この記事をまとめると

■フォルクスワーゲンが2025年通期決算を発表したがよくない数字であった

■フォードとフォルクスワーゲンはオールドブランドとして見られている傾向にある

■巻き返すには人員削減以外のコストカットなども必要という声が多い

フォルクスワーゲンに不調が続く

 2026年3月10日、VW(フォルクスワーゲン)グループ(以下VW)が2025年通期決算を発表した。それによると、純利益は66億7300万ユーロ(約1兆2200億円)となり、前年比37.8%減(営業利益では53.5%減)という内容に世界に衝撃が走った。報道によると、このような結果となったおもな理由として、アメリカでのいわゆるトランプ関税の影響の大きさが挙げられているようなのだが……。

 ATグループ(トヨタ系正規ディーラーなどを傘下におくグループ)傘下の愛知トヨタWEST株式会社は2025年6月に、2026年3月をもってVW事業を終了し、店舗を閉鎖することを発表した。2026年3月末には愛知県内にある5店舗が閉鎖される予定であるという報道が、本稿執筆中もあった。また、VWディーラーから中国のBYDオート系ディーラーへ転業するといったケースも目立っているようである。

 ただ、JAIA(日本自動車輸入組合)の統計によると、VWの2025暦年(2025年1月から12月)締めでの年間販売台数は3万1031台(前年同期比136.2%)となっていた。しかし10年前まで遡り、2015暦年の年間新車販売台数をみると5万4766台、2014暦年では6万7438台を販売している。2025暦年の年間販売台数を2015暦年と比べると約57%、2014年と比べると約46%となっている。この頃(2014年)はブランド別の輸入車販売台数で1位にもなっていた。

 VWは2015年にディーゼルエンジンの排ガス問題(規制逃れ)であるディーゼルゲート事件が発覚している。再びJAIA統計をみると、事件発覚後、年間販売台数で5万台を割り込む年がほとんどとなり、さらに新型コロナウイルス感染が拡大した2020年以降は4万台を割り込むようになってしまった。

 日本国内だけをみれば、ディーゼルゲート事件の発覚により、それまで代々VW車を乗り継いできたような顧客の流出、つまり優良顧客離れが顕著となり、かわって、「スキャンダルを起こしたのだからたくさん値引きしてね」、といった足もとを見るような顧客の流入もごく一部ながらもあったと聞いている。それでも抜けた優良顧客のぶんを補うところまでには至らなかったようで、販売減が目立ってきたものと筆者は見ている。

フォルクスワーゲンはもう古いブランドか

 世界市場に目を向ければ、まず世界的なクロスオーバーSUVブームに乗り遅れたことが大きかったと考えている。トゥアレグやティグアンといったモデルはラインアップされていたのだが、コンパクトクロスオーバーSUVが世界的に注目されるなか、新規投入がスムースに進まず乗り遅れてしまったように見ている。T-RocやT-Crossなどが市場投入されたのだが、あくまで私見を述べさせてもらえば、良くも悪くもVWらしい真面目なクロスオーバーSUVに仕上がっており、それを好むVWファンには受け入れられるのかもしれないが、筆者としては真面目過ぎるSUVに物足りなさを感じていた。

 そしてBEV(バッテリー電気自動車)でも出遅れ感は否めなかった。現状ではBEVにはやや逆風が世界的に吹いているものの、とくに熱心だった欧州系ブランドのなかでは、VWグループ内のアウディはいち早くラインアップを強化したものの、VWブランドやポルシェブランドではアウディほどのスピード感をもったラインアップ強化はできなかったように見えた。

 とくにVWブランドは、日本国内ではID.4とID.Buzzのみ。海外でもこれにID.3がラインアップされるかされないか程度となっている。新興国でもID.Buzzをラインアップするところがあるが、その前に「コンパクトなBEVが欲しい」と国内でのVWディーラースタッフから聞いたことがある。

 日本では「オールドメディア」が新語・流行語大賞を受賞したが、自動車ブランドにもオールドブランドというくくりができつつあるように感じている。その筆頭がVW、そしてフォードだと考えている。南カリフォルニアで、VWブランド車はラインアップに古めかしさが目立ち、若い世代からは受け入れられなくなっていると聞いたことがある。

 また、少し前に南カリフォルニアでレンタカーとしてフォード・エスケープを運転する機会に恵まれた。エスケープはコンパクトクロスオーバーSUVに属するモデルであり、フォードブランドでも販売主軸車の1台となっている。

 借り出す際にスマホと車両のブルートゥース接続を試みたのだが、まず操作手順が複雑でわかりにくいことに閉口してしまった。その前にGM(ゼネラルモーターズ)のシボレーブランド車を運転していたのだが、こちらは「こうかな?」と感覚で操作するだけですぐに接続できたので、フォード車の難解さはアメリカ車だからというものではないようだ。四苦八苦して接続したあと音楽を聴きながら運転していると、今度は突然システムがフリーズして音楽が聞こえなくなった。フリーウェイ走行中だったので、いったん一般道へ降りて路外に駐車し、エンジンを再始動(再起動のようなつもりでやった)させたら、再び音楽がかかるようになった。個体差であることを信じたいが、いまどきの新車でコネクティッド系にて走行中にシステムがフリーズしたというのは、今のところこのケースだけである。

 VW車もコネクティッド系の操作での不満が多いと聞いている。このあたりが苦手なのかなと思わせるところで、すでにオールドブランドのイメージをプンプン感じてしまう。VWはさっそく2030年までにグループ全体で5万人の人員削減を行う方針を明らかにしており、コスト削減も強化していくようである。

 ただ、現状の不振の要因がトランプ関税など外部にあると主張しているところをみると、まだまだ混迷の時期が続くのではないかとも見ている。苦手な東南アジア市場対策を見ていてもまだまだという印象を受けるし、コスト削減以外にもやるべきことは山積しているようにも感じている。