金利上昇の返済不安を「攻め」に転換する…住宅ローンを抱えながらNISAの弱点を補い、短期間で資産を増やす「2026年の不動産投資戦略」とは【FPが解説】
日銀による金利政策の転換が現実味を帯びるなか、変動金利型ローンの返済負担増は、多くの世帯にとって看過できない懸念事項となっています。こうした逆風下にあって、住宅ローンという固定費を抱えつつも、あえて不動産投資を家計を守るための「第2の収入源」として選択する動きが加速しています。果たして、2つのローンを併用する戦略に勝機はあるのか。1級ファイナンシャル・プランニング技能士の川淵ゆかり氏が、その妥当性と具体的な収支シミュレーションを詳しく解説します。
住宅ローンを抱えながらの不動産投資は可能か?
はじめに、現在住宅ローンを返済している人が不動産投資を始めることは、仕組みのうえでは十分に可能です。
マンション投資などの不動産投資を行う際は、住宅ローンではなく、不動産投資ローンを利用することになります。つまり、住宅ローンでマイホームを確保しつつ、不動産投資ローンで賃貸用マンションを取得して家賃収入を得る、という二段構えの運用が成立するわけです。
ただし、こうした運用を進めるうえでは、以下のメリットとデメリットを正しく理解しておく必要があります。
返済能力が必要
住宅ローンと不動産投資ローンの併用において、最も問われるのは「返済能力」です。投資用ローンの返済は基本的に家賃収入から賄われますが、もし空室や修繕などで赤字に陥った場合、自己資金や給与所得から補填しなければなりません。万が一、住宅ローンの返済にまで影響がおよぶ事態は避けるべきでしょう。
そのため、不動産投資を検討する際は、キャッシュフローがしっかりと黒字化できるかどうかの厳密な確認が不可欠といえます。
“守り”の新NISA、”攻め”の不動産投資
投資というと、やはり税制優遇が魅力の新NISAやiDeCoが人気ですが、これらには投資枠に制限がある点がネックです。また、比較的長期の運用期間が必要となり、成果を実感できるまでに長い時間がかかってしまう傾向があります。
特にここ数年は物価の上昇が目立ち、資産運用においてもインフレ対策を意識した運用が求められます。ここで、不動産投資を組み合わせることができれば、資産形成のスピードと安定性の両立が期待できるでしょう。
不動産は物価の上昇とともに価値が上がりやすいため、安定した家賃収入(インカムゲイン)だけでなく、チャンスを生かした大きな売却益(キャピタルゲイン)も狙えます。なにより、新NISA・iDeCoは自己資本だけで始めますが、不動産は不動産投資ローンという他人資本を取り入れることにより、スタート時の「元手」を大きくすることができるため、大きな利益を狙うことが可能です(※これを「レバレッジ効果」といいます)。
不動産投資の前には必ずシミュレーションを
不動産投資は、投資前のシミュレーションが成否をわけます。最終的に黒字にするためには、家賃設定や維持コスト、そして売却のタイミングまで見据えた計画が必要です。一例として、都心の新築ワンルームマンションを購入し、6年後に売却した場合のシミュレーションを紹介します。
購入金額:3,500万円
自己資金:500万円
不動産ローン借入額:3,000万円(金利2.0% 35年ローン(元利均等返済))
家賃収入:10万5,000円/月(都心相場)
管理費・修繕積立金・固定資産税など支出:年間約40万円
ローン返済:9万9,379円/月
このケースでは、毎年の持ち出し費用として約33万円が発生します。このように、家賃収入だけでは足りないケースも少なくありません。不動産投資を始める場合は「持ち出し」を許容できる家計のゆとりが前提となります。
6年後の売却益シミュレーション(概算)
この物件を6年後に4,200万円で売却できた場合の収支を計算してみましょう。
売却価格:4,200万円
ローン残債:約2,600万円
売却益(税引前):約1,600万円
譲渡所得税(長期譲渡):約325万円(税率20.315%)
その他売却諸費用:約135万円
当初自己資金:500万円
年間の持ち出し費用合計:約200万円(約33万円×6年)
手取り利益:約440万円
シミュレーションでは、6年後に約440万円の利益を出す結果となりました。
他人資本(不動産投資ローン)を活用したレバレッジ効果により、短期間で数百万円の利益を出すことも可能になるのが、不動産投資の魅力です。もちろん、毎年の持ち出し費用や売却できる価格によっては、短期では売却せずに家賃収入を得続けるという選択肢もあります。状況によって臨機応変な判断をするためにも事前にしっかりとシミュレーションを行い、キャッシュフローを確認し続けなければなりません。売却のときまで結果(この不動産投資は成功だったのか?)がわからないのもこの投資の特徴です。
住宅ローン返済中の人が不動産投資ローンを利用する際の注意点
すでに住宅ローンを利用している人が不動産投資を行う場合、いくつかの注意点があります。
前述のシミュレーションのとおり、家賃収入だけでは維持ができず、自己資金からの持ち出しが必要な場合も多いもの。不動産投資も、あくまで「自己責任」の投資です。勧められるままに始めてしまうと、「失敗した!」と感じたり、住宅ローンの返済が楽になるどころか困窮してしまったり……。そんな事態に陥るケースもあり得ることを知っておきましょう。
特に現在のような金利上昇局面では、変動金利型ローンを選んでいると住宅・投資用両方の返済額がアップするリスクがあるため、金利動向には常にアンテナを張っておかなければなりません。
不動産投資における税務上の仕組み
不動産投資には、所得税や住民税の計算において「減価償却費」と「損益通算」を活用した仕組みがあります。「減価償却費」とは、建物の購入費用などの高額なコストを一度に経費にするのではなく、数年にわたって少しずつ経費として計上する会計処理のこと。実際の手出し(支出)を伴わずに会計上の不動産所得を赤字にすることができるのが特徴です。なお、土地は減価償却の対象外ですのでご注意ください。
「損益通算」とは、不動産所得が帳簿上で赤字になった場合、その赤字を給与所得などの本業の黒字所得から差し引くことができる制度です。結果として課税所得を減らす効果が期待でき、納める所得税・住民税の額が少なくなる場合があります。特に年収が高い層では節税効果が顕著になる傾向がありますが、所得水準に応じてメリットは変わります。
節税額の一例
・課税所得700万円 → 赤字100万円で約30万円の税負担軽減の可能性
・課税所得1,000万円 → 赤字200万円で約76万円の税負担軽減の可能性
また、相続税対策としても不動産は有効です。不動産は現金と比べて2割〜3割相続税評価額が低く抑えられる傾向があり、賃貸用不動産は借家権割合が適用され、さらに評価額を抑えられる可能性があります。
※実際の節税額や適用条件は、個人の所得状況や物件により異なります。具体的な税額計算や申告については、必ず所轄の税務署または税理士にご相談ください。
インフレリスクが現実味を帯びるいまこそ、資産形成の見直しが必要です。「守り(NISA・iDeCo)」だけでなく、「攻め(不動産投資)」を組み合わせることで、資産形成を加速できます。無理のない範囲で行い、専門家を交えたシミュレーションでキャッシュフローを確認しながらチャレンジすることが成功の鍵です。
川淵 ゆかり
川淵ゆかり事務所
代表
