この原稿は、決勝トーナメント1回戦、クロアチア戦を前に書いているのだが--。

 筆者は6月22日発行の当コラムで「W杯1戦目より2戦目のスタメンに注目すべき理由。そこが森保監督の評価の分かれ目」なるタイトルの原稿を書いている。注目はドイツ戦よりコスタリカ戦のスタメンだ、とする根拠について、前回ロシアW杯の西野采配を引き合いに出しながら、以下のように記している。再度、お目通しいただきたい。

 前回の西野ジャパンは、同じスタメンで1戦目と2戦目を戦い、3試合目でメンバーを大幅に入れ替えている。(中略)その結果、3試合目(ポーランド戦)のスタメンに、西野朗監督は自らがサブと位置づけた選手を並べた。1戦、2戦を同じスタメンで戦ったツケを露呈させるような、計画性に欠ける先を見越すことができない采配を振った。ポーランド戦に戦力ダウンやむなしの、イチかバチかの戦法で臨んだのだ。ラッキーだったのはポーランドが、その時点でグループリーグ落ちしていたことだ。1-0と日本をリードしても、2点目を奪おうとしなかった。

 2試合同じスタメンで戦えば3試合目は息切れする。持続しなくなる。これは厳然とした事実である。カタールW杯では3試合目はスペイン戦にあたる。前回方式は通じない。先を見越して戦わないと3試合目に力を発揮することが難しくなる。

 前回大会4試合の力配分を数値化すれば、100%→95%→75%→85%となる。1、2、4戦は同じスタメンで戦い、3戦目だけ入れ替わったわけだが、4戦目のベルギー戦に勝っていたら、5試合目(準々決勝ブラジル戦)をどんなスタメンで戦っていたのだろうか。サブチームなのか、スタメンチームなのか。このようにチームをレギュラーとサブに分ける、白か黒かのような采配では、番狂わせは望めない。

 サブとレギュラーの境界を撤廃すること。これこそが森保監督に課せられた使命なのだ。ある特定の選手を使い詰めにしてはならない。選手交代5人制のメリットを最大限に活かすべきなのだ。

 問われるのは2戦目のコスタリカ戦だ。初戦のドイツ戦に臨むメンバーをベストメンバーだとすれば、それを第2戦で変更しないと、第3戦目に繋がらない。その第2戦目の変更を、メンバーを落とすという解釈にしないことだ。3戦を通してイーブンペースで戦う感覚だ。

 100%→90%→90%。疲労感を10%程度の落ち込みに止めながら推移する。これが理想である。100%→95%→75%だった西野ジャパンと比較すると2戦目が危うく見える。

 その結果、コスタリカ戦で勝ち点を落とすこともあるかもしれない。しかし、それは仕方がないことと割り切るしかない。もうワンランク、日本が上のレベルを目指す過程で避けて通れない失敗だと。

 現実に話を戻す。森保監督は第1戦のドイツ戦に逆転勝ちを収めると、第2戦のコスタリカ戦にスタメン5人を入れ替えて臨んだ。

1戦目(権田、長友、酒井宏、吉田、板倉、遠藤、田中、伊東、鎌田、久保、前田)
2戦目(権田、長友、山根、吉田、板倉、遠藤、守田、相馬、鎌田、堂安、上田)

 まさにこちらの指摘したとおり。その結果、日本は0-1で敗れてしまう。だが筆者は今年6月には、それは仕方がないことと割り切るしかない。もうワンランク、日本が上のレベルを目指す過程で避けて通れない失敗だと述べている。

 喜ばしいのは、森保監督が第2戦のコスタリカ戦に、西野式ではなく、こちらと全く同じ感覚で臨んだ点にある。その結果、日本はコスタリカに敗れた。なぜスタメンを5人も入れ替えたのかと、森保采配について批判する人も多かったに違いない。しかし、それをしたから3戦目(対スペイン戦)の勝利があったのだ。

 3戦目のスタメンはこうだった。権田、谷口、吉田、板倉、長友、守田、田中、伊東、鎌田、久保、前田。これまた第2戦と5人が入れ替わっていた。このやり方を続けている限り、チームの総合的な体力は急速には低下しない。クロアチア戦を前向きな姿勢で戦うことができる。

 クロアチア戦にも、前戦から5人程度、先発を入れ替えて臨めば、今度は準々決勝(ブラジル対韓国の勝者)が楽になる。

 6月22日発行のコラムでは、ロシアW杯のベルギー戦の後にも触れていて、「4戦目のベルギー戦に勝っていたら、5試合目(準々決勝ブラジル戦)をどんなスタメンで戦っていたのだろうか」と、疑問を投げかけている。しかし、クロアチア戦後の話をするのもなんだが、5試合目のスタメンを飾る人材について、おそらく心配する必要はないはずだ。スタメンを5人ずつ変えることができれば、ベスト8以上(5試合以上)と言わず、決勝。3位決定戦(7試合目)も、楽に行けるのではないかと推測される。

 クロアチア戦も、コスタリカ戦同様にそれで負けてしまうかもしれない。だが、それは仕方のないことだと割り切るしかない。ものすごく勇気がいる判断だが、森保監督は2戦目のコスタリカ戦でその賭に勝った。試合には敗れたが賭には勝った。スペイン戦の勝利に繋がったという意味で、勝利を収めている。

 コスタリカ戦のような敗戦を、どれほど重ねることができるか。一流国になる過程で避けて通れない敗戦とみるが、クロアチア戦はどうなるか。再び賭に勝つことができれば、準々決勝のブラジル戦(韓国戦?)は、面白い。ブラジル戦は順番的にスペイン戦の再来となる。

 今大会ではイングランドも、メンバーのやりくりを上手く行っているチームだ。選手の出場時間にそれは見て取れる。先発は日本ほど変更していないが、選手交代5人制に基づく早めの交代で、その均衡を図っている。この新ルールを有効に使えば、先発の変更を3〜4人に抑えても、均衡化は保てるのではないかと見る。だが、相手を攪乱するには森保式の方が有効か。

 それにしても森保監督はいつから、先を見越した戦いをする監督になったのか。「1試合ずつチームを入れ替えながら戦えるように準備しておかないと、我々が目標にしているベスト8以上に進出することは難しい」というコメントをその口から耳にしたのは、今年9月のアメリカ戦、エクアドル戦だった。最後になって急に言い出したわけだ。

 東京五輪後、選手をローテーションしない理由を尋ねられたとき、森保監督はこう答えたものだ。

「先を見越して戦うことはまだできない。世界の中で日本が勝ち上がろうとした時、1戦1戦フルで戦いながら次に向かっていくことが現実的である」

 なぜ心境は180度変わったのか。教えて欲しいものである。