【現代ビジネス編集部】産経新聞が大手町から「都落ち」の衝撃…移転先に決まった「意外な街」の名前
フジテレビ対村上世彰氏「攻防」の裏で
大手新聞社の本社が集まる東京・大手町エリア。五大紙の一角である産経新聞社も、国有地の払い下げを受けて以来、約70年にわたってこの地に踏みとどまってきた。丸ノ内線大手町駅の「サンケイ前」という副駅名は、同社の社員の誇りでもあったが、ついにその聖地から去ろうとしていることがわかった。
「本社が移転するらしい」―― 。そんな不穏な噂が社内を駆け巡ったのは、今年3月初旬のことだった。同社の中堅社員が重い口を開く。
「我々はフジサンケイグループの中核を担う不動産会社『サンケイビル』が所有する東京サンケイビルの8フロアを、身内価格の格安賃料で借りてきたと聞いています。しかし、新聞離れによる経営不振は深刻。社内では以前から『大手町の一等地に居座るのは、もはや身の丈に合っていないのではないか』という声が出ていました」
3月中旬になると事態は急速に具体性を帯び始める。具体的な移転先として、サンケイビルが系列の不動産投資信託法人から買い取ったオフィスビル『品川シーサイドTSタワー』の名前が浮上したのだ。
「折しも、物言う株主で知られる村上世彰氏が関わる投資グループが、親会社であるフジ・メディア・ホールディングス(FMH)に対し、サンケイビルの分離・売却を迫っていた。社内は『いよいよ大手町から出ていくことになるのか』とざわつきました」(同前)
正規の賃料を支払う余力はない?
今回の「本社移転」の背景には、FMHに対する村上氏側の強烈な揺さぶりがあるという。中堅社員が続ける。
「FMHは2012年、サンケイビルを完全子会社化しましたが、社員の多くは優良企業のサンケイビルを内部に抱え込むことで本業である『報道』の不採算を補ってくれている、と考えていました。それは他社さんにも見られる構図なのですが、サンケイビルの価値を村上氏に見抜かれたのではないかと感じています。実際、村上氏側はサンケイビル買収の意向を明かし、FMH株を買い増すなど、経営権を揺るがす姿勢を見せました。
結局、FMHは村上氏側の要求を事実上受け入れ、『外部資本導入』という言い回しで売却の方針を明らかにした。そこで浮上したのが、我々産経新聞の存在です。サンケイビルが再上場を目指すとなった場合、フラッグシップである東京サンケイビルに、低迷する産経新聞が格安の賃料で入居している状態は、株主への説明がつかない『不適切な取引』とみなされかねない。
一方で、産経新聞には正規の賃料を支払う余力はないと考えられます。そこでサンケイビル側は、自社所有の品川の物件を、低賃料で入居できる移転先として提示したのでしょう。3月に入り、サンケイビルが産経新聞やサンスポに急激に広告を出稿し始めたのも、『産経が移転費用を捻出するための手切れ金代わりの資金援助ではないか』とささやかれています」
フジテレビと村上氏の「攻防」に産経新聞が巻き込まれた形ともいえるが、社員からはフジや村上氏を恨む声は聞こえてこない。
「我々はフジサンケイグループの『お荷物』だったという認識があります。これまでフジテレビに援助してもらい、おんぶにだっこでやってきた。その間に自立できなかった我々が悪いのであって、恩人であるフジテレビを責めることなどできません。来るべき時がついに来てしまった。ただそれだけです」(同前)
後編記事『「高額な定期代を払えるのか」…「本社移転」に産経新聞社員が漏らした本音』につづく。
