自分の印象は、いつのまにか他人が勝手に決めるものだと思っていませんか? 実はそれ、ファッションやメイクで、意図的に「管理」できるものなんです。今の女性管理職に求められる印象管理の方法を、3人のプロに教えてもらいました。

■3人のプロの意外な結論!「仕事服にトレンドは持ち込まない」

ファッション&美容業界の最前線を走り続けている3人。どんなに攻めたおしゃれ談義になるか、と思っていたら、答えは意外なものだった。

イラスト=miya、以下すべて同じ

「働く服にトレンドは入れない」

こう言いきるのは数々の“印象管理”哲学で働く女性の支持を得てきた、イメージングディレクターの高橋みどりさんだ。

「よくPW世代の働く女性から『どうすればスーツをおしゃれに着こなせますか』というような質問を受けます。でも、私の答えは、そもそも仕事服にトレンドはいらない、ということ。これは、ビジネス=相手のことを考えることがとても大切で、決して自分中心ではないということ。相手が男性か女性か、どんな場所で打ち合わせをするのか、そして自分が会社でどんな立場に置かれているのかなど。おしゃれやトレンド=自分の利益を考える前に、役割にふさわしい装い=会社の利益を優先していただきたいのです」

ファッション誌でエグゼクティブな女性の着こなしを多く提案してきたスタイリストの戸野塚かおるさんもこう話す。「ある程度の年齢になったら、おしゃれよりもまずは清潔感。センスがあっても清潔感がなければ、仕事をする相手としてふさわしく思われません。たとえば服のシワ、襟元のちょっとした汚れ、消えかかったパンツのプレスなど……細かいところまで、他人は意外と見ています。当たり前のことですが、自身のお手入れがきちんとできていることが、自己管理の徹底ぶりにつながり、それが自然と自分の印象を管理することになるのです」

ビューティ誌で引っ張りだこのヘア&メイクアップアーティスト・千吉良恵子さんの見解はどうだろう?

「オフィスでのメイクで重要なのは、老若男女が素敵だと感じる好感度の高さ。好かれるメイクというのは、相手の信頼を得ることとイコールです。だから、流行を追う必要はない。意識すべきは、透明感、知性、そして信頼感。特に、PW世代の管理職ともなれば、その場にふさわしいメイクを心得ていることが、仕事のセンスのよさをも連想させるはず」

責任ある立場を考えれば、トレンドやおしゃれよりも、いかに相手への思いやりや日々の丁寧な生活を仕事のスタイルに反映させるべきかがよくわかる。

■賢い女性の印象管理はヘア、メイク、スーツの三位一体で完成

しかしながら、きちんと感やマナーばかりに気をとられて、まるでリクルートスーツのような着こなしになってしまっては本末転倒。仕事の現場にふさわしく、管理職としての装いを体現するプロのテクニックを具体的に見ていこう。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/imtmphoto)

「ピアスやネックレスなど、顔周りのジュエリーはシンプルに。その代わり、時計やブレスレットで主張のある手元に仕上げるのがコツ。品よく映えつつも、20代前半の頃とは違う、いい意味での貫禄や落ちつき感が出ます」と戸野塚さんは説明する。好感を与えつつも、大人の余裕を感じさせるラグジュアリー感を意識するのがポイントのようだ。

では、ファッション同様に気になるメイクはどうだろうか?

「眉が整っている、目の際のラインが美しい、リップが丁寧に塗られている。これだけで、きちんとした印象を与えます。逆に濃いリップ、強いチークなど、1カ所に突出したメイクは仕事のシーンではふさわしくありません。髪と肌には自然なツヤが不可欠ですね。6秒で決まるといわれている人の印象は、ほとんどが顔周りで決まります」

さらに千吉良さんはこう続ける。「メイクが雑だと、仕事も雑な印象を与えます。仕事では、細やかさと、全体を俯瞰(ふかん)で見ることがともに大切なように、メイクでもミクロとマクロ、両方の目を持てる人に、実際“仕事ができる人”が多いですね」

ファッションやメイクなど、その人の外見の印象と内面とは分けて考えがちだが、もしかするとそれらは深いところでつながっているものなのかもしれない。さしずめ“外見は内面のいちばん外側”といったところだろうか。

何から手をつけたらいいのかわからない、どうすれば今のスーツスタイルが素敵になるかがわからない、という一部のおしゃれ迷子に、高橋さんから具体的な服選びのアドバイスをいただいた。

「たとえばテーラードのパンツスーツを着て、なんだかアカ抜けないなぁと思うのなら、ジャケットをVネックのノーカラーに変えてみるとか。単純なことですが、今持っているものの延長線上にあるアイテムを少し取り入れるだけで、印象はグッと洗練されます」。この理論にはスタイリストの戸野塚さんも同意見だ。

