65歳までしっかり働くぞ!…定年退職日当日まで働く“マジメな会社員”が「80万円も損する」という理不尽【税理士が「もっともお得な退職日」を断言】
60代の会社員は、「退職するタイミング」によってもらえるお金に差が生じることをご存じでしょうか。なかには、退職日がたった数日違っただけで80万円以上損してしまう人も……。その理由と、「もっともお得な退職のタイミング」について、税理士・公認会計士で税理士法人グランサーズ共同代表の黒瀧泰介氏が解説します。
65歳よりも「前」か「後」かで大きく変わる
定年退職を目前に控えた会社員にとって、退職の「タイミング」は思った以上に重要です。特に失業保険(雇用保険)の給付内容は、65歳を境に大きく変わります。この違いを知らないまま退職すると、数十万円〜最大90万円もの損失が生じる可能性があるのです。
■65歳以上で退職した場合
65歳以上で退職した場合には、「高年齢求職者給付金」が支給されます。これは一時金形式で、勤続年数が1年以上の場合は50日分、1年未満の場合は30日分しか支給されません。一度受け取ったらそれで終了です。追加の給付はありません。
■65歳未満で退職した場合
一方、65歳の誕生日の前日までに退職すれば、「基本手当(一般的な失業保険)」を受け取ることができます。
基本手当は勤続年数に応じて給付日数が変わり、勤続年数が長ければ長いほど手厚くなります。
【基本手当の給付日数】
・勤続年数1年未満……90日分
・勤続年数10年以上20年未満……120日分
・勤続年数20年以上……最大150日分
また、28日ごとに分割して支給されるため、就職活動をしながら長期間にわたってサポートを受けられる点も大きなメリットです。
同じだけ働いても、もらえる金額が最大3倍違う
たとえば、退職前の給与が月30万円の場合、基本手当の1日あたりの金額は約6,000円です。
・65歳以上で退職した場合……約30万円(50日分)
・65歳未満で退職(勤続20年以上)した場合……約90万円(150日分)
わずか数日の違いで、60万円の差が生まれます。給与が高い人や勤続年数が長い人であれば、この差額はさらに広がり、80万円を超えるケースもあります。
「会社には恩もあるし、定年退職日までしっかり働くぞ!」と、65歳になるまで真面目に働く会社員ほど損してしまうため、“理不尽な仕組み”という見方もあるでしょう。
政府の「年金があるからいいだろう」という思惑
なぜたった数日の違いでこんなにも差が生じるのか。これは、制度設計の考え方の違いによるものです。
国は、65歳以上の人については年金の受給資格があることを前提としています。そのため、「年金がもらえるのだから、失業保険は少なくていいだろう」と、雇用保険側の給付が手薄になるよう設定されているのです。
しかし現実には、年金だけで生活するのは厳しいという人も多いでしょう。特に、厚生年金の加入期間が短い人や、中小企業で長年働いてきた人は、年金額が少なくなる傾向があります。
それなのに失業保険まで手薄になると、老後の生活が一気に苦しくなるリスクが高まるのです。
最も得する「退職のタイミング」は?
年齢の計算については、関連する法律と民法の期間計算のルールから、実務上「誕生日の前日」に年齢が加算される仕組みになっています。
よって、65歳の誕生日の2日前までに退職すれば、65歳未満として基本手当(最大150日分)を受け取ることが可能です。
たとえば誕生日が4月9日の場合、4月7日までに退職すれば「65歳未満」の扱いとなり、基本手当が受け取れます。
4月8日以降に退職すると、すでに65歳扱いとなり、高年齢求職者給付金(50日分)しか受け取れなくなるため要注意です。
なお、多くの企業では、就業規則で定年退職日を「誕生日の前日」や「誕生日の属する月の末日」としているケースが一般的です。
したがって、退職を検討する際は就業規則を確認し、必要であれば半年前〜3ヵ月前までに会社に相談して、退職日を調整することを強くおすすめします。
1日ズレると最大90万円も損…退職日は慎重に決めて
65歳の誕生日を境に、失業保険の給付内容は劇的に変わります。わずか数日の違いで、最大80万円超の差が生まれるかもしれない、この事実を知っておくことは非常に重要です。
定年退職を控えている人は、誕生日の2日前までに退職できるかどうか、会社と事前に調整してみてください。知っているか知らないかで、手元に残るお金が大きく変わります。
定年後の生活設計をより安心で豊かなものにするためにも、退職を控える人は事前にしっかり準備しておきましょう。
黒瀧 泰介
税理士法人グランサーズ共同代表/公認会計士・税理士
