例年以上に活発な印象がある。Jリーグの移籍市場だ。

 Jリーグは昨年からダゾーンとライブストリーミングサービスの契約を結んだ。それに伴う契約金を原資として、Jリーグ側からJ1、J2、J3の各クラブに賞金などが配分されることになった。

 均等配分金を例にとっても、J1クラブはそれまでのほぼ倍額となる3・5億円、J2が1億円から1・5億円、J3が倍額の3000万円を受け取る。増額分をそのままチーム人件費に充てれば、J1なら以前の倍の投資を借金なしでできるわけだ。

 J1クラブに割り当てられる理念強化配分金も、各クラブの投資意欲をかきたてるだろう。優勝すれば次のシーズンから3年総額で15・5億円、2位は7億円、3位は3・5億円、4位でも1・8億円を受け取ることができる。

 17年シーズンのJ1を制した川崎Fは、J1リーグの優勝賞金、均等配分金、理念強化配分金、ルヴァンカップ準優勝の賞金を合わせて、総額22・5億円がクラブの収入に上乗せされることになった。さらに加えて、ACL出場クラブに対する強化費も収入の欄に加わる。

 結果を残したチームだけではない。降格クラブへの目配せもある。

 J1からJ2へ降格したチームは、均等配分金が3・5億円から1・5億円に減ってしまうが、降格1年目のみ前年の80パーセントが保証される。これにより、18年はJ2の一員となった甲府、新潟、大宮には、2・8億円が配分されるのだ。

 各クラブのチーム人件費は、そもそも増加傾向にある。最新のデータとして公開された16年度のチーム人件費で、34クラブが増収を記録しているのだ。全クラブの総額では、15年に比べておよそ22億円の増加となっている。チーム人件費により多くの金額をつぎ込むクラブが増えていたなかで、『ダゾーン』による分配金が移籍市場をさらに活性化させた、という構図なのだろう。

 もっとも、ビッグネームの補強は見当たらない。名古屋が元ブラジル代表FWのジョーを獲得したが、元C大阪のフォルランや現神戸のポドルスキほどのインパクトはない。昨シーズンまでJリーグでプレーしていた、あるいは過去にプレーしたことのある外国人選手が、どのクラブにとっても優良銘柄となっている。

 外国人選手の獲得には、リスクが付きまとう。それだけに、戦力として計算が立つ人材が魅力的に映るのだろうが、少しばかり寂しい印象もある。

 補強を含めたチーム編成は、シーズンの目標からの逆算で組み立てられる。そのうえで各クラブの編成をチェックしていくと、目標として透けて見えるのは「Jリーグ優勝」だ。あるいは、「リーグ優勝を目ざしながらACLも狙う」といったものである。

 それが悪いとは言わない。身の丈に合った経営は、もちろん大切である。ただ、リーグ全体がこじんまりとし過ぎていないか。

「クラブW杯で上位進出を狙う」といったような、より大きな目標を感じさせるクラブが出てきてくれたらとも思う。世界の舞台での戦いを意識して編成をするクラブが、である。