「スーツは堅い印象が長所でもある。そのきちんと感をキープしつつ、インナーをとろみのあるブラウスに変えただけで、女性ならではの柔らかな奥行き感が出ますよ」

最後に、千吉良さんはこう語る。

「印象管理はヘア、メイク、ファッションの三位一体で完成するもの。ときには自分自身を客観視して、仕事の成果を後押ししてくれるような、賢い印象管理を心がけていただきたいですね」

※PW=プレジデント ウーマン

■▼やってはいけないスーツの着こなし【No Good】

■▼素材【Materials】

■的確なスーツ選びは、仕事の自信につながる

「印象管理」について、実践的なファッションアプローチがわかったところで、PWリーダーズたちが選ぶべきスーツの価格について考えてみたい。イメージングディレクターの高橋みどりさんにうかがってみた。

「PW世代が着るスーツは、自分を応援してくれるものであると同時に、周りと調和していることも大切。奇をてらわずに、身の丈に合うものを選ぶことが重要です」

では具体的に“身の丈に合う”とは、どんなスーツのことだろう?

「わかりやすいのが、収入に見合った価格のスーツであるということ。素敵に見せよう、品よく見せようと、高価なブランドスーツを背伸びして着るのは、本人と着こなしがどこかちぐはぐで、仕事相手に不安感を与えてしまいます。月収の20%をスーツに、さらにその50%をバッグに、20%をインナーに……と考えると、今の自分が着るべきスーツの適正価格が明確になりますよ」

たとえば、年収が600万円の人だとすると、月収は約50万円。その20%だから、スーツの適正価格は約10万円というわけだ。となるとバッグは5万円前後、インナーは2万円ほど。たしかにわかりやすい。

「会社は“おしゃれな着こなし”をアピールする場ではありません。取り組んでいる仕事に対し、自分がどんな立場にあるか、また、どういう役回りであるのかをきちんと自覚したうえで、TPOを考えた装いをするのが基本中の基本。収入に対する割合をひとつの目安にしておくことで、役職が変わったときにも、スーツの装いを無理なくアップグレードできるというわけです」

■値段が見えずとも、装いは信頼感として相手に伝わる

一方で、安価でもそれなりに見えるデザインがあふれる今の時代。オーダースーツもかなり気軽にできてしまうが……。

「管理職の立場の皆さんならご存じだと思いますが、役職が上がると出会う人や行く場所が変わりますよね? たとえば会食や接待のようなラグジュアリーな場所で、いくらオーダーでも安すぎるスーツは相手に失礼かもしれません。値段そのものは目に見えなくても……もしくはジャケットのタグを直接確認しなくても、“その人にふさわしくない装い”を、他人はなんとなく感じ取ってしまうもの。あなたのセンスや仕事への熱意が形になったものがスーツの着こなし。そこには誠意や信頼感が宿るのです」

■百貨店の専門コーナーを味方につける

今の自分にジャストなスーツを選ぶ上手なコツはあるのだろうか? 高橋さん自身が行うパーソナルスタイリングなどで、実際に伝えている方法を教えていただいた。

「まずは、百貨店の専門コーナーを味方につけること。そして、そこの店員さんと仲良くなることです。こんなものが欲しい、こんな予定で何を着れば……というときに相談できるプロがいるのは、とても心強いこと。最近は店員さんに話しかけられることに苦手意識を持つ方が多いと聞きますが、相手はファッションのプロです。具体的に質問して、的確なアドバイスをもらいましょう。そして、さらにアップグレードしたいときには、パーソナルスタイリングなどのカウンセリングを受けるのもひとつの手。自分ひとりだと思い込みで同じようなものを選んでしまいがちですが、ふさわしい仕事服は、実は“いつもは選ばないもの”に隠れていたりする。そこをプロに発掘してもらい、仕事服を更新してみることも大切です」

収入に対する割合でスーツの価格を決めるという、明快な方法。今まで「高いほうが素敵に見える」「安く買えたらラッキー」と思い込んでいた仕事服のセレクト基準が明確になったのでは?

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▼スーツの適正価格は月収の20%がベスト。
身の丈に合った着こなしが、仕事のセンスに直結します

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盒兇澆匹蝓覆燭はし・みどり)
イメージングディレクター
バーニーズ ニューヨークの宣伝部GMをはじめ、エストネーションの立ち上げなどを経て、現在は株式会社Oens代表。数々のブランディングやプロデュース、著書も話題に。
 

戸野塚かおる(とのつか・かおる)
スタイリスト
女性ファッション誌で人気のスタイリスト。ラグジュアリーで洗練されたスタイリングに定評があり、女っぷりのいい人柄と丁寧な仕事で、スタッフからの信頼も厚い。
 

千吉良恵子(ちぎら・けいこ)
ヘア&メイクアップアーティスト
美容誌からファッション誌、広告撮影や化粧品アドバイザーまで幅広く活躍中。繊細かつ透明感のあるメイクテクニックで、数多くの女優やモデルからも指名多数。
 

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(フリーエディター&スタイリスト 木村 綾乃 イラスト=miya 写真=iStock.com)