(画像:『ホットスポット』Instagramより)
お笑い芸人のバカリズムが脚本を担当するドラマ『ホットスポット』(日本テレビ系)が話題だ。

◆『ブラッシュアップライフ』スタッフが再結集!傑作の予感

ホットスポット』は、山梨県のとある田舎町が舞台で、ビジネスホテルに勤めるシングルマザーの遠藤清美が主人公。清美が、ひょんなことから宇宙人と出会い騒動を巻き起こす“地元系エイリアン・ヒューマン・コメディー”となる。

主人公の清美は、演技派として知られる市川実日子が担当。その他にも、東京03・角田晃広、鈴木杏、平岩紙、夏帆など個性派の俳優陣が勢ぞろいしている。

この『ホットスポット』は、かつてバカリズム脚本で2023年に放送された『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)のスタッフが再結集して制作。同作の独特な世界観を継承し、これまでになかった未知との遭遇を描いたドラマとなっている。

第1話を見たところ、傑作であり2025年の冬ドラマでもっとも見逃せない作品だと言える。そこで、魅力はたくさんある中から、この記事では脚本の素晴らしさを取り上げていきたい。

◆「プロの脚本家」では描けないバカリズムワールド

バカリズムといえば、これまで「プロの脚本家」では描けない、独自のドラマ・映画を作ってきた実績がある。

例えば、連続ドラマの脚本を初執筆した『素敵な選TAXI』(関西テレビ・フジテレビ系)では、竹野内豊が演じる主人公・枝分のユーモラスな会話が話題となった。

枝分は、過去に戻って人生の選択をもう一度できる不思議なタクシーの運転手。タイムトラベルにより、乗客が人生の分岐点をやり直すドラマだが、細部まで作り込まれた設定やセリフが妙な気持ちの良いテンポ感を生み出し、傑作ドラマとして語り継がれている。

2020年放送の『殺意の道程』(WOWOW)では、父親を自殺に追い込んだ男への復讐を企てる主人公たちを描くサスペンスに挑戦している。この作品では実際に復讐することより、打ち合わせや道具の買い出しといった、普通のサスペンスドラマでは描かれない無駄シーンばかり描かれた。

他にも女性同士のリアルな会話劇を展開した『架空OL日記』(読売テレビ)など名作は多いが、どの作品もバカリズムでしか書けない、独特なストーリーのドラマとなる。

今作の『ホットスポット』も、いきなり初回で角田演じる高橋孝介が宇宙人であることが判明するなど、まさにバカリズムワールド全開で傑作の予感がしている。

バカリズム脚本の一番の魅力はハズシのうまさ

では、バカリズムが描くドラマは、他の作品と何が違うのか? 一番の魅力は、ハズシのうまさだろう。

今回の『ホットスポット』は宇宙人が題材だが、地球外生命体がカッコよくない。

韓国ドラマを福士蒼汰主演でリメイクした日本版『星から来たあなた』(Amazon Prime Video)や、中国ドラマ『恋した彼女は宇宙人』など近年も宇宙人を取り扱うドラマはあるが、どの作品も魅力的な主役やヒロインが宇宙人を演じる。

しかし、『ホットスポット』の宇宙人・高橋は容姿が普通のおじさん。しかも、今のところ披露するのは十円を曲げるなど、どうでも良い能力ばかりで全く魅力的でない。

また、『ブラッシュアップライフ』でも、タイムリープがストーリーの主軸だが、主人公は人生をやり直して大きなことを成し遂げない。

バカリズムは、これまでのドラマや映画のセオリーから微妙にハズシたキャラ設定やストーリーを作るのがうまい。結果として、聞いたことある設定なのに、見たことがないドラマや映画が誕生。今回の宇宙人のようになじみがあるのに、新しい価値観と世界観の作品となり視聴者を熱狂させるのだ。

ちなみに、バカリズムは過去にドラマをあまり観てこなかったとインタビューで発言し、お手本にしている脚本家がいないと思われる。また、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の「マンガ大好き芸人」に出演するほど熱狂的な漫画ファンとして知られ、自由な発想は漫画から得ていることが推測できる。