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ゴールデンウィーク、部活を頑張るという人もいると思いますが、教師のパワハラ、不適切な指導は後を絶ちません。顧問の指導の後に自殺した弟。その死を無駄にせず、不適切指導を無くそうと活動する女性の姿を追いました。

【写真で見る】100項目以上ある吹奏楽部の規則を書き留めたメモ

部活の規則は100個以上 弟を苦しめた顧問の“不適切指導”

日本体育大学で、将来、体育の教師や部活の顧問を目指す学生たちへの特別授業が行われました。

講師は、はるかさん(31)。

はるかさん
「2013年に高校1年生だった弟の悠太を自殺で亡くしました。悠太は前日に不適切な指導を受けて亡くなっています」

学生たちの表情は真剣です。

自殺した悠太さんに何があったのか。取材や遺族が起こした裁判の記録から紐解きます。

悠太さんは音楽が好きで、中学校の吹奏楽部に入ります。中学のときの顧問は、こう振り返ります。

中学の顧問
「真面目な一生懸命な子。音楽が心の底から大好き。ほかの子とはちょっと違うくらいのめり込んで」

2012年、高校でも吹奏楽部に入りますが、その様子は中学とは違っていました。

はるかさん
「この吹奏学部には細かい部活の規則がありました。項目は100個以上あり、代々、入部時に先輩が読み上げ、後輩が書き留めて引き継がれるものでした」

悠太さんが書き留めたメモが、死後に見つかりました。

「靴はふまない」
「1年生はバスの中で私語をしない、寝ない」
「先輩のために前の席を空ける」

規則違反を目撃したら顧問に報告するよう求められていた、とはるかさんは言います。これが悠太さんを苦しめることになります。

事実確認もせず先輩の前で“叱責” 「あいつとは関わるな」と孤立させられ…

2026年3月、悠太さんの命日を前に故郷・札幌へ。悠太さんが亡くなった当時、はるかさんは教習所に通っていました。

はるかさん
「弟が『免許取れたら最初に乗せてね』って言ってくれていたので。一緒にドライブしたかったな、絶対楽しんでくれただろうなっていうのは、すごく思います」

2つ違い、仲の良いきょうだいだったという2人。亡くなるまでに何があったのか、はるかさんは聞いていました。

2013年2月、悠太さんは部員2人に部内恋愛をしていたことなどを打ち明けます。

部内恋愛は規則違反です。部員2人が、これを顧問に報告しました。

3月2日、顧問は悠太さんを呼び出します。そして、事実確認もしないまま「女子部員と交際していると嘘を言いふらしている」と決めつけて、こう叱責しました。

「もし自分の娘にそういうことを言われたら、俺なら黙っていない。お前の家に怒鳴り込んでいく。名誉毀損で訴える」

指導は、先輩部員4人の前で行われました。そして顧問は、部をやめたくなければ「他の部員に一切メールをするな」と命じたと言います。

悠太さんは帰宅後、ひどく焦った様子でした。

はるかさん
「私は『部活行かなくていいんじゃない』と言いました。その言葉に悠太はあわてたように、『明日は絶対行くから。行かないと本当に辞めさせられちゃうから』と何度も言い、家族まで悠太の部活を奪うようなことはできませんでした」

部活は、悠太さんの“全て”だったのです。

しかし3月3日、登校した悠太さんは、なぜか部活に顔を出しませんでした。悠太さん抜きで始まった部活で、顧問は部員にこう言います。

「これであいつはもう駄目だな。今後は一切関わらないこと」

悠太さんはその頃、学校を出て、地下鉄の駅へ。親友だった部員に「部活お疲れさま。結局、電話はなかったね」とメールして、自殺しました。

親友は2年後、はるかさんにこう打ち明けたといいます。

はるかさん
「『僕が一番悪いんです。僕さえ連絡とっていれば、亡くならなかったと思うんです。連絡とるな、関わるなと言われて…』判断がもう当時、わからなくなっていたっていうのを後で教えてくれて」

遺族は2016年、学校側に自殺の責任を問い、提訴。その4年後、札幌高裁は「顧問の指導は不適切で、自殺はその指導を契機に生じた」と指摘したものの、指導だけが原因であるとは言えず、自殺を予見することは困難だったとして、訴えを退けました。

中学時代の恩師は、こう話します。

中学時代の顧問
「要点を伝えれば、あの子はちゃんと反省してすぐ直せる子ではあったんですよね。『一緒に、もう一回頑張っていこうな』。その一言でもあれば、救われたと思うんですよね」

「言い分を聞かない」「面前で叱責」 遺族が導き出した“子どもを死に追いやる7つの指導例”

はるかさん
「大声で怒鳴られたり威圧的な言動をされたことがある方は、手を挙げてみていただけますか」

はるかさんがあげた不適切指導の具体例に、大勢の手が挙がりました。

はるかさんは、指導後に亡くなる、いわゆる“指導死”の遺族会「安全な生徒指導を考える会」を作って事例を分析。子どもを死に追いやる7つの指導の例を導き出しました。

▼威圧的、感情的な指導
▼言い分を聞かず思い込みで指導
▼組織的な対応をしない
▼他の生徒の面前で叱責
▼不安感や圧迫感与える場所で指導
▼他の生徒に連帯責任を負わせ、本人に負担感や罪悪感を与える
▼適切なフォローをしない

これらは2022年、文科省の生徒指導提要にも掲載されました。

こうした指導のほとんどを経験したという吉村真都さん(21)。5歳のときから水泳を続けてきました。

吉村真都さん
「先生に何と言っても聞いてもらえず、自分だけ一方的に怒られる。みんなの前で叱責するみたいなことはよくあって」

吉村さんは、大学2年のときにけがをして選手を引退、水泳部でコーチをしています。将来は体育の教師になりたいといいます。

吉村真都さん
「どなりつけられたところで、『やばい』と思うかもしれないですけど、特に自分の何かが変わることはなかった。生徒を威圧的に動かすのではなくて、じっくり時間をかけて指導していくことが大切かなと思いました」

吉村さんは、講義を終えたはるかさんに思いを伝えました。

吉村真都さん
「忙しい中や時間が無いときほど、考えが至らぬまま怒ってしまう場面をよく見る。職場の先生たちがしっかり助け合う」

はるかさん
「『自分だけで解消をしないといけない』と思ったら、『いいから黙れ』みたいなことになってしまう。1人で完璧にできることが素晴らしいのではなくて、相談できるのが素晴らしいなと思っているので、頑張って下さい」

はるかさんらは、不適切指導がどのような場面で起こりやすいのかなどを把握するため、子どもたちや教職員へのアンケート調査を、2026年度中にも行うということです。

悩みがある方・困っている方へ 電話やSNSなどでの相談窓口

悩みや不安を抱えて困っているときには、電話やSNSで相談する方法があります。一人で抱え込まず相談してみてください。

厚生労働省のホームページや「まもろうよ こころ」と検索すると、電話やSNSなどでの相談窓口を調べることができます。

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