コストコ(Costco)はこれまで、最大のライバルであるサムズクラブ(Sam's Club)と比べるとオンライン販売、店舗内ピックアップ、店舗内のデジタル体験といったサービス面で遅れをとっていた。そんな同社も、ECビジネスに力を注ぐようになり変化が生じつつある。

昨年、アメリカのコストコ全店舗でオンライン注文できるようになったが、同社は店舗に配備するロッカーを増やしており、これから4〜5カ月かけて100以上の店舗でオンライン販売やピックアップの効率を改善していく予定だ。昨年、同社のアプリには薬剤の注文管理や写真注文センターなどの新機能が追加されており、7月にさらに新機能が加わるとされている。

さらに同社は、自社ウェブサイトで販売している人気のナショナルブランド商品の取扱数を増やしている。今四半期、同社はソニー(Sony)やサムソン(Samsung)製のテレビや最新世代のApple製品などをラインナップに加えた。コストコが5月30日に行った2019年度第3四半期の業績発表によると、同社のEC関連売上は前年比で22%上昇している。 

「デジタル面では非常に未熟」



特に発表のなかで自社のウェブサイトについて、店舗の販売期間が限られている商品や、店舗内での売上が芳しくなかった商品を販売するのに便利なチャネルとして認めている点は特筆に値する。これまで、同社の経営陣はEC戦略について尋ねられた際に店舗のカスタマー獲得のために「なんでもする」と回答していた。これは競合のサムズクラブのやり方とは対照的だ。

2018年度、サムズクラブは店舗の10%をたたみ、それら店舗をECのフルフィルメントセンターへと作り変える決定を下している。配送にかかる時間の短縮につながるフルフィルメントセンターを増やすほうがメリットが大きいと判断したためだ。サムズクラブは親会社のウォルマート(Walmart)の指導のもと、店舗におけるスキャン&ゴー(Scan and Go)の会計といった新技術の導入実験を進めてきた。

ピュブリシス・サピエント(Publicis.Sapient)の最高コマース責任者、ジェイソン・ゴールドバーグ氏はコストコについて、「もっとも優れた業績を叩き出す、もっとも成功している小売業者のひとつだが、デジタル面では非常に未熟なように思える」と指摘する。コストコの前四半期の売上高は340億ドル(約3兆7400億円)で、前年同期比で7.4%増となっている。

ECの重要性をようやく認識



コストコの最高財務責任者、リチャード・ギャランティ氏は、店舗に来るカスタマーのほうがオンラインで購入するカスタマーより客単価が高く、店舗のカスタマーのほうが大切だと2016年に語ったばかりだ。現在も同社の売上のうちECが占める割合は5%に過ぎない。だが同社はその後、店舗で販売できない商品をウェブサイトで販売できるようになったと述べており、ECの重要性を認識するようになった。

たとえばギャランティ氏は昨年10月、ウェブサイトは季節限定商品の売上を伸ばすのにとりわけ役立ったとしており、「オンラインとECを通じて、それまでは8、10、12週間しか展開できなかった季節限定商品を販売できるようになった。夏のあいだしか販売していなかった屋外家具や庭、芝生関連の商品などが良い例だ」と述べている。「オンライン販売を開始して52週間が経つ。オンラインでの売上はかなりのものになりつつある」。

さらにコストコは冷蔵庫、食洗機、乾燥機といった大型のいわゆる「白物家電」の販売数を伸ばすためにウェブサイトを活用している。3年前、同社の白物家電の売上高は5000万ドル(約54億5000万円)だった。それが今年は7億ドル(約770億円)ペースとなっている。同社は大型商品の配達と設置はサードパーティのベンダーに委託している。昨年12月、コストコはオンラインで販売した商品の約50%は同社のフルフィルメントセンターから発送しているが、大部分は小さい商品だと発表している。

それでもまだ見劣りはする



コストコはこのように大きな進歩を見せているが、ゴールドバーグ氏はそれでもデジタル体験としては見劣りすると評している。ライバルのターゲット(Target)やウォルマートと異なり、コストコは人気の自社ブランド、カークランド(Kirkland)を自社サイトのホームページでプッシュしていない。また最寄りの店舗に商品の在庫があるかカスタマーが確認できるサービスは提供していない。どのようなカテゴリーの商品が店舗に置いてあるかが分かるのみだ。サムズクラブは昨年10月に店舗内の技術の試験運用を行う店舗を立ち上げているが、コストコは会計や店舗内の案内を便利にする技術の試験運用も行っていない。

ゴールドバーグ氏は次のように指摘している。「商品を買いたいと思わせるようなコンテンツがあまりない。ECのサイトは確かにあるが、最低限を満たしているだけのように思える」。

Anna Hensel(原文 / 訳:SI Japan)