12月6日のW杯グループリーグ組み合わせ抽選以降、英国メディアでは「グループリーグ突破は絶望的!」(デイリー・メール紙)と悲観論が渦巻いている。

 抽選会の翌日には、デイリー・ミラー紙が「グループDは文字通り『Death』(死)のD」と打てば、サン紙は「神よ、我々を助けたまえ!」と神頼みに入った。

 それも無理はないかもしれない。「イタリアとウルグアイと同居なんて、ほとんど第1シードの国が2チーム入ったようなもの」(ロイ・ホジソン監督)で、その両チームはいずれもW杯優勝国である。つまり、イングランドを含めてW杯史上初めて優勝経験のある3チームが同グループとなったのだ。当日、中継をしていたBBCのアナウンサーが、思わず「悪夢の抽選結果」と嘆いたのも頷(うなず)ける。

 ちなみに会場でクジを引いたのは、元イングランド代表で、66年W杯の西ドイツとの決勝でハットトリックを決めて初優勝に貢献したレジェンド、ジェフ・ハーストとあって、文句も言えない。ハーストは直後に、冗談半分で「イングランドに再入国できるだろうか?」とツィートしていたという。

 ホジソン監督とともに会場入りしていたFA(イングランドサッカー協会)のグレッグ・ダイク会長が、抽選結果を受けて、悪戯(いたずら)っぽく指で喉をかき切る仕草を見せたことも話題となった。これも、いかにイングランドが厳しいグループに入ったかを表しているといえるだろう。

 イングランドは6月14日にイタリア、19日にウルグアイ、24日にコスタリカと対戦する。元イングランド代表MFで解説者のクリス・ワドルは、イタリアとウルグアイを「手強い相手」だとし、こう続けた。

「ウルグアイは攻撃力があり、イタリアはユーロ2012(決勝トーナメント1回戦で対戦)でのPK戦負けを思い返しても、ゲームプランに優れている。すごく難しいグループに入ったと言えるし、突破するにはジェラード、ルーニー、A・コールらが最大限のプレイをしなければならない。もちろん心情的には勝って欲しいと思っている。ただ、冷静に考えれば勝つのは困難だ。最悪の事態も想定すべきだ」

 また、元イングランド代表FWのアラン・シアラーも、「イングランドの選手はみなW杯で成功を収めたいと思っているだろうが、正直グループリーグを突破できるとは思わないし、突破できると思っている人はそう多くはないはずだ」と、厳しいコメントをしている。

 イタリアには、かつてマンチェスター・シティで怪物と称されたストライカー、マリオ・バロテッリが君臨し、ウルグアイのエース、ルイス・スアレスもリバプールでゴールを量産している。イングランドにすれば彼らの実力は痛いほどわかっている。

 スアレスは今季もプレミアリーグで、シーズン序盤の5試合を出場停止で欠場しながら、16節消化時点で17ゴールと、得点王争いのトップに立つ。「スアレスを誰が止めるんだ? イングランド中を探しても、そんなDFはいないのでは......」と、嘆き節のメディアも少なくない。そして、「最終戦で中米のコスタリカに勝ったとしても、先の2戦で勝ち点を挙げられなければ手遅れになる」(BBC)。

 一方でガーディアン紙は、抽選前にホジソン監督が「最も避けたい」と発言していた高温多湿のマナウス(時差もあり、拠点となるリオデジャネイロから空路で約5時間もかかる)でイタリアと初戦を戦うことも指摘。「最も過酷な地であるアマゾンも引き当てた」と、気候や移動距離の問題が悲観論に輪をかけている。

 ただ、選手の反応はそれほどネガティブなものではない。

 エースのルーニーが「タフなグループだと思う。でも、楽しみだし、W杯が待ち遠しい!」とコメントすれば、MFウィルシャーも「厳しいグループなのは間違いないけど、優勝しようと思うのなら、最高のチームと戦わないといけないじゃないか!」とツィートしている。

 前回南アフリカ大会、英国メディアは、アルジェリア(=Algeria)、スロベニア(=Slovenia)、アメリカ(=Yanks)と同居したことから、対戦相手の頭文字を取ってグループリーグを"EASY(簡単)"と称していた。だが、辛うじて突破はしたものの大苦戦だった。そう考えれば、強豪との対戦が決まり、「かえって選手の気が緩むことなく、高いモチベーションを保てる」(ホジソン監督)ことで好結果につながる可能性もある。

 元イングランド代表MFで、98年W杯では監督も務めたグレン・ホドルは、「厳しいグループに入ったが、準備期間が多く取れる初戦でイタリアと当たれるのはラッキー」「移動距離などを考えれば、今大会はいかに休息を取れるかが勝敗を分けるカギになるだろう」と語っている。

 さらに前出のワドルは「イングランドは懸命にプレイする好チームではあるが、ボール回しに難があり、芝が長いピッチや気候の問題を考えても不利な点が多い。ただ、ボールが持てない分、相手の強さを認めてカウンターに徹すれば、勝機が見えるかもしれない」と、戦い方次第では道が拓ける可能性もあるとしている。

 果たしてイングランドの行く末はどうなるのだろうか。

栗原正夫●文 text by Kurihara Masao