タイの「DON DON DONKI」

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 焼き芋といえば、冬の風物詩。まだまだ残暑が続く中ではなかなか食指は動かないが、日本よりもっと暑いシンガポールやタイで、日本の焼き芋が売れまくっているというのだ。仕掛け人は、安売りの「ドン・キホーテ」である。

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 ドン・キホーテが初めて海外に進出したのは、2006年のハワイである。

「現地企業のM&Aにより、ハワイに『ドン・キホーテ』を3店舗出店しました。さらに、13年には米カリフォルニアにも展開。『Marukai』や『TOKYO CENTRAL』といったスーパーマーケットを11店舗出店しています。また、ハワイには『TIMES』というスーパーマーケットも展開し、米国内にグループ合計38店舗展開しています」

タイの「DON DON DONKI」

 とは、『ドン・キホーテ』を運営するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)の広報担当者。

 ハワイのドンキは、土産品を安く提供し、雑貨などが大量に並び、日本国内店と同じような雰囲気だという。

 もっとも、17年12月、シンガポール中心部の商業施設内に出店した『DON DON DONKI(ドンドンドンキ)オーチャードセントラル店』は、米国の店舗ではお目にかかれない光景が目撃されるという。焼き芋コーナーが設置され、連日行列ができるほどの売れ行きだというのだ。それにしても、なぜ“焼き芋”なのか。

「元々、国内のドン・キホーテの店で焼き芋を売っていますが、海外の観光客からも人気があったので、シンガポールの店でも販売することにしました。予想を上回り、行列ができるほどの人気です。店のコンセプトは、『ジャパンブランド・スペシャリティストア』となっています。日本独自の品質と味が支持されたのでしょう」(PPIH広報担当者)

 日本国内の輸入品が中心のドンキの店とは違って、日本産が主体となっているのである。サツマイモは紅はるかを使用し、調理方法も日本と同じにしたという。
 
「シンガポールで店舗展開を進めたのは、ドンキの創業者である安田隆夫氏の肝いりです。同氏は、13年にシンガポールに設立したPPIHグループの海外事業持ち株会社『株式会社パン・パシフィック・リテールマネジメント』の代表に就任。東南アジアの店舗展開の陣頭指揮をとっているのです」(経済ジャーナリスト)

 実際、17年から19年にかけて、シンガポールでは『DON DON DONKI』という新業態
5店舗を展開。さらに、今年5月に、チャンギ国際空港ターミナルに焼き芋をメインにしたスピンオフ店舗『DON DON DONKI Sweet potato factory』もオープンした。ここでは、焼き芋の他、大学芋、サツマイモを使ったミルクシェイク、菓子などを扱っている。

タイ店の果物売り場

 シンガポールに続いて、今年2月にタイのバンコクには『DON DON DONKI』の1号店をオープン、7月には香港の随一の繁華街で『DON DON DONKI ミラプレイス2』店をオープンした。いずれでも焼き芋は人気という。

 特にタイでは、あまりの売れ行きに、1人2本までしか買えないとか。タイにもサツマイモはあるが、あまり甘くなくさっぱりしている。日本の焼き芋のねっとりとした甘さに惹かれるようだ。1本79バーツというから、日本円にして270円ほど。

「『DON DON DONKI』で扱っている商品は、44%が青果・鮮魚・精肉・惣菜などの生鮮食品で、30%がカップラーメンや菓子などの加工食品、あとは日用品・雑貨などとなっています。いずれも、現地で売られている同様の日本製品より価格を抑えています。それが人気を呼んでいます」(PPIH広報担当者)

イチゴや桃も人気

 そもそも東南アジアなどで売られている日本製品は、高額なことで知られている。輸送コストなどがかかるため、日本国内の価格より3〜4倍もするという。そのためか、たとえばタイでは、日系の大手百貨店が売れ行き不振で今年1月に閉店している。ところがドンキが売る日本の商品は、日本と同じか高くても1・5倍以内の価格という。輸送費もかかるのに、何故、そんなに安くできるのか。

「自社貿易をしているからです。仲介業者を極力介さず、直接商品を手配し、価格を抑えています。日本の果物、特にイチゴはタイ、桃は香港でかなりの人気です。大量に購入される方もいます」(同)

『DON DON DONKI』の店舗形態は、日本国内とは異なる。

「たくさんの商品を並べる陳列方法や手書きのPOPなどの演出は日本と同様ですが、日本の食品をメインに取扱い、シンガポールやタイの店舗にはレストラン一体型の店舗もあります。向こうの方は、日本と違って自宅で調理する方が少ないようです。ですから、購入していただいた鮮魚や精肉などを、その場で調理して食べていただけるようにしています。もちろん持ち帰りも可能です」(同)

 調理場は店内の目立つ位置に配置し、併設するイートインコーナーで出来立ての料理を味わうことができるという。人気のある日本食を調理することも可能だ。

 今後もドンキは、東南アジアや太平洋の島、アメリカと環太平洋で「日本ブランド」を展開する予定という。その火付け役が“焼き芋”とは、これいかに。

週刊新潮WEB取材班

2019年9月2日 掲載