神の要素が抜けると「昔話」になる? 6万を超える昔話のルーツとは【眠れなくなるほど面白い 図解 民俗学の話】
昔話の民俗学 ① 「昔話」とは何か?
カミを迎える特別な日に語られた
「昔話」は、民衆の間で語られてきた民話(民間説話)の一種です。民話には、ほかに「伝説」「民間神話」「世間話」などがあります。
昔話の特徴の1つは、時間も空間も特定しないことです。また、登場人物も「おじいさん、おばあさん」のように語られ、特定されていません。
「場所や時代が特定されている昔話もあるのでは?」と思うかもしれませんが、それは「伝説」に分類されます。昔話と伝説の違いは、場所や時代、登場人物などが特定されているか否かにあるのです。
民俗学者が集めた日本の昔話の総数は6万を超えます。民俗学者の稲田浩二氏は、それらを「本格昔話」「動物昔話」「笑い話」「形式話」の4種類に大別しました。
また、柳田國男は、「各地で語られる昔話は、もともとは神話に近い長大な物語が原型で、それが断片化したもの」という仮説を立てていました。そして、原型との距離が近い昔話を「完形昔話」、原型から遠い断片化の進んだ昔話を「派生昔話」と呼んでいます。
民俗学では、宗教儀礼の際に歌われていた「神歌」が散文化して神話となり、さらに神の要素が抜けると昔話になると考えています。そのため、かつて昔話は、軽い「笑い話」は別として、基本的にはカミを迎える特別な日(ハレの日)に語られるものでした。
日本昔話の分類
むかし語り(本格昔話)
動物昔話
笑い話
形式話
昔話を何話も語った語り手が、語りを終えるときに挿入する短い話
※稲田浩二『日本昔話通観 第28巻 昔話タイプ・インデックス』(同朋舎出版)をもとに作成
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 民俗学の話』監修:島村恭則
【監修者紹介】
島村恭則(しまむら・たかのり)
民俗学者。関西学院大学社会学部長・教授。1967(昭和42)年、東京都生まれ。筑波大学大学院博士課程歴史・人類学研究科単位取得退学。文学博士(筑波大学)。国立歴史民俗博物館教官、韓国・翰林大学校客員教授、東京大学客員教授などを歴任。日本各地で民俗学調査を行うとともに、韓国・中国での調査・研究も行う。
近年は、世界民俗学史をふまえた民俗学理論の研究、とくに民俗学を国際的・学際的な「ヴァナキュラー文化研究」として再編成する議論を展開している。
著書に『みんなの民俗学 ヴァナキュラーってなんだ?』(平凡社)、『民俗学を生きる ヴァナキュラー研究への道』(晃洋書房)、『これからの時代を生き抜くための民俗学入門』(辰巳出版)、『昔話の民俗学入門 民間伝承の秘密を読み解く』(創元社)、編著に『現代民俗学入門 身近な風習の秘密を解き明かす』(創元社)などがある。

