな「もう、好きにやったら?」っていう空気になる(笑)

決して仲が悪いわけじゃないんだけど、「どうせ止めても勝手にやるから」「まあ、結局は前澤さんがつくった会社だしさ〜」っていう雰囲気。

それをわかってるから、意欲がある経営者ほど、フレッシュな人のフレッシュな意見を求めるんだよね。

天野:
へえ…。田端さんも入社後に前澤さんに「これはやめるべきだ」って進言してたんですか?


「え、うーん」

田端さん:
こまごまいっぱいありますね。

でもそういうあたりはだんだん秘密になってくるから…

天野:
たとえば何かないんですか。試しに「一番言えないヤツ」を教えてくださいよ。

田端さん:
いや、隠してるわけじゃないんだけど、記憶が…


ないわけないでしょ。1〜2年前の話ですよ?

天野:
じゃあ…質問を変えます。

「前澤さん個人を有名にする」という話でしたが、具体的にどんなことをされてたんですか?

田端さん:
たとえば、大事なツイートのときは前澤さんから相談を受けて、ツイート内容の添削をしたり、代筆したりしてましたよ。

最初に1億円バラまくときとか、とくに念入りにチェックしました。

天野:
へえええ! あのツイートを添削!

田端さん:
別に俺が“ツイートの承認ボタン”を持ってるわけではないし、文案が丸ごとツイートされるわけじゃないけど、「こうしたらもっとよくなる」みたいなレベルでたくさん意見させてもらったね。

天野:
そして、ZOZOを退社して現在に至るわけですね。

これは僕が思ってるわけではまったくないんですけど…知り合いが「田端さんはZOZOをクビになった」って言ってたんです。これって本当ですか…?


あくまで自分は思っていないというスタイルで質問

田端さん:
別に、どんだけ否定しても言いたい人は言うと思うからクビと思われてもいいけどね。辞めさせられたってことはないし、「自ら身を引いた」って感じですよ。

天野:
「前澤さんという後ろ盾がいなくなって…」みたいな報道もありましたが、実際はどうなんですか?

田端さん:
正直言うと、プライベートブランドの展開がうまくいかないのがハッキリしてきたあたりから、「自分がいる意味がなくなってきたな」と思ってたんですよ。そのビジネスを伸ばすために来たわけだから。

それにくわえて、個人としての収入も本業と同じぐらいになってたから、前澤さんが社長じゃなくなるタイミングは「潮時」だなと思った。

長年サラリーマンをやってて、コンデナストぐらいから、「次が最後のご奉公」と思ってたから“いよいよ満を持して”という感じでフリーになった…っていうのが正解かな。

結論、「キャリアの成功」なんてなかった。

天野:
今日は全編にわたって濃いお話をありがとうございます。

「成功するキャリアのコツ」をいろいろ聞けた気が…

田端さん:
いや、そこね…

僕は成功のコツとかはないと思ってるんですよ。


あれ?

田端さん:
キャリアって、やり直しがきかないから「こうすれば必ずこうなる」と“サイエンスする”ことは無理なんですよ。

仮に俺のキャリアが「成功」だとしても、サンプル数はわずか1。再現性がないでしょ?

天野:
たしかに…「田端さんの話を聞いても、前澤さんのツイッターの添削なんかできるようにならないよな」ってうすうす思ってました。

田端さん:
“キャリアの成功”って40代にも50代にもなって言う人はいるけど、優等生じゃなきゃいけないという呪縛に見えるんだよね。

他人がうらやむキャリアなら成功なのか?って話じゃん。

これも“不適切なたとえ”かもしれないけど、自殺してしまった俳優の方のように「非の打ちどころのない人生」に見えたって、当人は悲観にくれていることだってあり得るよね。



田端さん:
どう考えても間違ってて、まわりから見たら「やめたほうがいい」っていう決断でも、やらざるを得ない“キャリアの選択”は絶対にある

そうなるともう、「俺の人生はこうなんだからいいじゃねえか!」と思えるかどうか。

天野:
たしかに。“どうやったら自分の人生を肯定できるか”っていう話になってくるのか…

田端さん:
R25世代ぐらいだと、まだ他人に与えられた物差しのなかで生きがちだとは思うんだけど、徐々に自分なりの成功の定義、謙虚さの定義を考えるのがいいんじゃないかな。

なんか、最後は急に道徳の教科書みたいになったけど!(笑)




田端さんのキャリアをうかがって思ったのは、彼のキャリアは単なる成功譚ではなく、圧倒的な人間臭さに満ちていること。

なんだかんだ言って人々が彼に注目してしまう理由は、こういう魅力にあるんだろうな。

「俺の人生はこうなんだからいいじゃねえか!」

R25世代の皆さんのキャリアが、こんな“開き直り”に彩られたものになりますように。

新連載「キャリ凸」に、これからもご注目ください!

〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/撮影=森カズシゲ〉

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