鹿島は憧れのクラブ。加入の決め手は他にもある。スカウトの言葉に林晴己の心は揺さぶられた。明治大でも強烈に感じる「常勝軍団のエンブレムの重さ」
1年半の無敗記録を止められた試合後、4年生たちは西が丘の片隅で長時間に渡る緊急ミーティングを開いた。その話し合いが終わり、ミックスゾーンに姿を現わした林晴己に話を訊くと、神妙な面持ちでこう口を開いた。
「明治として、4年生として、責任を感じています。この負けは決して偶然ではなく、起こるべくして起こったからこそ、もう一度、自分たちを見つめ直そうと。もちろん池上寿之監督も『どこかで終わりは来る』と言ってくれていましたし、僕らのプレッシャーも試合ごとに重くなっていたのも事実。だからこそ、この負けを無駄にしないように、最後は明治が1位になるための負けにしたいと思いを共有しました」
大学進学の際に筑波大の練習に参加するも、声はかからず。熱心に誘ってくれた明治大で「筑波大を倒して優勝してプロになる」という決意を持って大学サッカーに挑んだ。
1年時からそのドリブルは猛威を振るい、サイドアタッカーとしてメキメキと頭角を現すと、常勝軍団の中で欠かせない攻撃のファクトとなった。
初速の速さ、トップスピード時のボールコントロールの安定感。スピードを止められてもテクニックで剥がせる力と、ゴール前に飛び込んでいける得点感覚。高いスキルを持ったサイドのスペシャリストをJ1のクラブが放っておくはずがなく、昨年の段階から水面下で激しい争奪戦が繰り広げられていた。
複数のビッグクラブが正式オファーを出すなか、林が選択したのは鹿島だった。
「僕が最初に好きになったクラブがアントラーズでした。中学1年生の時にクラブ・ワールドカップでレアル・マドリードと戦った決勝戦を食い入るように見ていました。クリスティアーノ・ロナウド、モドリッチなど世界的なスーパースターがずらりと揃う相手に対して、柴崎岳選手や植田直通選手らが身体を張ったり、臆することなく堂々とプレーする姿を見て、『凄いチームだ』と憧れるようになりました」
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もちろん、これだけが決め手になったわけではない。鹿島以外のオファーも魅力的で、決断は簡単ではなかったという。だが、椎本邦一・鹿島スカウト担当部長の言葉に心を揺さぶられた。
「自分に対する評価だけでなく、選手獲得の信念、クラブの歴史や伝統などを聞かせていただいた時に、『常勝軍団のエンブレムを背負う意味』を強烈に感じたんです。明治大に入ってからも、常勝軍団のエンブレムの重さを今も痛感しているし、同時にそれを背負って戦うやりがいも感じています。だからこそ、アントラーズでその重みを感じながらプレーしたいと思えました」
さらに椎本スカウトからは「近年、タイトルを取れていないからこそ、そこに貢献してほしい」という言葉をもらった。この言葉を胸に刻んで走り出した林にとって、筑波大戦の敗戦は改めて『闘う意味』を教えてくれる重要な機会となった。
「明治でもアントラーズでも、無責任なプレーは絶対にできない。自分の武器を出すだけではなく、チームのために身体を投げ出せる選手にならないといけない。明治にも、鹿島にも自分を獲得してくれた恩があります。次、筑波大と戦う時は必ず勝たないといけないし、優勝するのは僕らだと思っています。それに2種登録をしていただいている以上、いつアントラーズに呼ばれてもいいように、一日一日を過ごしていきたい」
すべてはチームの勝利のために、すべてはタイトルのために。『紫紺の槍』は変幻自在の鋭い刃を磨きに磨いて、ピッチ上でその破壊力を見せつけていく。
取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)
