投資目的の若者も! メルカリより「街の質屋」が大活況…絶好調でも店舗が4割減ったワケ
投資目的? 若者の質屋通い
金や銀など貴金属価格が高騰するなか、「街角の質屋さん」が活況だ。信用調査会社の「東京商工リサーチ(TSR)」によると、売上高と最終利益を5期連続で比較が可能な質店42社の売上高合計が、3期連続の増収増益を記録した。’24年度の売上高は前年度比5.4%増の179億1100万円、最終利益は同30.4%増の10億5500万円に上る。
現場では今、何が起きているのか。全国280店舗以上で質・買い取り事業を展開する『大黒屋』の「質麻布十番買取センター」(東京都港区)を訪ねた(※大黒屋の’25年3月期売上高は479億円。前述のTSR調査42社には含まれていない )。
業界歴20年以上の小林新マネージャーは、現場の熱気をこう語る。
「利用される方が増えており、市場価格の上昇もあって取扱単価も上がっています。質と買い取り業務で半々くらいになります」
かつては呉服やゴルフ会員権も扱われることがあったが、現在は貴金属やブランド品、宝石、時計などにシフトしている。利用者の男女比はほぼ半々であらゆる年代が訪れるが、最近は特に若年層が増加傾向にあるという。
「金の価格上昇に興味を持った方が、持っている品物がいくらくらいになるのか、本物なのか聞きに来て、そのまま預けたり売る方も増えています」(小林氏)
同店が富裕層の多い六本木ヒルズに近いエリアにあることも影響しているのだろうか 。小林氏は利用者の目的について次のように明かす。
「持っている品物を現金化して、その資金を投資にあてる方もいらっしゃるようです。金とかロレックスの時計など、値落ちしない品物を選ばれている方が多い印象です。若い利用者も少なくありません」
フリマサイトより質屋が選ばれるワケ
昭和の時代、質屋といえば「目先のお金に困った人が人目を忍んで利用する」というネガティブなイメージもあった。しかし、その実態は大きく様変わりしている。
TSR情報部の坂田芳博氏は、現代の質屋事情を次のように指摘する。
「昔の質屋さんはお金に困った人が利用しているイメージがありましたが、今は利用者が不用品を処分するなど、買い取り業、リサイクルショップに近くなっているのではないでしょうか」
近年はネットの中古品売買サイトを使えば、個人同士で手軽に取引ができる。それでもあえて質屋が選ばれる背景には、プロならではの「目利き」と「安心感」がある。高価な品物をネットで売買する場合、確実に入金されるか、後からクレームがこないか、あるいは本当に本物なのかといった不安が常につきまとう。
坂田氏は、質屋の存在意義をこう強調する。
「高額な品物になると、専門家が見極め、正しく評価してくれます」
利用者は手持ちの品物を預けて査定を受け、お金を借りることができる。貸付期間は原則3ヵ月で、期限内に元金と利息を払えば品物が手元に戻ってくるシステムも、安心感に繋がっている。
儲かるのに店舗が激減?
業績好調でニーズも高まる質屋業界だが、意外なデータがある。TSRが警察庁の許可状況を調べたところ、’03年に4119店舗あった質店(質屋営業)は、’24年には2428店舗へと約4割も激減しているのだ。
TSRはこれについて、他の買い取り業者やリサイクルショップの成長に加え、経営者の高齢化による後継者難が原因だと分析している。
さらに、新規参入のハードルが高いことも一因だ。営業には都道府県公安委員会の許可が必要であり、実績や資本に加え、厳重な「質蔵」の設置が義務付けられている。大切な預かり品を保管するため、「蔵」は設計段階から特別な防犯・防火仕様にしなければならない。チェーン展開する場合でも店舗ごとに「蔵」が必要で、預かった品物の勝手な移送も禁じられている。
前出の大黒屋の小林氏は、街の個人質屋が減少する背景をこう推測する。
「自宅の敷地内で個人営業されていることが多く、高齢化や、最近の防犯リスクの問題などから、辞められていく方が増えているのかもしれません」
偽物を見抜くプロの目利き
厳しい環境下でも生き残るためには、質屋の生命線である「目利き」の能力を日々磨き続けるしかない。次々と登場する新製品や精巧なコピー品、人工ダイヤモンドなどを見抜く力が求められるからだ。偽物であれば評価額はゼロになってしまう。
「実際に目で見て査定することが大切です。質屋は預かった品物をしっかりと管理することも大切なので、取り扱えるだけの知識と経験も必要になります」(小林氏)
物価高の昨今、不用になった高額品を処分する手段は多様化したが、プロの査定を経る質屋の信頼感は依然として高い。街角の質屋さんが持つ「確かな目」が、あらためて見直される時代になっている。
取材・文:浅井秀樹
