最近のマツダ話、MX-30ロータリーEV後編【日本版編集長コラム#49】
ようやく実車の登場
マツダが2012年のRX-8生産終了以来途絶えていたロータリーエンジン(以下RE)を、バッテリーを充電するためのレンジエクステンダーとして2023年に復活、搭載させた『マツダMX-30ロータリーEV』に1ヵ月ほど乗ることができたという話。前回の壮大なる前置き(思い入れ)に続き、ようやく実車の登場となる。
【画像】そこはかとなく漂うエチュード感?マツダMX-30ロータリーEV 全47枚
今回お借りしたのは『レトロスポーツエディション』で、ボディカラーは『ジルコンサンドメタリック』の2トーン。ちなみにロータリーEVは全てフロントを駆動する2WDのみとなるが、マイルドハイブリッドのガソリンモデルには4WDも用意される。

後編にしてようやく登場した、取材車の『マツダMX-30ロータリーEV』。 平井大介
レトロスポーツエディションは特別仕様で、ブラックで統一されたホイール、ドアミラー、ルーフといったエクステリアと、テラコッタと呼ばれるダークブラウンとブラックを組み合わせたインテリアが特徴。アウトドアが似合うSUVらしさと上質さを兼ね備えたボディカラーがよくマッチしている。
ボディサイズは全長4395mm、全幅1795mm、全高1595mm、ホイールベース2655mmで、車重は1780kg。モーターは最高出力170ps/9000rpm、最大トルク26.5kg-m/0-4481rpmで、8C-PH型と呼ばれるREは72ps/4500rpm、11.4kg-m/4500rpmとなる。価格は500万8300円と、少しお高めだ。
なんといってもMX-30の特徴は『フリースタイルドア』と呼ばれる、センターオープン式の前後ドアだろう。マツダに共通するフロントグリル『シグネチャーウイング』を持たないこと、CXではなくMXという別軸の車名を与えたことからも、これがひとつの挑戦的車種であることが伺える。
デビュー時の取材で聞いたところ、これまでにない新車種を求められたそうで、そこで辿り着いた答えがMX-30だったわけだ。
「さあ、回れ回れ〜」
このクルマが心に響くかどうかは、フロントフェンダーに装着された逆三角形、おむすび形のエンブレムを嬉しく思うかどうかにかかっている。室内でそれがわかるものは特になく、REが起動した時に聞こえてくる音と、メーターに小さく表示されるおむすび型のマークぐらいだ。
その音に関しても、周囲の印象は完全に二分された。「うるさいだけ」と全否定の人もいれば、「おお〜これか〜」と感動する人もいるほどだ。筆者はご想像のとおり後者で、「さあ、回れ回れ〜」とニヤニヤしてしまった。

フロントフェンダーに装着された逆三角形、おむすび形のエンブレム。 平井大介
ノーマルモードで走っているとまずはEV走行となり、バッテリー残量50%を切った46%あたりでREが起動し充電を開始する。EVモードを選べばEV走行のみとなり、チャージモードを選べば強制的に充電が可能だ。
私は自宅に3kWの200V普通充電環境があるのでEVモードを多用したいところだが、メーターのおむすびを見たくて、チャージモードも意外と使用してしまった。そのため正確な燃費や電費は計れていないが、参考までに高速道路中心で200kmほど走行した際は燃費が18.6km/L、電費が4.8km/kWhとなった。
自宅での充電だが、残り37%で満充電まで4時間10分、残り41%で同じく3時30分という表示だった。カタログスペックは20→80%が約3時間50分だから、恐らくその通りの数値がでていた模様。
ひとつ気になったのは、充電中に冷却用の電動ファンが回り続けていること。これは強制オフもできるのだが、酷暑の期間だったのでそのまま使用した。しかし、住宅街であり、特に夜中は近所が気になってしまった。
裏地にこだわるみたいな話
街中での乗り味は、車重のせいか足が硬めで、少しどたばた感がある。また、これは相性の問題だが、シートも腰と太ももの張りが気になった。室内でいうとエアコンの温度調整が左右独立式でないのが実に惜しく、せっかく液晶パネルなのに……と思ってしまった。
一方で、筆者の自宅がある静岡県東部の街中では、ちょうどいいボディサイズだった。いい意味で目立ち過ぎない、シックなボディカラーとインテリアの組み合わせも良好。体を回り込ませずにリアシートへ荷物を放り込めるのも利点で、2名での使用ならいいパッケージだと思う。

『フリースタイルドア』と呼ばれる、センターオープン式の前後ドアを採用。 平井大介
パドルで2段階調整ができる回生ブレーキは、効きが自然でちょうどよい塩梅。ちなみにマツダは、最後はドライバーにブレーキを踏ませるという考え方の元、「ワンペダルはやらない」とMX-30EV取材の際にエンジニアが明言していた。
さて、MX-30の販売が成功かと聞かれれば、それは現段階ではノーだろう。いくつかネガを書いてしまったが、新しいことに挑戦する気持ちや姿勢が強すぎて、「こういうクルマを作りたい」というストレートなメッセージが伝わってこないのが、そのまま販売台数に反映されている気がする。REを搭載するのも、裏地にこだわるみたいな話になってしまうのだ。
そこはかとなくエチュード感
ここで思い出したのは、1980年代後半にファミリアをベースとしたスペシャルモデル、『エチュード』だった。本流に対するひとつのハズシは、いつの時代も存在するもので、実はそういうクルマが大好物な筆者は、当時エチュードも好きだった。免許を持っていたら、購入検討リストに入っていたかもしれない。
今回MX-30ロータリーEVに乗っていていろいろと気にはなったが、「このクルマ何だか好き」と思ったのはどこか『エチュード感』があるからで、そういう目線で見るとスタイリングもどこか似ているではないか。だから好きなのか!

いろいろと気にはなったが、「このクルマ何だか好き」と思った。 平井大介
販売面だけを考えれば、REを組み合わせたPHEVを展開するのはCX-5やCX-30が最適だったように思う。しかしそう結論付けるのは時期尚早で、MX-30における真の成果や意義は、判断を数年後まで待つ必要があるだろう。
そしてマツダの話、これでは終わりません。次回に続きます。
